【ミッション】まちを熱くさせる新スポーツ「モルック」に挑め! 新聞記者がゆるキャラたちとリポート動画を作ってみた
兵庫県川西市が熱い!
というのも、まちは今、ニュー・スポーツ「モルック」の愛好者たちの間で「聖地」になりつつあるのだ。
ゲームの面白さとまちの歴史が奇妙な形でつながり、各地からファンの来訪が増えると、モルッカー向けに割引サービスを導入する店舗も拡大している。
そこで新聞記者たちがモルックとまちの魅力を全国に伝えようと、リポート動画を作ってみた。制作に当たっては、近隣自治体のゆるキャラたちも一堂に集まり、ゆる~い対戦を繰り広げてくれた。
出演した入社1年目の女性記者が報告する。
■老若男女誰でも楽しめる
カツン!と狙い通りに当たると、最高に気持ちがいい。
モルックは手に収まる円筒形の木棒「モルック棒」を投げるだけでできる簡単な対戦型スポーツだ。
案内してくれたのは「川西モルックの会」を立ち上げた中博司さん(33)。私は収録に緊張しすぎて「モルッカーを増やしている『張本人』です」と物騒な紹介をしてしまった。
ルールは簡単。1~12の数字が書かれた「スキットル」にモルック棒を投げ、2本以上をまとめて倒せばその本数が点数になり、1本だけを倒せば、書いてある数字が点数になる。合計が先に50点ちょうどになった方が勝つ。
「子どももお年寄りも、みんなで一緒に楽しめるのが好きです」と中さんがほほ笑む。挑戦してみて納得した。投げるたびに、どんどん上達できるのが楽しい。
■寺が聖地!?
川西市の中心部から車でおよそ10分。古刹の「満願寺」は、モルックの聖地と呼ばれている。境内には金太郎伝説のモデルとされる「坂田金時」の墓があり、そばの案内板に使う木材がスキットルの形にそっくりなのだ。
さらに、近くには「金時の兜(かぶと)石」と書かれた石も。「これに触るとモルックが強くなると言われているんです」と中さんが神妙に言う。
「僕は信じないですけど、触って全国大会に出たら3位になったんです」。そして、一緒にかがんで石をなでると「ほら、これで(記者さんも)強くなりますよ」って中さん、完全に信じているじゃないですか。
若田等慧(とうえ)名誉住職にインタビューをしたら「その辺にあった石を兜に見立てて置いていたんです」と身もふたもない。けれど、モルック人気を受け、敷地内にコートも整備。愛好家たちの熱いスポットになっている。
■謎の覆面レスラーも参戦
愛好家が集まる「石道温泉モルックドーム」で撮影中、居合わせた覆面のプロレスラーに勝負を挑まれた。川西市在住のビリーケン・キッドさんもモルッカーらしい。
立ち止まって慎重に投げる私を茶化しつつ「助走したら?」と助言をくれる。回を追うとスキットルは散らばって遠くなり、まとめて倒すのは段々難しくなる。次に狙われる数字の棒を先に倒すという頭脳戦になるのが面白い。
その時、キッドさんが50点に届く「6」の棒を倒すと宣言した。
-えっ、10メートルくらいあるやん!?
と思った次の瞬間、腰をクネクネさせる妙な助走を見せて場を笑わせつつ、投げたモルック棒は弧を描いて命中。観戦した十数人から大歓声があがった。
「さすが勝負師やな」。悔しがる私にカメラを向ける先輩記者が、にやっと笑った。
■ゆるキャラたちが対戦
私たちがリポート動画の制作に協力を呼び掛けると、近隣市町のゆるキャラたちも集まってくれた。
兵庫県東南部の「阪神間」には7市1町があり、6市町が公式キャラクターを持っている。その全てが集結し、ゆるキャラ以外にも宝塚市の観光大使「サファイア」は応援メッセージを届けてくれた。
ゆるキャラたちの対決は「石道温泉モルックドーム」で実現。阪神間の北部(川西市、猪名川町、三田市)と南部(尼崎市、西宮市、伊丹市)に分かれて3対3で競った。
坂田金時がモデルの「きんたくん」(川西市)はさすがにモルックの「聖地」の出身だけあって腕が光った。
イノシシの「いなぼう」(猪名川)、妖精の「みやたん」(西宮)、キュートな「あまっこ」(尼崎)もいい勝負。モルック棒をちゃんと握れる強みを生かした。
それでも、国鳥キジがモデルの「キッピー」(三田)は羽で器用につかんで高得点を獲得。カモをイメージした「たみまる」(伊丹)は、両翼でなんとか挟んで投げる姿がとにかくかわいかった。
■モル割でまちを元気に
川西市では今、市内の飲食店や美容室、銭湯でモルック棒を持参すると割引サービスを受けられる「モル割」を展開している。
たこ焼き店のおばさんは「モル割ね、は~い」と慣れた感じで、中さんの分に2個を追加する。青空の下で一緒に食べながら、心から思った。
モルックを通じて、人と人の距離がこんなに近くなれる。モルックでもっと、もっとまちが元気になってほしい。(神戸新聞・浮田志保)