カラスに攻撃された瀕死の子猫 驚異の回復力で保護主にスリスリ 先住猫とも仲良く元気に
■運転中に発見「ただのゴミ? それとも猫」
レオくん(生後4ヶ月・オス)は、瀕死の重傷を負っていたところを保護された。
2021年10月15日、佐賀県に住む大久保さんは、茶々丸くんという子猫を保護した。他にも保護した猫と暮らしていたので、10匹目の猫だった。
その11日後の10月26日、いつも通り買い物をして、家に向かって車を走らせていると、道路脇に何かうずくまっているのが遠目に見えた。カラスがクチバシで突いていて、「ただのゴミか?イタチか?もしくは猫か?」と思い、ゆっくり車で近づいてみると、白っぽい毛の子猫だった。かなり衰弱していて、カラスに食べられかけていた。
大久保さんはすぐに車を降りてカラスを追い払い、子猫に近づいた。顔面は血まみれで大量の鼻血が出ていた。身体からも数カ所出血していてかなり衰弱していた。
「鳴くことも動くこともなかったので、もう亡くなっているのかと思い確認すると、かすかに目を開けて、弱々しく少しだけ動いたんです。『まだ生きている!』と思い、家の近くだったのですぐに母に電話をかけて来てもらいました」
お母さんを待つ間、かかりつけの動物病院に電話して子猫の状態を伝えると、その日は午前中のみの診察の日だったが、「すぐに連れて来られるなら診察する」と言ってくれた。大久保さんは、車に置いていたブランケットで子猫をくるみ、お母さんが機転をきかせて持ってきてくれたダンボールに入れた。
■「助けてくれたんだよね、ありがとう」
レオくんは生後4ヶ月ほどの大きさだったので、「もうカラスの餌食になるような大きさではない、なんでだろう?」と、獣医師も驚いた。
診察室でダンボールから診察台の上に出してみると、左前脚をひどく痛がり、手をついて歩くこともままならない状態だった。
「車にはねられ、頭と身体を打って動けずにいたところをカラスに襲われたようでした。助かる可能性は低く、今は大丈夫でもいつ急変するか分からないと言われましたが、そのまま見放したら亡くなる可能性しかないので、できることはしてあげたいと思いました」
レオくんは、その日はそのまま入院して酸素室に入った。翌日様子を見に行くと、ごはんも食べず、水も飲んでいなかった。
「小さな身体でただじっと痛みに耐えて、必死で生きているのを見ると心苦しく、見守ることしかできないもどかしさでいっぱいになりました」
もう2日入院させることになり、大久保さんはとにかく祈るばかりだった。2日後迎えに行くと、少し元気になっていたという。
「ごはんも少し食べられるようになり、なんとか歩くことができるようになっていました。対面するとすぐに私に駆け寄り、胸のあたりに頭をごつん。顔をスリスリ、身体もスリスリ。まるで『助けてくれたんだよね、ありがとう』と言ってくれているようでした」
■危険な状態から、奇跡の再会を果たす
獣医師が、「すさまじい回復力、連れて帰っても大丈夫」だと言ったので、大久保さんは、そのまま家に連れて帰ることにした。
「私も母も互いに何も言っていませんでしたが、2人とも飼う気満々、それ以外の選択肢は考えていませんでした」
家に連れて帰ると先住猫たちは、「また新入り猫が来たのか」と興味津々。少し威嚇したが、「今回は様子がいつもと違う」と感じたようで、普段は2階へ逃げる猫たちもケージのある部屋に全員集まった。レオくんをケージから出すと、全く物怖じせず、部屋の中をズンズン探検した。先住猫にも近づいてご挨拶。大久保さんやお母さんにもぴったり寄り添い、頭をくっつけてスリスリした。
「とりあえずごはんとお水をあげるとすっごい食いつき!!一心不乱に食べてくれました。でも、やはり左前脚が不自由で食べづらそうで、力が入らずよろよろ。食べ終えると少し安心したのか、ぐっすり眠っていました」
レオくんが寝ている間に、先住猫たちは変わるがわる何度ものぞきに来て匂いを嗅いでみたり、じっと様子を観察したりした。
「今まで保護した猫と違って弱々しく、顔にもまだ血がたくさん付いていました。脚にも力が入らない様子を理解したようで、そっと見守り、全く攻撃も威嚇もしない。猫の察知能力に驚かされました」
レオくんは日に日に容体が良くなり、家に来て4日後には、大久保さんのベッドで寝るようになった。2階に上れるほど脚も回復して、顔の腫れも引いて輪郭がはっきりしてきた。
「家に来て2週間ほどですが、もう完全に家族の一員になりました。まったりくつろいでくれていて、とても嬉しいです。まだ目から血が出てきますが、危険な状態だったのによく回復してくれました」
■実は、前にも一度会っていた「縁」
レオくんは、大久保さんが仕事や出先から帰ると必ずお出迎えをしてくれる。キリッと強そうな印象で、ライオンのような雰囲気だったので、ラテン語でライオンの意味を持つレオという名前にしました。
レオくんの性格は、とても優しく温厚。大久保家の猫の中では珍しく、長い尻尾をフリフリする。まだ万全ではないようで、他の猫より寝ていることが多いが、子猫の中では一番よく食べてくれるので一安心なんだという。
「よく食べるから回復も早いんでしょうか。茶々丸と兄弟なのかしらと思うほど顔が似ていて、とても仲良し。いつも一緒に遊んでいます」
奇跡的に回復したレオくん。保護する前に一度、大久保さんの家に来たことがあり、網戸越しに会っていた。
「その時は保護するかどうしようか悩んで、外に出て声をかけましたが、ものすごい速さで逃げて行ったんです。ご縁がなかったのかと思っていた矢先の出会いだったのですが、何かしらの縁で再会したとしか思えません。これから厳しい寒さがやってくるので、良いタイミングで助けることができて良かった」
大久保さんは、レオくんに再会できて毎日が幸せなんだという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)