ブリーダー崩壊から救われたチワワは、怖がりのオラオラ系 心を癒やしてくれたのは、同じ保護犬の女の子
いちちゃん(4歳・ホワイト・オス)は、ブリーダー崩壊(経営困難)のため飼育放棄され、2018年12月、他の犬たちと一緒に保護された。いくつかの団体が手分けして保護したが、いちちゃんは神奈川県を拠点に活動する「ゆいま~る」に行き、里親を募集した。
神奈川県に住む石川さんは、以前、ラブラドールレトリーバーを飼っていたほどの犬好きだったが、その子を亡くしてから「また犬を飼おう」という気になれずにいた。
ところが、たまたま立ち寄ったイベントで犬の譲渡会が開催されていて、保護犬のために何かできることはないかと思うようになったという。その後、たまたま「ゆいま~る」のブログで初めていちちゃんの写真を見たのだが、いちちゃんは保護されたばかりで、恐怖に怯えた表情をしていた。
「お世辞にも『可愛い』とは言えない顔をしていました。でも、どうしてもいちのことが頭から離れず、預かりボランティアさんのブログを読んだり写真を見たり…必然的なご縁を感じてゆいま~るさんに連絡しました」
■男の人が怖い
2010年2月2日、まずはお見合いをすることになり、ゆいま~るの代表と預かりボランティアがいちちゃんを石川さんの家に連れてきてくれた。家族全員と対面して、後日トライアルを始めた。
ブリーダーにどのような扱いを受けてきたのかは分からないが、いちちゃんは男性を怖がって噛んだ。「攻撃的というより、恐怖心から噛んでしまうようでした」
石川さんは、預かりボランティアに何度も連絡してアドバイスをもらったり、ネットや本で調べたりして、いちちゃんに「怖くないよ」と教えた。
「いちはだんだん尻尾を振って喜んだり、オモチャで楽しそうに遊んだりするようになり、本来あるべき感情も取り戻したように思います」
いまだに知らない人や犬は苦手だが、石川さんはトレーナーにトレーニングしてもらう必要は感じていないという。
「一緒にキャンプやカフェに行って、家族と幸せに暮らしていけたらそれでいいという、私たちなりのゴールにたどり着いたんです」
名前は、「犬=ワン=1=いち」というわけでいちちゃんになった。
『1番であり、オンリーワンであり、かけがえのない存在であることは確かです』
■最高のプレゼント
家族ではない人や他の犬も苦手ないちちゃん。遠くを歩いている犬にも吠えかかり、顔を合わせると威嚇する。
「人間で言うならオラオラ系でしょうか。相性の良い子なんていないんじゃないかとあきらめかけていた時、同じ保護団体から紹介されたのが“まき(ブラックタン・メス)”でした」
初めての顔合わせした日から、喧嘩することなくにおいを嗅ぎに行き、石川さんは「相性」というものを目の当たりにした。
「二つ返事で“まき”を2匹目として迎え、凸凹コンビ結成!“いち”は良き友を得て、私たちは多頭ライフを楽しませてもらっています」
犬と暮らすことはもう一生ないだろうと思っていた石川さんにとって、いちちゃんは、「最高のプレゼント」。他人が苦手なので家族と密に過ごせるキャンプはもってこい。犬連れOKの、ゆったりと過ごせるカフェを探すことも楽しみのひとつなんだという。
「できないことを悔やむのではなく、できることを思い切り楽しむ…そんな犬との暮らし方を“いち”には教えてもらいました」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)