ポツンと公園のベンチにいた子猫 保護したのは2人の受験生がいる家族、ピリピリした空気が穏やかに

■人懐っこい子猫

そうちゃん(月齢5カ月半・オス)は、千葉県にある総合公園で保護された。

今年8月、千葉県に住むYさんの長女に友達から1本の動画が転送されてきた。その動画には「子猫が足にまとわりついて離れない。お前んち、猫を飼っているからもう1匹飼わないか」とメッセージが添えられていた。その子猫がそうちゃんだった。

動画を転送してきた友達の母親が、そうちゃんのことが心配になって公園に様子を見に行った。子猫は誰もいない公園で、ポツンとベンチの上に座っていたという。Yさんに「子猫が心配、うちで飼おうかな」と相談があり、翌日2人でそうちゃんを探しに行くことになった。

■2週間だけならいいか

一夜明け、雨が降りしきる中、2人で公園に行って子猫を探したが、どこを探してもそうちゃんは見当たらなかった。倉庫の周りや駐車場の車の下、トイレの中など1、2時間くらい探したが見つからない。気づくと公園の管理事務所の男性もそうちゃんを探していた。

「その人に声をかけたら、心配になって探しているということでした。3日くらい前に急に現れて公園で遊んでいる子どもたちに構ってもらっていたそうでした。その人がさっき近くで見かけたというので、きっと近くにいると思ってもう一度探しました」

もう帰ろうかなと思っていた矢先、「猫ちゃん、猫ちゃん」と呼ぶ声が聞こえたのか、ダミ声のようなニャーという声が聞こえたので、倉庫の中に入って声をかけると、大きく伸びをしながらそうちゃんが出てきた。ぐっすり眠っていたようだった。持っていたごはんと水を与えると、そうちゃんはすぐに食べて、ずっとそばにいてスリスリしたという。

2人とも猫を飼ったことはあるが、どうして保護したらいいのか分からず、近くの保護団体を探して電話で相談した。団体の人は、「引き取ることはできないので保護してもらえるとありがたい。伝染病にかかっているかもしれないので、動物病院で診てもらった方がいい。先住猫がいるおうちなら2週間は隔離しなければならない」とアドバイスしてくれた。

「うちの子どもたちは2人とも重度の猫アレルギーで、猫を飼っている友達の家に行くだけで具合が悪くなったんです。だから、家族みんな猫は大好きだけど飼えないとあきらめていました。でも、2週間だけなら預かれそうだと思って私が預かることにしたんです」

■ピリピリがなくなり穏やかに

すぐにそうちゃんを動物病院に連れて行くと、「子猫は半年間くらい偽陽性のことがある」と言われた。友人が飼っている猫はFIPという大病の症状が落ち着いてきたばかりで、獣医師は「一緒に暮らすのはやめておいた方がいい」と言った。

そうちゃんはYさんが飼うことになり、アレルギー対策がどうしてもうまくいかなかったら、相談をした保護団体に里親探しを手伝ってもらうことになった。

猫を引き取る予定は全くなかったので、とりあえずペットショップに寄ってキャットフードやケージなどを買った。そうちゃんを連れて帰ると、家族一同すぐにめろめろに。中学生の長女と高校生の長男には「(猫アレルギーだから)近寄ったらダメよ」と言ったが、長女は我慢できずにそうちゃんを撫でて蕁麻疹が出た。長男は猫がいる部屋に入っただけで目が赤くなるほどひどい猫アレルギーなので、遠くから眺めていた。そうちゃんは相変わらず人懐っこく、初日からYさんと一緒に寝たという。

猫アレルギーの子どもたちは、すぐにかかりつけ医に薬を処方してもらい、マスクとメガネをして、掃除をこまめにすることで何とか折り合いをつけているそうだ。

「猫じゃなくて長男を隔離しているんです(笑)もともと大学受験のため部屋にこもりがちで、食事も自分の部屋で食べていてほとんど出てこなかったのですが、そうが来てからはリビングに顔を出すようになりました」

そうちゃんはおもちゃを買ってくるとノリノリで遊んでくれる期待を裏切らない猫だ。子供たちはそれぞれ受験を控えて家の中にピリピリした空気が漂っていたが、そうちゃんが来てからというもの、ピリピリがなくなった。子どもたちの猫アレルギー対策を取り続け、そうちゃんを飼い続けているYさんはいま「そうちゃんの保護に関わった全ての人に感謝している」という。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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