すきやばし次郎に魅了された台湾人「台湾のシリコンバレー」に本格江戸前鮨店オープン
台湾・台北から高鉄(ガオティエ、台湾新幹線)で30分ほど行った場所に「新竹(シンジュウ)」という街があります。地方都市なのですが科学園区が存在し、大手の半導体企業などが本社を置く街で、平均収入は台湾一。エンジニア家族や海外からの駐在員も多数在住し、発展し続けている勢いのある街です。そんな新竹に今年の10月、日本人の妻「まゆみさん」と日本で修行された台湾人の夫「安さん」が経営する本格江戸前鮨の店「鮨安」が開店しました。コロナ禍での開店にもかかわらず、連日予約で満席なのだとか。妻のまゆみさんに話を聞きました。
■出会った当初から夫婦で経営が夢
──旦那さんはどういったきっかけで鮨職人を目指されたのでしょうか?
「元々、夫の両親が新竹で日本料理店を経営していて、子どもの頃から料理人になりたかったそうです。高校卒業後は日本料理を学ぶため東京の調理師専門学校に留学し、日本料理を専攻。校外実習先のすきやばし次郎六本木店で鮨に魅了され、鮨職人を目指すことを決めました。校外学習後そのまま働けることになり、この度台湾での開店においてもたくさんお世話になりました」
──台湾で鮨屋を開くというのはご夫婦の夢だったのでしょうか?
「夫とは調理師専門学校で出会い、付き合った当初から将来は台湾に戻って店を開くと言われていました。私も夫婦でお店を経営したいという夢があったので、一緒に台湾へ渡り支えたいと思いました」
──開店にあたって大変だったことは?
「まず食材探しです。店では台湾と日本の魚介を使用しています。この1年、台湾全国の漁港へ出向き、人と繋がり、試作を繰り返しました。日本の魚介の輸入に関しては、修行時代は市場で直接魚を見て仕入れられましたが、台湾からだと難しい。航空便の送料もあり、安定して仕入れるために色々考えました。あとはコロナ禍です。本当は6月開店の予定でしたが、台湾のコロナ規制で室内人数に制限がかかったため工事の人員が減り、作業が遅れ開店が10月になりました」
──メニューは台湾の方に好まれそうなものにアレンジを?
「台湾風にはせず、日本の江戸前鮨です。内容は鮨14個と玉子焼です(修行先の呼び方で、貫ではなく個だそうです)」
■来年4月まで予約がいっぱい
──まゆみさんは台湾生活に不安は?
「2020年の4月に台湾に移住しました。それまで台湾には一度しか行ったことがなく、妊娠中期でもあったため、はじめの1年はなかなか大変でした。またコロナで日本の家族に会えないのも辛いですが、徐々にSNS等で在台日本人の方との繋がりが増え、今ではとても楽しく生活しています」
──まゆみさんも調理師学校でお勤めだったそうですが、ご自身のお店などお考えでしょうか?台湾でやりたいことなどありますか?
「今は育児に専念していますが、将来は勤務経験を生かし、日本人向けのお菓子教室ができたらいいなと考えています。また夫から鮨の最後にデザートを出したいとも言われているので、それも考え中です」
完全予約制のお店は連日大盛況で、すでに来年4月ごろまで予約がいっぱいだそうです。好調な滑り出しと聞くと、気になるのが将来の店舗展開です。2号店なども考えているのでしょうか。
「日々、より良い形でお客さまに提供できるよう、今は目の前のことに集中しています」
(まいどなニュース特約・Coco)