側溝で鳴いていた子猫、フェリーで連れ帰り家族に 子供たちに毎日お世話され幸せな日々
■助けを求めていた子猫
アポロちゃん(生後6ヶ月・オス)は、2021年8月6日、鹿児島県に住む中村さん一家が種子島に旅行に行ったときに保護した。アポロちゃんは、種子島宇宙センターを眺める展望台付近の側溝にいて、か細い声を振り絞るように鳴いていた。兄弟や母猫は見当たらず、1匹だけでいた。
アポロちゃんは、身体は汚れていたが外傷もなく、それほど威嚇もしなかった。中村さんは、連れてこられて捨てられたのかもしれないと思ったそうだ。小学生の次男は、「この子はアポロだよ!」と、拾ったその場で名前を付けた。
■運命の出会い
中村さんは、アポロちゃんを車に積んでいたクーラーボックスに入れて、フェリーに乗って数時間かけて自宅に連れて帰った。
「やせて弱っていたので、暑い盛りに無事に連れて帰れるか心配でした。移動中に死んでしまうかもしれないとも思いましたが、置き去りにしようとは思いませんでした」
アポロちゃんを見つけた時、すぐに「この子を連れて帰るんだ」と、家族みんな考えるより先に行動していたという。
「数ヶ月前に猫の譲渡会に行ったこともありました、子供も猫を飼いたいと言っていたのです。急にその時がきた感じで、まさに運命的な出会いでした」
帰宅後すぐに動物病院で診てもらうと、7月上旬に生まれたようだった。中村さんは、「小さな外猫は、鳥などの外敵に襲われることもある」と聞いてゾッとした。
「弱ってはいたけど、襲われたり飢えたりしないうちに見つけられて本当に良かったと思いました」
■みんなに愛され家族の中心に
アポロちゃんは、船の汽笛の音を怖がる。中村さん宅は海に近く、日常的にフェリーや貨物船の汽笛が聴こえる。ボーという低い重厚音が響いてくると、アポロちゃんは瞬時に反応して急いで部屋の隅に逃げて隠れてしまう。
「種子島から連れてくる時に乗ったフェリーの音を思い出しているのでしょう。数時間乗船していたのですが、アポロは心細くてとても不安だったので、その時のことを思い出して汽笛の音を怖がるのだと思います」
家族としては、音を聴こえないようにすることはできないので、いつもそっとしているという。
「そのトラウマを感じなくなるぐらい、これからももっと愛情を注いで一緒に過ごしていきたいです」
次男は朝のテレビの星座占いを必ず見るが、アポロちゃんの星座(獅子座)もチェックして運勢を教えてくれる。
家ではみんなアポロちゃんに触りたくて、ちょっとした取り合い状態。
「子どもは普段のお手伝いはいまいちですが、アポロのお世話は進んでやっています。動物を愛し慈しむ気持ちは確実に育まれています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)