脚が曲がってしまった元繁殖犬 保護施設で出会った“友だち”と一緒に、新しい家族のもとで幸せつかむ

 トイプードルのカヌレちゃん(推定7歳)は元繁殖犬。右後ろ脚が曲がっていて地面に着くことができません。「ヒザが外れたまま適切な治療をしてもらえず、そのまま固まってしまったのではないか」というのが獣医師の見立てです。2020年10月に三重で活動する動物保護団体『わんらぶ』に保護され、新しい家族を探していました。

「保護したときはボロボロの状態でした。トリマーさんにシャンプーしてもらうと泡が茶色くなったと言いますし、足裏も毛で覆われていて、ちゃんとお世話してもらえていなかったのは明らかです」(わんらぶスタッフ)

 恐らく、ずっとケージの中に閉じ込められ、外の世界を知らずに育ったのでしょう。わんらぶに来てからは、「いろいろなものに興味津々で、『あれは何?』『これは何?』という声が聞こえてくるようでした」とスタッフは話します。

 わんらぶでは複数の犬との共同生活になりますが、カヌレちゃんはミニチュアダックスのリアンくんと特に仲良しだったとか。リアンくんは推定15歳という高齢で飼い主に飼育放棄され、カヌレちゃんよりも3か月早くわんらぶにやって来ました。2匹の年齢差は約10歳ですが、なぜか相性ピッタリで、庭でのフリータイムはいつも寄り添っていたそう。

「リアンくんと一緒のときはカヌレちゃんの表情がさらに明るくなり、気の合う仲間を見つけた喜びが感じられましたね」(わんらぶスタッフ)

■あえて五体満足ではない子を

 そんな2匹をできれば一緒に家族に迎えてほしいと願っていたスタッフ。理想通りの家族が現れたのはその年の11月でした。愛知県瀬戸市に住む山田さん一家が「2匹一緒に」と手を挙げてくれたのです。

 娘2人に犬を飼いたいとせがまれ、「迎えるなら保護犬を」と考えた母の美早子さんがわんらぶのインスタグラムを見つけたのがきっかけ。「動物に対する考え方や接し方に共感した」とフォローし、半年くらいたった頃、まずリアンくんに目を留めました。実家でミニチュアダックスを飼っていたことがあるからです。その後、カヌレちゃんが加わり意気投合している様子を見て、2匹を迎えることを考え始めました。

「私も働いているのでお留守番のときふたりの方がいいかなと。もちろんカヌレの脚のことは知っていましたが、五体満足な子は迎えられやすいでしょう? だからそうじゃない子をと思ったんです。不安はありませんでしたね。家族とも、私たちにできる範囲のことをしてあげればいいんじゃないかと話し合いました」(美早子さん)

■ずっと一緒にいるみたい

 こうして20年12月、カヌレちゃんとリアンくんはそろって山田家の一員になりました。1年が過ぎたところですが、「まだ1年? ずっと一緒にいるみたい」と家族でよく話すそうです。2匹の仲の良さは変わらずですが、「べったりではなく、別々の部屋にいることもあるし、ごく自然に一緒にいる感じ」と美早子さん。散歩のときはマイペースなリアンくんが立ち止まると、カヌレちゃんも足を止めて気にする素振りを見せると言います。犬種や年齢、生い立ちが違っても、通じ合うものがあるのでしょう。

 ペースがかなり違うため、散歩は2人体制。リードを別々に持ち公園に向かいます。到着すると「脚のことに気づいていないんじゃないかと思うくらい勢いよく走る」(美早子さん)というカヌレちゃん。最初に獣医師から「右後ろ脚を手術するよりも、残った3本を大事にして暮らしたほうがいい」とアドバイスされたこともあり、日々のマッサージは欠かさず。骨や関節に良いとされるサプリメントを飲ませ、脚への負担が増えないよう体重管理に努めています。

 散歩に行くと、いろいろな人からカヌレちゃんの脚のことを聞かれます。美早子さんは「やっぱり見た目が気になるんだな」と感じる半面、「説明するときわんらぶさんのことも話せるので、知ってもらうにはいい機会だなと思っています」と前向き。動物病院で会ったある飼い主さんは、すぐにわんらぶのインスタグラムを見てくれ、「次は保護犬を迎えたい」とコメントしてくれたそうです。

 そして、次女のあすかちゃんは英語教室で「好きなもの、嫌いなもの」を発表する際、“I don’t like pet shop.”--命の売買反対!の意思を表明しました。友だちも「犬を飼うなら保護犬にする」と言ってくれています。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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