大晦日の年越しそばいつ食べる問題に決着? そば研究家にルールを聞いた 「私は紅白を見ながら」

 大みそかの定番といえば年越しそばです。家庭によっては夕食がわりに食べたり、夕食のあとに夜食として食べたりとさまざま。そもそも食べる時間にルールはあるのでしょうか。

■そば研究家「楽しく食べるのがルール」

 そば研究家で「日本蕎麦保存会」の会長を務める片山虎之介さんに電話で話を聞きました。

──年越しそばは昔から大みそかの夜に食べていたんでしょうか。

 「もともと日本人は、1日の始まりというのは、太陽が沈んだら次の日なんですよ。昔の考え方では、12月31日の日が沈んだらもう1月1日なんです。夜に麺を食べると言うのは正月に食べているということなんです。年越しそばというのは言ってみれば正月に食べるそばだったんですよ。それが本来の姿なんです。日が沈めばもう次の日なのでいつ食べてもいいし、古い記録では1日に食べるところも2日や3日に食べるところもあります。今でもお正月に食べるところは各地にあります」

──それが今では大みそかの習慣になりました。個人的にも31日のうちに食べてから新年を迎えたい気持ちはあります。

 「現代の日本人の感覚としては、1年の汚れや出来事をきれいさっぱり拭い去って、新しい年を迎えようという価値観ですね」

──現代の年越しそばは大みそかの何時ごろに食べるのがいいとお考えですか?

 「ルールは何もないです。好きなようにおいしく食べるのが一番です。家族や大切な人たちと楽しく食べるというのが一番の味わいだと思います。そこに価値があると思います」

 「大みそかは皆さん、テレビを見たり夜ふかしたりするんで、夜中になったらお腹が空いてきますよね。私も夜、紅白歌合戦を見ながらお腹が空いてきた頃に『そばでも食べようか』と食べています。楽しく食べるというのがいってみればルールです」

■年越しそば、由来は?

 片山さんによると、年越しそばの由来は諸説あり、定かではなく、中には「NHKの番組から始まった」という人までいるそうです。

 東京「郷土そば・さらしな」創業者であり、そば研究家新島繁の著作「蕎麦史考」(錦正社、昭和50年)にも6つの説が挙げられていました。抜粋して紹介します。

(1)開運説:鎌倉時代に宋から博多に来た貿易商の謝国明が、年越しにも苦労するような貧しい町の人たちに「世直しそば」としてそばがき餅を振る舞ったところ、翌年から食べた人たちに運が向いてきたため、大みそかに「運そば」を食べる習慣ができた

(2)無病息災説:室町時代の関東三長者の一人、増淵民部が大みそかに無病息災を祝い「世の中にめでたいものはそばの種 花咲きみのりみかどおさまる」と歌い、家人とともにそばがきを食べたから

(3)延命長寿説:生地をのばし、細長く切る形状にちなみ、延命長寿や生計が細く長く続くようにと願った

(4)金の縁起説:金銀細工師が金箔をのばすとき、蕎麦粉で台面をぬぐって、その上でのばすと伸びがいいことから、「金をのばす」「金を集める」という縁起を担いだ

(5)蕎麦効能説:「本朝食鑑」(元禄元年)に蕎麦の効能が書かれていることから、新陳代謝により体内を清浄にして新年を迎えたいから

(6)そばの強さにあやかった説:畑に育つそばの草は少々の風雨に当たっても翌日、日が差せばすぐ起き直ることから、捲土重来を期待して食べた

     ◇

 由来はいずれも開運や金運、無病息災などを願ったものばかり。食べる時間は気にせず、新年への期待を胸に、おいしく食べるのが一番といえそうです。

(まいどなニュース・金井 かおる)

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