日本で唯一の「環状線」…しかし、ぐるぐる回らない電車も走る不思議な路線 大阪環状線が今年で60年
JR大阪環状線は今年で全通60周年を迎えました。60周年ということは全通したのは1961(昭和36)年のことです。大阪市内の交通手段としてはなくてはならない大阪環状線。この機会に少し振り返ってみたいと思います。
■日本で唯一?の「環状線」
先日、近鉄特急に乗っていると鶴橋駅手前で「JR環状線はお乗り換え」という自動放送が流れました。「大阪環状線以外にも『環状線』が付く路線があるのでは」と思い調べたところ、実は国内で正式に「環状線」と名乗る鉄道路線は大阪環状線しかありません。
確かにぐるぐる回る環状運転を行っている路線は全国各地で見られます。関東ですとJR山手線やディズニーリゾートラインが挙げられます。ただし山手線の正式区間は品川~新宿~田端間なので、正式名称が「山手環状線」になることはありません。
その点、大阪環状線の正式区間は「大阪~天王寺~大阪」なので堂々と「環状線」と名乗れます。
久しぶりに大阪環状線を乗る際に混乱するのが「内回り」「外回り」の概念です。内回りは反時計回り(大阪→弁天町→天王寺→京橋→大阪)、外回りは時計回り(大阪→京橋→天王寺→弁天町→大阪)です。ちなみに、大阪から天王寺へは内回りの方が早く着きます。
また日本で唯一、正式に「環状線」を名乗っていますが、すべての電車がぐるぐる回るわけではないのでご注意を。「大和路快速」は天王寺駅から奈良方面、「関空・紀州路快速」は天王寺駅から関西空港・和歌山方面へ向かいます。
■大阪環状線は意外と新しい?
ところで現在の活躍ぶりを見れば大阪環状線の60年という歴史は少し短いような気がします。実は1895(明治28)年からコツコツと路線を伸ばしてきました。
1895(明治28)年5月に大阪鉄道が天王寺~玉造間を開業したのがスタート。同年10月には天王寺~玉造~京橋~大阪間が開業し、まずは「半周」が完成しました。
1898(明治31)年に西成鉄道が大阪~安治川口駅間を開業しました。安治川口駅は西九条~桜島間のJRゆめ咲線(桜島線)にあります。1906年(明治39)年から1907(明治40)年にかけて天王寺~大阪間と大阪~安治川口間が国有化され、前者は「城東線」後者は「西成線」となりました。1943(昭和18)年には城東線と西成線で直通運転(天王寺~大阪~安治川口~桜島)がスタートしました。
1961(昭和36)年に貨物線を伸ばす形で天王寺~大正~西九条が開業し、「大阪環状線」が完成。同時に「西成線」の一部(西九条~桜島)は「桜島線」となりました。ぐるぐる回る環状運転が開始されたのは1964(昭和39)年のことです。
■現代的だが昭和な雰囲気も残る大阪環状線
JR西日本では2013(平成25)年から「大阪環状線改造プロジェクト」と銘打ち、大阪環状線のリニューアルに取り組んでいます。最もわかりやすい例ですと新型車両323系の導入ですが、余裕があれば少しだけ発車時にホームで流れるメロディー(駅メロ)に注目してください。
大阪環状線ではご当地駅メロを導入。たとえば大阪駅では「やっぱ好きやねん」をアレンジした駅メロが流れます。また駅名板などもオリジナル仕様になり、現代的な大阪環状線になりました。
一方、鶴橋駅では焼き肉の匂いがしますし、天満駅を降りると多くの居酒屋が元気よく営業しています。現代的にはなりましたが、まだまだ昭和的な雰囲気も残す大阪環状線。「現代」と「昭和」が両立した路線になればと個人的には思っています。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)