瀕死のところを救われた人懐っこい子猫と、きょうだいで保護され警戒心の強い子猫 今では姉妹のように
■瀕死の子猫
アメちゃん(生後7ヶ月・オス)は、生後約1ヶ月で母猫に育児放棄された。2020年7月、3匹の子猫たちを発見したボランティアが保護して、一緒に保護活動をしている保護猫カフェふみふみ(以下、ふみふみ)のオーナーに「子猫を保護しました」と連絡してきた。オーナーが子猫を見に行くと、アメちゃんはとても弱っていた。
ガリガリに痩せ細り、背骨がゴツゴツと浮き出ていた。猫風邪をひいていて、目は潤み、瞬膜が降りていた。ごはんを自力で食べることができず強制給餌する必要があった。何はともあれ動物病院に連れて行き体重測定をすると、生後2ヶ月くらいなのに体重は400gしかなかった。ノミに吸血されて貧血を起こしていて、歯茎も舌も真っ白。「このままでは命の危険がある」ということになり、入院することになった。
3日後、アメちゃんは少し自力で鳴くことができるようになったが、まだ余談を許さず、輸血をしてもらった。それでも少しずつ元気を取り戻し、里親を募集できるまでに回復したという。
■人懐っこい子猫と野良気質の子猫
ハレちゃん(生後8ヶ月、メス)は、2020年6月下旬、生後約2ヶ月の時に兄弟2匹と母猫とともに保護され、母猫は不妊手術をした後、元いた場所に戻された。ハレちゃんたち3匹はふみふみに引き取られて里親を探した。
兵庫県に住む鳥養夫妻は、2020年5月、ペットのフェレットを亡くした。妻は食事中でもポロポロと涙を流し、家の中が悲しみに包まれた。「コロナ禍で家にいる時間が増え、動物の癒しが欲しいということになりました。猫派の妻と犬派の僕は、どちらを飼うのか話し合い、保護犬、保護猫がいるカフェに行ってみようということになったんです」
「犬か猫か、どうするか」と話をしていると、子供が「猫が良い」と言いはじめたので、猫を飼うことにした。最初に行った猫カフェにいた猫は、噛みグセがすごかったので断念し、ネットでふみふみを見つけたという。
7月中旬、鳥養夫妻はふみふみを訪れた。アメちゃんは他の兄弟はトライアルに出ていたのに、1匹だけ残っていた。すぐに鳥養さんのところに寄ってきてくれて、当時3歳だった子どもと遊んでくれた。一方、ハレちゃんたち兄弟は、野良猫育ちだったので逃げ回ってばかりいて、なかなか撫でることもできなかった。
「2回目にふみふみを訪れた時、アメを迎えたいと思い、兄弟の中で唯一抱っこできたハレと一緒にトライアルにチャレンジすることにしました。2匹の相性がわからなかったので、ハレを迎えるかどうか、この時は決めていませんでした」
■猫のおかげで子供が成長
家に着くと、人懐っこいアメちゃんは数時間で慣れて、家の中を探検した。ハレちゃんは、「ケージから出さないでください」と言われていたが、出してみると隅っこにいて、ずっと鳥養さんたちをにらんでいた。
「でも、おもちゃで遊ぶアメを見て遊びたいと思ったのか、恐る恐る出てきて遊んでくれました。ふみふみでも一度も遊んだことがなったようで、ふみふみの人もほっとしていました」
数日すると慣れて来たのか、キャットタワーで2匹仲良く寝転んだり遊んだりしていた。ただ、ハレちゃんは、人が近づくとすぐに離れた所に移動して、みんなの様子を見ていた。アメちゃんは人の後を付いて歩いたり膝に乗ったり、とにかく甘え上手だった。自分の名前は「アメ」と分かっているようで、「アメちゃん」と呼ぶと、1階にいても2階まで走って来て、「ンーニャ」と返事をしてくれた。
ハレちゃんは、ケージから出すと表情が少し変わってきた。夜になると家族と一緒に寝るようになり、寒くなってからは布団の中にまで入るようになった。誰にも気付かれずに入って、誰かが起きるとすぐに出ていって、遠くに座って様子を伺っていた。ちょうど1年が経つ頃、やっとハレちゃんも甘えられるようになり、家族が寝静まってから鳥養さんがリビングで座っていると、ドアからニャーと行って入って来て、頭をこすりつけて一周回ってから膝の上に座るようになったという。
「『ハレちゃん』と呼ぶと来るようになって、徐々にみんながいる時でも近くに座ることができるようになりました。どんどん甘えられるようになってきているところです」
アメちゃんは人懐っこいが、あまり運動神経が良くない。ハレちゃんの真似をして高いところに乗るが、洗面台の三面鏡の上から降りられなくなった時は、怖くて震えていた。ハレちゃんは野生児で、運動神経抜群。食器棚の上や窓枠など、とにかく高いところに登るのが好きだという。
「アメとハレを迎えて家族の会話が増えたし、何よりも笑顔が増えた気がします。夫婦喧嘩も少なくなりました。子供も自発的に世話をするようになり、猫のおかげで成長しています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)