岸田首相が安倍元首相に「けんかを売った」、パーティーでの強気で皮肉な祝辞
10月31日の衆議院選で、自民党が絶対安定多数である261議席以上を維持したからだろうか。それとも12月5日に公表された讀賣新聞と日テレの共同世論調査で、内閣支持率が56%から62%と、6ポイントも上昇したたからだろうか。最近の岸田文雄首相はかなり“強気”になったと評判だ。12月6日に都内で開かれた清和研のパーティーでは、安倍晋三元首相に「けんかを売った」というから、さあ大変。いったいどういうことなのか。
この日のパーティーは、衆議院議長に就任した細田博之前会長の送り出しと、その後任に安倍元首相が就任したお祝いという2つの意味があった。来賓は友党である公明党の山口那津男代表の他、自民党本部からは岸田総理総裁、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と高市早苗政調会長などが駆けつけた。
岸田首相は挨拶の冒頭で「安倍体制がスタートして最初の懇親会で、30年ぶりに“安倍派”が復活した。入会者が殺到しているので、我々宏池会もあやかりたい」と、祝辞を述べた。しかし実はそれにはとんでもない“皮肉”が含まれているという。ある関係者はこう語る。
「岸田首相は衆議院大阪府第15区から出馬して落選した加納陽之助氏が宏池会に入会しなかったことを怒っている。加納氏は2021年の衆議院選で政界を引退した竹本直一元情報通信技術政策担当大臣の娘婿で、竹本氏は宏池会に所属していたが、加納氏には清和研に入会させた」
総理派閥といえ、衆議院議員30名、参議院議員12名の宏池会は、自民党内では清和研、平成研、志帥会に次ぐ第4勢力にすぎない。最大派閥の清和研は衆議院選で議席を落とし、87名まで減じたものの、新規入会で95名を維持している。
だがこればかりではない。岸田首相は宏池会と清和研との“因縁”についても述べたのだ。
「清和研の原点は昭和38年の党風刷新連盟だ。(宏池会創設者の)池田(勇人首相)の所得倍増計画に反対するために、(清和研創設者の)福田赳夫先生が作られた」
それはあたかも、「台湾有事は日本有事」などと発言し、岸田外交を揺さぶろうとする安倍元首相への警鐘とも思えてくる。
そもそも岸田首相は長らくポスト安倍の最有力候補だったが、2020年9月の総裁選では勝利した菅義偉官房長官(当時)に遠く及ばなかった。また今年9月の総裁選では、安倍元首相は“同志”ともいえる高市氏を応援し、岸田首相の票を剥がそうともした。よって岸田首相は安倍元首相に対して何の恩義も感じる必要はない。
昨日の敵は今日の友で、今日の友は明日の敵-。権力を巡る争いに、仁義は必要ないのだろう。
(政治ジャーナリスト・安積 明子)