「このままサンダーバードに出られそう…」 断崖絶壁をものともせず作業するショベルカーが話題
断崖絶壁のような山の斜面にも関わらず、自立して作業するショベルカーの画像がSNS上で大きな注目を集めている。
この画像は「あけましておめでとうございます 今年も大昌建設をよろしくお願いいたします」と、年始の挨拶をする大昌建設株式会社のTwitter公式アカウント(@aDElmHyTsHDeg1T)の投稿に添付されていたもの。
大昌建設は千葉県茂原市に本社を置く、高所や法面(宅地利用できない斜面)の施工に特化した建設会社。ショベルカーはその大昌建設が開発した「ロッククライミングマシーン」という車体のようだ。
なぜ斜面から滑り落ちてしまわないのか、見れば見るほど不思議なこの画像に、SNSユーザー達からは
「これは凄い!!!アメリカには重機の遊園地があるらしい 日本にもあってこういう姿を観れたらいいのに…」
「すごいですね!!私たち送電線業界もこういう基礎屋さん達のしっかりした基礎によって鉄塔が達安心して搭乗作業ができています」
「このままサンダーバードに出られそうなマシン…!!」
「はじめまして、あけましておめでとうございます!!!!こんな、こんなかっこいい重機が、ああ、ありがとうございます!!!!!こんな崖みたいなとこで!!!!!!かっこよ、んぉ(重機限界オタクにとってご馳走でした)もう既に1年が良いお年になるフラグ立ちまくりました、ありがとうございます!!」
「合 \( ˙꒳˙˙꒳˙)/ 体するの?」
など数々の驚きの声が寄せられている。
大昌建設の担当者にお話を聞いた。
--御社が高所法面施工を手がけられるようになった経緯をお聞かせください。
担当者:山が多く平野が少ない日本では、人間の生活圏を広げるため、山を切り崩して道路を広げたり、インフラ設備を整えたりする必要があります。また、市民の生活を脅かす土砂災害を防止するための工事も欠かせません。大昌建設は1982年の設立当初から、そういった工事に携わってきました。
従来、法面の工事というのは作業員による人力で行われていたのですが、これでは時間も掛かりますし、何より斜面での作業は、危険と隣り合わせの作業です。身体にロープを装着して落下防止をしているものの、何か間違いが起きれば大きな事故が発生する危険性を抱えています。そして、現場では作業員の高齢化が問題となってきました。それらの状況を踏まえ、工事の省力化を進め、安全性を高めるためには法面工事の現場に機械を導入することが必要と考え、開発が始まりました。
それからバックホウのブームを伸ばすことで高所を施工するテレスコブームマシーン(TBM)の開発などを経て、今回ご注目いただいているロッククライミングマシーン(RCM)が誕生しました。
--ロッククライミングマシーンの機能面の特徴をお聞かせください。
担当者:RCMを使用した工法の仕組みを説明します。まず、山の上部にアンカーを設置します。これは立木が一般的です。そのアンカーとRCMをワイヤーロープで接続します。RCMにはウインチ2基を装備していて、ウインチでワイヤーロープを巻き上げ、巻下げながら斜面を走行します。急斜面でも通常のバックホウと同様の作業能力を発揮することが可能となっています。
RCM本体の特徴として、作業時に運転するオペレーターの視界を常に水平に保つことができるよう、リフティング装置という機構を開発して装備しています。また、地盤崩壊の恐れがあるなど危険度の高い現場で安全に作業ができるよう、ラジコン操縦も可能となっています。ラジコン操縦機も当社が独自に開発したものです。
ワイヤーは使用する用途によって必要な安全率が定められています。労働全衛生規則に定められている「つり足場」の安全率が10以上であること、ゴンドラ構造規格のつり下げ用ワイヤーロープ安全率も10以上であることから、RCMも10以上のワイヤーロープを使用しています。
これまでの世界では存在しなかったスタイルの機械ですので、官公庁や企業などから安全性への理解を得るためには、実に大変な苦労があったと聞いております。しかし、現在では日本各地で数多く行われている公共工事の現場で採用されるまでになりました。
--ロッククライミングマシーンは具体的にどういった事業で用いられているのでしょうか?
担当者:まず予防治山工事という工事があります。地震や豪雨によって引き起こされる山崩れなどの災害を未然に防ぐための工事で、崩れそうな山腹をキレイに整えたり、砂防施設を作るための掘削をしたりします。
また。斜面に設けられた施設の更新に伴い、古いコンクリート構造物の取壊し、解体といった作業もあります。
そして災害復旧工事も忘れてはなりません。これまで災害大国の日本は、地震や台風により様々な大災害に見舞われてきました。RCMは東日本大震災からの復興事業など、多くの災害復旧の現場で採用されてきました。
--これまでのSNSの反響へのご感想をお聞かせください。
担当者:元日にツイートしたのですが、明らかに通常の投稿より「いいね」数が良く、リツイートも多かったですね。その時点で大変うれしく思いましたが、驚いたのは2日です。見る見るうちに「いいね」が付いて、気が付けば1万に迫る勢いで大変驚きました。コメントのほとんどが好意的なもので、大変ありがたく感じました。これを機に、高所法面・急斜面で行われる様々な工事に対応できるRCMの認知や理解が広まればと思います。
現在、新しいタイプの機械の開発も継続中です。また、アンカーロックマシーン(ARM)という機械も当社にはあります。
急斜面でロックボルト工事の削孔を行う機械です。ARMには、法面で効率的に作業が進められるよう、更に新たな技術を開発し搭載しています。興味がある役所、企業の方はお問い合わせいただければと思います。今後もRCM、ARMともどもよろしくお願いいたします。
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山がちな環境の日本に欠かせない高所法面施工。人目につくことは少ないが、今回の投稿がきっかけでその意義や施工に従事する人たちの思いが広く伝わることを願いたい。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)