■池のほとりにいた姉妹の子猫

SHEちゃん（1歳4ヶ月・メス）は、2020年8月上旬、岐阜県にある“かみた動物病院”の獣医師が保護した。その2週間後、同じ動物病院に保護団体のボランティアが保護したHEくんが連れてこられたという。

SHEちゃんは動物病院の近くの池のほとりに姉妹で捨てられていた。獣医師に「猫が捨てられている」という連絡が入り、見に行ったがみつけられなかった。飼っていた犬を連れて再度探しに行ったところ、犬に反応して2匹の子猫が出てきたそうだ。

SHEちゃんはグレーの子猫で、もう1匹は白の三毛猫。獣医師の妹は、東京都に住む友人の佐々木さんに、「三毛猫の方を家族に迎えるかどうしようか迷っている」と連絡をしてきた。

「SHEちゃんの里親もこれから探すと言っていたのですが、姉妹の写真を見た瞬間、私は『SHEちゃんに会いたい！』と思い、車で会いに行きました」

■仲良くよちよち歩き

佐々木さんは、夫婦ともに犬派で、猫を飼うつもりは全くなかった。SHEちゃんとの出会いは思いもよらぬことだった。夫に写真を送ったら、「会いたい」と言うので、とにかく一目会おうと、夫婦で岐阜まで車を走らせた。

「もしもあの時写真を見せてもらっていなければ、SHEと出会うこともなかったでしょう。とにかく可愛くて、今すぐ会いたいと思ったのです」

岐阜まで向かう車の中で、夫妻は「家族になるんだねー」と話していた。最初は、飼うか飼わないか決めていなかったが、もうすっかりSHEちゃんを連れて帰る気満々だった。

「なんとなく1匹だけではなく2匹飼いたいと考えていて、もし友達がOKしてくれたら、白い三毛猫ちゃんも一緒に引き取れないか相談してみようと話していました」

動物病院に着いてSHEちゃんを抱っこしていると、もう一匹保護されていた子猫がヨチヨチ歩いてきた。まだ自分でミルクも飲めないその子がHEくんだった。

HEくん（1歳４ヶ月・オス）は親猫に置き去りにされていたのだが、生まれたばかりで目も開いておらず、へその緒がついたままだった。生後3日くらいで、生きられるのかどうか分からなかった。しかし、獣医師がチューブで2時間おきにミルクを飲ませて熱心に育てたので、丈夫な子になったという。

HEくんを見た夫は、すぐに「この子も一緒に迎えます」と言ったが、「まだ自分でミルクも飲めないし、排泄もできないので、数時間おきにそれをしないといけないよ」と言われた。しかし、夫妻は、「がんばります！」と言って、ミルクを与える方法を教えてもらい、2匹を連れて帰ることにしたという。

「HEくんに会った瞬間、目がとてもきれいで、『なんてかわいいの！』と胸キュンしてしまったんです。そしてなにより、SHEちゃんとHEくんがとても仲良しで、一緒によちよち歩いていたので、2匹一緒に迎えたいと思いました」

■犬派だったが猫を飼う

佐々木さんも夫も、もともとは犬派で、猫が苦手だった。

「毛が抜けるし、何を考えているのか分からないし、くねくねしているし、目が怖いと思っていました」

佐々木さんは、「いつか動物と暮らしてみたい、迎えるなら保護犬がいい」と思っていた。保護犬のホームページをよく見ていたが、夫は「生き物は飼わない」と言っていた。二人とも幼い頃実家で犬を飼っていたので、犬を亡くした経験があり、そう簡単にペットを飼えないと思っていた。

「友達からSHEちゃんの写真が送られてきた時、猫嫌いなのになぜかとても惹かれました。猫を飼おうというより、SHEちゃんとHEくんがたまたま猫だったというわけです」

夫妻は動物病院でもらった箱に2匹を入れて、座席の下に置いて東京に向かった。2匹は緊張している様子はなく、箱の中で爆睡したり、じゃれたり、ボックスから出てきて佐々木さんの膝の上で寝たりした。

「家まで5時間、冒険して、寝て、じゃれて、とても楽しんでいました。家に着いてもリラックスしていて、買ってきたトイレを組み立て、砂を入れるとSHEちゃんがすぐにおしっこをしました。HEくんもくんくんしたりして、2匹で部屋を探検に行きました」

夜はケージに入れて寝かせようとしたが、小さい2匹は隙間から出てしまい、さらに「出せ出せ！」と訴える姿が可愛くて、結局、2匹とも好きな場所で寝ていたそうだ。

■2匹でいれば怖くない

2匹は猫用のフワフワクッションがお気に入りで、SHEちゃんはそのクッションでしかフミフミしない。夫妻は猫のことは分からなかったが、とにかく小さいうちからいろんな人に会わせて人に慣れさせようとした。車にも慣れさせようと、週2～3回くらい夫が会社に連れて行った。

「みんなのデスクで寝たり、仕事の邪魔をしたり、かなり可愛がってもらったおかげで、2匹とも人が大好きな子になりました。知らない業者さんが家に来てもスリスリ近寄って行きます」

SHEちゃんとHEちゃんは、佐々木家に来た時から、「二人でいれば怖くない！」という感じで、いつも2匹一緒。とても元気に過ごしているという。

（まいどなニュース特約・渡辺 陽）