母猫に「人は怖いよ」と教わった兄妹の子猫 最初は威嚇され続けたが、今は“ツンデレ”に振り回される幸せな日々

■餌を与えていた野良猫が出産

蓮くん(オス)と華ちゃん(メス)は生後7ヶ月の兄妹猫。とある会社の敷地内で、社長が野良猫にえさをあげていたところ、いつの間にか妊娠していて、2021年5月に出産したという。

社長は不憫に思い、母猫は不妊手術をして、子猫たちは山形県で保護活動をしている「えんたね」という団体に託した。その時、子猫達は生後3ヶ月くらいになっていた。

■保護猫を探す

神奈川県に住む中島さんは、夫婦ともに子供の頃から実家で猫を飼っていたので、いずれ猫を飼いたいと思っていた。いくつかのペットショップに行って、どの子にするか考えていた時、会社の先輩が保護猫を2匹迎え入れて、伸び伸び暮らしているという話を聞き、「保護猫を迎えるのもいいかな」と思ったそうだ。

「もともと保護猫がいることは知っていて、1匹でも不幸な猫を減らすことができないか、一緒に生きていくことで力になれないかと思い、保護猫を見に行くことにしました」

生まれたての赤ちゃん猫や子猫ではなく、生後半年ほど経った猫を希望した。2回ほど違う保護団体が開催している譲渡会に足を運び、たくさんの猫たちに会ってみた。

「2回目の譲渡会で、『この猫がいいな』と思える子たちがいたのですが、寸前のところで別の家族に決まってしまい、残念に思っていました」

10月末、中島さんは、「えんたね」で活動している従姉に別件で連絡する機会があり、「猫を迎えたい」と相談したところ、「ちょうどいい子たちがいるから一度会いにおいで」と言われた。その猫が蓮ちゃんと華ちゃんだった。

2匹は生後3ヶ月くらいで保護されたので、野良猫暮らしが身についていた。母猫に人に近寄るなと教育を受けていたので、なかなか人馴れしなかった。えんたねに来て3ヶ月、徐々に人に馴れてきた頃に中島さんに出会ったという。

■幸せに生きてほしい

蓮くんも華ちゃんも、家に来た当初はかなり警戒していて、近づこうとしても威嚇して、触ることすらできなかった。

「もちろんそうなるだろうなと分かっていたのですが、実際に威嚇されるとショックでした。でも、めげることなく猫のために生活環境を整えたり、一緒に遊んだりするうちに蓮は抱っこをさせてくれるようになりました。華はいまだに触られることを嫌がりますが、お腹がすいた時だけは、猫撫で声でおねだりします。少しずつですが、心を開いてくれているようです」

蓮くん、華ちゃんという名前は、蓮(はす)の花に因んでいる。中島さんの祖父は生前山形で住職をしていたので、幼少期より仏事に触れる機会が多かった。「えんたね」で活動している従姉も同じ祖父の家系だったので、仏にゆかりがある名前にしようと思ったそうだ。

「仏教で『一蓮托生』の語源にもなっている蓮の花には、死後に極楽浄土に往生し、同じ蓮花の上に生まれ変わって身を託すという思想もあります。保護された猫たちも新しい環境で生まれ変わって幸せに生きてほしいという思いを込めました」

■猫を迎えて毎日が充実

蓮くんは新しいものに興味深々だが、ビビりで警戒心が強い。家に馴染むと甘えん坊になった。おなかがすいているときは足元や顔に身体をスリスリしてくる。華ちゃんは落ち着いていて、肝が据わっている。人との距離を取りたがるので警戒心が強いと思いきや、気付くと人の近くに座っていることもある。

「かといって簡単に触らせてくれるわけではないので、猫ならではのツンデレに振り回されています」

2匹を迎えて中島家は猫中心の生活になった。猫たちのために早く仕事を終えて、寄り道せずに帰るようになり、夫婦で猫の世話をしているので、同じ話題や悩みを共有するようになったという。

「以前より毎日が充実しているように感じます。蓮と華は、私たちに笑顔をもたらしてくれます」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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