カーテン開けるとベランダに見慣れぬ猫 落ち込む日々から救ってくれたね 中断していたマイホーム計画も再開
■中に入れてください
にゃん吉くん(3歳・オス)は、2019年4月、関東地方に住むみんさん夫妻のアパートのベランダにやってきた。みんさんは、ベランダの窓を叩く音と猫の鳴き声が聞こえたので、「なんだろう?」と思ってカーテンを開けると、そこににゃん吉くんがいたという。
「首輪も付けておらず、痩せていましたが、被毛は汚れておらず、きれいな顔をしていました」
窓を開けるとにゃん吉くんは当然のように入ってきて室内を探検した。満足するとまた外に出て行ってしまったが、しばらくするとまた戻ってきた。ちゅーるもごはんも人の手から美味しそうに食べ、膝に乗ってゴロゴロと喉を鳴らした。とても人懐っこい子だった。
ひとまず動物病院に連れて行くと、「1歳くらいで、健康な未去勢の雄」だと言われた。「首輪らしき跡がある」とも言われたので、迷い猫かもしれないと、みんさんは警察や保健所に連絡して飼い主を探した。しかし、一向に名乗り出る人は現れず、そのまま家の子として迎えたという。
■辛い時、寄り添ってくれた
みんさんはもともと猫が好きで、夫は犬好き。「いつかは動物を迎えたい」と普段から話していた。
「命に値段をつける生体販売には違和感を感じていましたし、殺処分されてしまう犬や猫もいるので、迎えるなら保護された子にしようと決めていました」
「にゃんだふるな猫生に大吉なことがいっぱい起こりますようにという願いを込めてにゃん吉と名付けました。にゃん吉にそう感じてもらえるように頑張るぞという私たちの決意でもあります」
保護を決めた夫は即キャットタワーなどを購入。外に出られないようにすると、にゃん吉くんは、窓をカリカリしたが、すぐに諦めた。おもちゃでも思いっきり遊び、トイレも慣れていたようで粗相もしなかった。キャットタワーも使いこなし、爪もガリガリ研いで満足げ。首輪も嫌がらず、人との生活に慣れた様子だったという。
にゃん吉くんは、食いしん坊でやんちゃ。みんさんが料理をしていると、魚をくわえて逃げたこともある。カリカリの入った袋を破って必死に食べていたこともある。狙ったおもちゃをなかなか離してくれないのには少し困っているという。
甘えん坊な面もあり、必ず人の気配が感じられるところにいる。撫でられるのが大好きで、ゴロゴロと喉を鳴らしてうっとりした顔をしてくれる。
「私が落ち込んでいるとすぐに察知して近くに寄り添ってくれるんです。色々溜まって夜中に座り込んでいた時も、そっと横に座ってゴロゴロ音を聴かせてくれました。優しい子です」
■にゃん吉のための家
みんさんは、にゃん吉くんに出会う半年ほど前につらいことがあり、ずっと落ち込んでいた。
「何も楽しくなくて、思い出しては泣いていました。部屋も掃除できず荒れていて、カーテンも開けられませんでした。にゃん吉の声が聞こえて、久しぶりにカーテンを開けたんです」
にゃん吉を迎えるために部屋を掃除して、買い物に出かけた。「かわいいなあっ」と、久しぶりに笑ったという。
「ぎゅってするとあたたかくて、柔らかくて、すりすり甘えてくれて、ニャッと話しかけてくれて。だんだん泣くことが少なくなっていきました。にゃん吉が来てくれて真っ暗だった世界が明るくなりました」
みんさんは、もしもにゃん吉くんに出会えなかったら、今こうして元気に過ごせていなかったと思っている。中断していたマイホームの計画も再開。猫が快適に過ごせる設備かを重視し、建設会社を決定。間取りも猫仕様に変更し、2020年9月、「にゃん吉のための家づくり」をテーマにした新居に引っ越した。今では保護猫譲渡会で出会った福ちゃん、庭に来た野良猫のちゃた朗くんも迎え、猫中心の生活を送っている。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)