コロナ禍で手洗い推奨も…「水が冷たくて子どもたちの手がちぎれそう」「学校でもお湯を」先生の訴えに反響続々 教育委員会や文科省の見解は
コロナ禍もそろそろ丸2年になろうかという2021年12月、また寒い冬が巡ってきた。マスク着用や手洗い、アクリル板の設置、人との距離の確保など、様々な場所で今も感染防止対策が続いているが、学校現場から上がったある悲痛な声がネット上で大きな注目を集めている。
「毎年言ってる気がしますがまじで学校でお湯がでるようにしてくれませんかね。もうね、手を洗うたびに手がちぎれそう。掃除もきつい。今日とか寒すぎて手洗いしたがらない子が続出。クーポンのシステムに何百億円も使ってる場合じゃないよ。そんなお金があるならば学校にお湯、お湯ーーーーー!!!!」
Twitterにそう投稿したのは、関東地方の小学校教諭というアイムフリーさん(@TeacherhaGreat)。実はちょうど1年前の2020年12月にも同様の投稿をしていたが、その後も特に改善される気配はないという。一方、この投稿には「学校だけが社会や時代から隔絶されている」「衛生管理面でもお湯が出るのは大事」「幼稚園でもお願いしたい」など、同情や賛同の声が続々と寄せられた。
アイムフリーさんに話を聞いてみた。
-お湯が出ないことによる学校現場でのデメリットとは。
「一番のデメリットは、新型コロナやインフルエンザなどの感染症が流行る冬場に、子どもたちが手洗いをしたがらないことです。次に掃除。おそらく多くの学校現場ではまだまだモップが普及しておらず、手で雑巾がけをしています。子どもたちにはこれが辛いんです」
-同業者と思われる人たちからも大きな反響がありました。
「学校だけでなく、幼稚園や保育園でも同じなんだなと。高速道路のSAでお湯が出たときに感動したことを覚えているので、早く学校にも…と思っています」
■「学校にお湯を」北海道では署名活動も
ちなみに当サイトの地元である神戸市では2021年度、感染対策の一環として、市立の約300校園で手洗い場の蛇口を非接触のセンサー式に切り替えている。市教委によると、対象となる蛇口は約1万2000個。ただ、残念ながらお湯が出るようにはならない。担当者は「神戸に関しては現場からそのような要望はなく、導入を検討したこともない」とした上で、「仮に全校園で整備することになれば、給湯器などのメンテナンスも必要なので、どれほどの費用がかかるのか…」と話した。
では寒さのより厳しい北の方ではどうだろう…と思って調べていると、北海道釧路市の人が「感染症対策としてお湯で手を洗えるよう、小中学校などに温水器の設置を」とネット上で署名活動をしているのを見つけた。建築家の齋藤邦之さん。小学校3年生と1年生の2人の息子が、真冬に「痛いくらい」冷たい水で手を洗っていることを気の毒に思い、「この問題に関心を向けてほしい」と声を上げたという。
「釧路の冬は1日中0度を下回ることもあるほど寒く、当然、冬の水道水はとても冷たいのですが、それでも学校ではお湯は使えません。しもやけやあかぎれになっている子もいます。PTAに声かけしたり、市長や市教委に陳情したりもしていますが、反応は鈍いです」と齋藤さんは言う。
「私も建築の仕事をしていますので、既存の設備がないところに給湯器を導入する大変さや費用面での難しさはよくわかります。それでも『学校の手洗い場はお湯が出なくて当たり前』という“常識”はコロナ禍を機に見直すべきだと思いますので、声が届くまで長い目で見て取り組んでいくつもりです」
■温水の導入は国の補助の対象にも
学校の施設整備を管轄する文部科学省の施設企画課と施設助成課にも取材したところ、手洗い場で温水が出るようにする工事は、内容や規模によっては補助の対象になるという(下限額あり、補助率は3分の1)。施設助成課の担当者は「お湯が出るようにするかどうかは、基本的にはそれぞれの自治体の判断になります。とはいえ学校の改修に関しては、まだまだ耐震補強などが優先的に進められているのが現状です」と説明する。
実はコロナ禍を機に、温水が出るようにした自治体もある。
青森県黒石市では2020年度、市内の小中学校全6校の手洗い場などに温水が出る蛇口を設置。同市教委によると、各校で冷水しか出ない既存の蛇口2個ごとにお湯が出る1個を新設し、水は石油給湯器で温めているという。地元紙の記事などによると、工事は「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用。冬でもお湯で手を洗うことができるので、子どもたちにも喜ばれているそうだ。
(まいどなニュース・黒川 裕生)