ひとり親のプレッシャーの中、収入アップを目指して転職を決意 アラフォーシングルマザーの思い
ひとり親世帯が抱える問題はさまざまですが、その中でもとくに社会問題の一つとなっているのが経済的な問題です。こうした問題を解決するために、2013(平成25)年3月に「母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法」が施行され、企業に対して優先的にひとり親を雇い入れたり、その他の協力を要請するといった取り組みがなされています。
経済的な悩みを抱えていた40代のシングルマザーAさんは、このたび15年間正社員として勤務した職場を退職して転職しました。決断するまでの葛藤などを聞きました。
■いまの職場では収入は上がらないのは分かっているけど…
Aさんには大学生と高校生の2人の子どもがいます。子どもに手がかかることは少なくなりましたが、食べ盛りの子どもの食費や教育費にお金がかかるようになってきました。
Aさんは離婚前から正社員として現在の職場で働いていますが、いま以上に収入が増える見込みがないことをずっと悩んでいました。これからさらに必要となる教育費や老後資金、その他の生活に必要な費用を考えると、いまの収入では生活が苦しくなるため、収入が増えるならば転職したいと考えていたのです。
しかしこれまで慣れ親しんだ職場を退職することのリスクや40代という年齢を考えると、転職したいという気持ちはあるものの一歩を踏み出すことができませんでした。
■離婚後、資格を取得した意味は?自問自答した結果、答えが見えた
Aさんは離婚後、通信制の大学へ入学し国家資格を取得。その1年後、通信制の養成校へ入学し、新たな国家資格を取得していました。一つ目の資格は取得すると現在の職場で資格手当が支給されるため、資格を取得することにしました。二つ目の資格は現在の職場では資格手当はつかないのですが、将来もしも転職することがあれば有利になると思い取得したそうです。
転職したいと思いながらも、心のどこかで慣れた職場でいまの生活をしていた方がよいのではないかと思う気持ちがあった、とAさんは話してくれました。そんな葛藤の日々を送るなか、Aさんはいくつかの質問を自分にしてみたのです。その中の一つの質問が「なぜ、お金をかけて二つ目の資格を取得したのか?」でした。この質問の答えは資格を取得しようと思ったときと同じように「いまより収入をあげるため。将来、転職するため」でした。
Aさんはその数日後、ハローワークである企業の求人に応募しました。その結果、いまの仕事の経験と資格を持っていることから採用となり、数カ月後に転職することになったそうです。年収は上がりますが、いまの職場以上に責任が伴う仕事に就くことになります。Aさんは転職にあたり「離婚したときに感じた、新しい環境に飛び込む不安と、子どもを育てる責任や覚悟を改めて感じた」と話してくれました。
◇ ◇
シングルマザーと一括りにしても一人ひとり離婚をした経緯やその背景にあるもの、生活環境などは異なります。働きたくてもさまざまな理由で働くことができない方や、転職したくてもできる環境にない方がいるということを理解することが大切です。とくにひとり親世帯の方は、背負っている目に見えない大きなプレッシャーに日々、押しつぶされそうになることも少なくありません。
数カ月先の転職については「正直不安がないと言えば嘘になるが、もうなるようにしかならない」とAさんは話します。なにより転職について悩んでいたときに背中を押してくれたのは、2人の子どもが言った「自分のやりたいことをやったらいいっていつも言っているのに、転職はやりたいことではないのか」という言葉だった…と、Aさんは笑って話してくれました。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)