離島で保護された瀕死の“ボス猫” 前足がケンカで壊死…3本足になったが、今はおうちで喉をゴロゴロならす日々
約400匹の猫がいるという九州の離島「高島」(長崎市高島町)。今年3月、猫たちに餌やりをしている島民から「大けがをした猫がいる」という手紙が高島で地域猫問題に取り組むボランティアグループ「島猫命守り隊」の隊長・江頭ふみえさんのところに届きました。そこで猫の状態を見ようと、島民に猫の写真撮影を依頼した江頭さん。再度送られてきた写真を目にして驚いたといいます。
「けがはどうも猫同士のけんか傷のようで、左前脚が壊死(えし)していました。これは片脚を切らなければいけないと…かなりひどい状態でしたので、すぐに保護して病院に行っていただくようお願いしました」
江頭さんから連絡を受けた島民は猫を連れて本土の長崎にある動物病院へ。そのまま入院となりました。
「島民の方に連れて行ってもらいましたが、獣医師いわく猫は心臓や肝臓、腎臓も悪かった上、感染症も起こしていたことから死にかけていたそうです。やはり、壊死していた左前脚は手術で切断となりましたが、一命を取り留めることはできて私たちもひと安心。2週間を超える入院を経て、一度退院となりました」
退院した猫は、島の預かりボランティアのところでお世話になることに。術後の経過も良く、体調も改善しつつありました。しかし数カ月後、猫の病状が悪くなり再度病院へ。病院での治療が必要だったため、再び入院となりました。
■ 島の預かりボランティアが瀕死だった猫のお世話で猫アレルギー悪化
「今回の治療費などは私たち島猫命守り隊が負担しました。というのも、島民にかわいがられ、大けがを負った島猫をどうしても助けたかったんです。この子はたくさんの持病もあり譲渡が難しく、私たちグループがこれからも継続して治療費を出しいきます。お世話は預かりボランティアさんにお願いして、終生飼育をしていくつもりです。預かりをしていただいた島民の方も懸命にお世話をしてくれて。退院後、ご自宅で他の島民の方にも手伝っていただきながら投薬などをしてくれました。ただ、島の預かりボランティアさんはもともと猫アレルギーを持っている方で…お世話をしているうちにアレルギーがひどくなってしまったんです」
猫アレルギーが悪化してしまったという島の預かりボランティア。そこで江頭さんは新たに預かりボランティアを探したところ、兵庫県に住む知人の女性が手を挙げてくれたといいます。そして、その新しい預かりボランティアにお世話をお願いするため、猫は高島を出ることになりました。
■ 島の預かりボランティアとの別れ…車中で鳴き続けた“ボス猫” 今ではゴロゴロ喉を鳴らすように
大けがを負い島民に保護され左前脚を切断した猫の名前は、あかさん。推定5歳くらいの雄です。体が大きくいつもドンと構えていたことから、島民やボランティアの人たちから「ボス猫」と呼ばれていました。心優しく思いやりがあったというあかさん。島民が近付くとゴロゴロと喉を鳴らし、なでられるのが大好きな猫でした。
そのあかさんを11月初旬、兵庫県の預かりボランティアが島の預かりボランティアのところにお迎えにやって来ました。3月に保護されてから半年以上が過ぎ、とうとう高島を離れることになったのです。あかさんは薬や点滴などの治療で食欲も出てきて、元気を取り戻していました。お世話をしてくれた島の預かりボランティアとのお別れの日を迎え、とても寂しそうな表情をしていたというあかさん。兵庫県の預かりボランティアが運転する車内で、ずっとニャーニャーと別れを惜しむように鳴いていたといいますが、今では兵庫の新たなおうちでなでられるとゴロゴロと喉をならしているそうです。
■ 野生化した猫が繁殖を繰り返してきた高島で11月から一斉TNRをスタート
江頭さんによると、高島は、かつて炭鉱で栄えた島とのこと。ペットとして猫も一緒に入島しましたが、炭鉱閉鎖のときに猫は島に置き去りにされました。野生化した猫は繁殖を繰り返し、今では島民より猫の頭数が多いといいます。数年前に大規模なTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す)を行いましたが、再度繁殖を繰り返し頭数が増えたため、島猫命守り隊やNPO法人キャッツライフセーバーが中心になり、他一般社団法人2社、NPO法人1社などの協力を得ながら11月から島猫のTNRを着手することに。
既に60匹以上の不妊去勢手術などを終えているとのこと。このTNR活動には島民の人たちも参加し、今後は島猫命守り隊の協力のもと、餌やりのほかに島猫たちの健康管理や看取りを行っていくそうです。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)