看板猫がいる人気カフェが閉店…築130年の京町家で復活「再び猫たちのご縁をつなぐ場所に」

「看板猫がいるカフェ」として話題になった人気カフェ「おうちごはんcafe たまゆらん」。銀閣寺や京都大学などが近い京都市左京区浄土寺西田町にお店を構えていましたが、コロナの影響で売上が激減したほか、再開発事業によるお店の立ち退きなどで今年3月末、閉店に。

同カフェは営業を行いながら、猫とのご縁をつなぐイベントを開くなど2012年のオープンから今にいたるまで800匹以上の保護猫たちを里親に送り出してきた場所でもありました。そんなカフェの復活を目指して現在奔走しているのが、店主の大村明江さん。かつての看板猫のことやカフェ復活に向けた活動などについて、お話を伺いました。 

■メロンパフェがテレビで取り上げられ話題に 気まぐれに2階から降りてきた猫たちが“接客”

前店舗は2012年7月にオープン。京都大学や銀閣寺をはじめ、吉田神社、白川疎水がある今出川通りに面したお店でした。店主の大村さんは10年ほど前、体調を壊したことなどから勤めていた会社を退職。その後、起業に乗り出し、当時は京都には少なかったという、女性が一人でご飯をしっかり食べられるようなカフェを開こうと「おうちごはんcafe たまゆらん」をスタートさせました。 

メニューはサラダ、デリ2品、メイン、ごはん、スープ(またはおみそ汁)が1つのプレートに乗ったスタイルでハンバーグや1枚肉のフライドチキンなどを提供。中でも、季節ごとのフルーツを1パック、1つ丸ごと使う「季節のフルーツまるっと贅沢パフェ」が大人気に。メロンパフェはテレビで取り上げられるなど話題になったといいます。

そして、この浄土寺にあったお店は1階が店舗、2階が住居だったので猫たちが2階に暮らしていました。住居にいたのは、大村さんの飼い猫をはじめ、知人らから一緒に暮らせなくなったと預かっていた猫が10匹ほど。そのうち、猫たちがお店の営業中に2階の住居から降りてくるようになったそうです。

「開店当初は考えてもいなかったのですが、お客さまが食事に来られる場所に猫たちがお家から降りてくるというお店になりました。降りてきたのは、10匹中、サヴォン、シエル、アロマ、うー、けだま、ぎん、こてつ、の7匹。おのおの、好きなときに好きなように降りて来ましたね。

ですので、お店は猫カフェや保護猫カフェではなく、『看板猫がいるカフェ』と言われるようになったのです。知らずに入ってこられ、猫がいることに気が付かないお客さまがいらっしゃることもありましたし、逆に猫がいてびっくりして帰られるお客さまも極まれにいらっしゃいました。ただ猫たちは必ずいるわけではなく、気が向いたら降りてくるので店内に猫がいない時間もありました」

とはいえ、看板猫たちの人懐っこさなどからSNSやメディアに取り上げられ、多くの愛猫家から支持されました。やがて譲渡会などのイベントを開き、猫と人(里親)のご縁をつなぐ場所としても発展したといいいます。

「あくまでもお店は保護猫のお店ではなく、猫が好きなお客さまたちが支えてくださった結果、たくさんの猫たちがずっとのおうちに迎えていただけた、ということにすぎません。猫たちがお店に出るようになったのは猫たちのおかげ、猫たちをおうちにつなぐことができたのはお客さまの支えのおかげです」

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■コロナの影響で売上が激減、立ち退きの話が浮上・・・今年3月末に閉店 愛猫の死にも直面

多くのお客さんからカフェのおいしい食事も気まぐれに“接客”する猫たちも愛された「たまゆらん」。2020年春の第1波の緊急事態宣言明けからコロナの影響で売上が激減したのです。換気システムの不十分さなどからテイクアウトで営業を続けましたが、「店内飲食ができないのであれば」と、他へ行くお客さんが続き、店の売り上げは1日に2人2000円にも満たないという状況まで落ち込みました。

また、緊急事態宣言下でも営業時間や酒類を置いていないことから休業補償金は対象外で受け取ることもできず。開けていることで赤字が膨らむということでカフェ営業は無期限休業となったといいます。

このままではコロナが終息したあとにお店を再オープンできるめどが立たない、と悩んでいたという大村さん。そんなとき、SNSで全国各地のお客さんから「お店に行けないからチーズケーキを送ってくれない?」などの問い合わせをもらったことから、ネットショップ「SAVON’S SAVE THE CAT BAKEFACTORY TAMAYURAN」を立ち上げることに。店舗で販売していたというパウンドケーキが予想以上に売れて、店も何とか持ち直しました。

そんな矢先の2020年11月下旬。高齢で腎臓の弱っていた“オーナー猫”の愛猫サヴォン(SAVON)くんが虹の橋を渡りました。

「サヴォンは、茶トラ柄で推定2006年9月生まれの男の子。上賀茂神社の手づくり市に出店していた日に、出店仲間にメールが届き、『猫飼わない?』と言われ、ペット可能物件に住んでいたことから迎えた子です。お迎えしたのは2006年11月。サヴォンはコンビニ袋の口をくくられた状態で偶然発見されました。保護された方が歩いていたときに袋が動いたので不思議に思い、開けてみたらサヴォンがそこに入っていたそうです。

保護された方のおうちにウサギがおり、一緒にできないと、すぐにでも里親さんにつなぎたいとメールが回った中に友人がおり、うちに来ることになりました。初めての猫だったので、不安なところもありましたが、サヴォンにいろいろ教えてもらいながら私自身も成長することができてとても感謝しています。とにかくサヴォンは心も体も大きなどっしりした子。性格もとても穏やかで子猫たちを次々受け入れてくれる優しい子でした」

大村さんはサヴォンくんとの死に向き合いながらも、当時は喪失感から何も手が付かず・・・気持ちも落ち込み、ふさぎ込んでいました。 しかもその数日後、追い打ちをかけるような出来事がありました。それは、以前から店舗の貸主から伝えられていた店舗周辺の再開発事業によるテナントの売買の具体的な話が持ち上がり、翌年21年3月末で店の立ち退きが決定したのです。

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■防空壕が残る町家を改修、カフェ“復活”を目指す クラファンにも挑戦中

「お店を閉めることにより、今まで自分で時間の融通をつけることで出来ていた猫たちのご縁つなぎも終了してしまう」・・・立ち退きが決まり、今後どうすべきか悩んだという大村さん。たくさんのお客さんからも再開を望む声が上がり、店舗退去が決まったあとからすぐに移転先物件を探し出したといいます。

望む大きさや賃料の物件がなかなか見つからない中で、やっと巡り会ったのが町家物件でした。それも築130年、防空壕が残る京町家。大家さんとの数カ月におよぶ条件交渉の末、借りられることに。前店舗退去の3月末日から新店舗契約まで半年かかったそうです。そこから話が進んでいきました。地元の不動産会社「空き家バンク京都」が町家の改修を担当して、たまゆらんの新店舗としてオープンを目指すことになりました。

「京都という場所でそれこそ土地柄などによるいろんな問題があります。京都の街並みを作る『京町家』。京都を彩る大切な財産のはずが負の遺産とよばれる始末。お店としてお借りすることで手を入れさらに長く町家を使うことができる。取り壊されないで済みます。

猫たちの問題も、お店を営業することで猫たちに使えるお金を増やすことができるだけでなく、猫との暮らしについてのお話ができたり、これから猫と暮らす人たちと猫たちをつなげたりと、場を持つことでいろんなご縁をつなぐことをこれまで以上に加速させることができます。猫と人、場所と人、人と人、すべてご縁があってのつながりです。つながりを大切にしながら営む新店舗のオープンを目指して頑張ります」

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現在、新店舗のオープン(2022年2月22日の予定)に向け、京町家物件の改修費や備品購入費などが多額になるため、クラウドファンディング(CAMPFIRE)で支援を募っています。また、子猫の里親も募集中です。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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