オレンジ色の瞳の猫に夢で会ったら→ソックリな子猫を飼うことに 今ではすっかり「猫ファースト」な日々
兵庫県川西市在住のTさんは幼少期より動物が大好きで将来の夢は「動物園の飼育員」だった。しかし、夢は叶うことなく大人になり、全く別の仕事をしながら一人暮らしをしていた。
実家では昔から猫を飼っており、いつかまた動物と暮らせることを夢見ていた。数年が経ち、そろそろ動物が飼える住まいを持ちたいと考え、実際に「ペット可」の物件探しをしていた。
そんな折、駅前で募金や啓蒙活動をしている動物保護団体と出合った。Tさんは以前からボランティア活動には興味があったものの、何もできない自分を情けなく思ったり、辛くなる気がしてなかなか勇気が持てず、行動を起こすことが出来なかったそうだ。
友人から保護施設が車で行ける場所だと聞き、勇気を振り絞って早速2人で訪問してみることにした。動物愛護団体の保護施設では数百頭にも及ぶ犬、猫が保護されていた。職員が保護活動の大変さや、動物たちが置かれている現状を説明してくれた。そして、里親になるには様々な条件があり、その難しさを知った。
帰り道ではとても切なく、心が痛くなり「やるせない感情」と「何もできない自分への不甲斐なさ」に苛立ちさえ覚えたそうだ。しかし、大好きな動物と暮らす夢を失うことはなく、動物を飼育できる住まいを手に入れた。「さて、これからそろそろ探し始めようか」というタイミングで「野良の子猫を保護した!」と職場から連絡が入った。
■夢で見たオレンジ色の瞳の黒猫に、そっくりな子猫と出会った
Tさんは日ごろから猫を飼いたいと話しており、すぐに連絡をくれたのだ。メールで送られてきた子猫の写真を見てTさんは驚いた。白黒のハチワレ柄ととともにオレンジ色の瞳をした黒猫が3匹写っていたからだ。
実はTさん、今の住まいに引っ越す半年ほど前に、道端で1匹の黒猫が怪獣のようなダミ声で鳴いている夢をみた。近づいて見るとオレンジ色の瞳をした黒猫で「黒にオレンジの目だから君は『雲丹(ウニ)君』だね」と夢の中でつぶやいたそうだ。
だから、そのとき「正夢ってあるんだ」と、強い縁を感じ、のちにメールで送られてきた中の黒猫1匹を飼う事になる。名前は夢で見た「ウニ」と命名した。
ウニは引っ込み思案な子猫で、Tさん宅にやって来てしばらくは、不安で鳴き続けていた。しかし、お世話をするうちに心を開き、甘えん坊で子猫らしい姿を見せてくれるようになった。
成長したウニは朝が苦手で、小心者。おまけに神経質だった。さらに、最大の特徴は、なんといっても「怪獣鳴き」だ。かかりつけの動物病院では「怪獣鳴きの猫」としてちょっとした有名になった。しかも、ウニは病院嫌いで爪切りも大嫌い。爪を切ろうとすると、怪獣の様な大きな声で「ギィヤァァー!」と鳴き叫ぶのだ。
3人がかりで羽交締めにして、やっと切らせてくれるといった始末。「これ以上嫌がるようであれば麻酔をしなければ…」と、先生からのお手上げ宣言に「なんとか自宅で爪切りをしなくては」と方法を考えた。
Tさんは朝が苦手なウニが寝ぼけている間に、ウニを洗濯ネットに入れて素早く爪切りをしている。気づくと、大音量の怪獣鳴きが部屋に響きわたるので、窓という窓を締め切っているが、いつかペット虐待で通報されないかとヒヤヒヤものだ、そう。
しかし、爪を切った後は、お決まりのおやつで機嫌が直り、ゴロゴロと喉を鳴らし、おかわりを要求する現金な猫だ。もっともウニを飼い始めてTさんの生活は、すっかり「猫ファースト」になった。ウニが早朝に起きてご飯を要求するので、早寝早起きの生活になった。玄関までの送り迎えが日課で、出掛ける際は玄関まで付いてきて「ビャ~(行ってらっしゃい)」と一声。帰宅すると玄関で「ンビャ~(おかえり~)」とお出迎えしてくれる。
■保護猫を家族に迎えて思うこと「救える命があることを知ってほしい」
Tさんは保護猫を家族に迎え、昔の自分を振り返った時に感じたことを、多くの人に知ってもらいたいという。
「ペットショップやホームセンターではたくさん可愛らしい猫ちゃんがいます。血統書付きの猫さん。とても素敵ですよね。でも保護施設や譲渡会でもたくさんの可愛らしい猫ちゃんがいます。野良の猫ちゃんを飼うことって、たくさんの不安があると思う。病気や怪我で障害が残っていたり、治療が必要なことも。あまり人馴れしていないかもしれません。
でも、血統書付きだからって、病気しない?怪我しない?最初から人馴れしている?どの猫ちゃんもひとつの命ですよね。保護猫の制度を知ってもらって、里親さんを待っている猫ちゃんに会いに来てほしいです。昔の私みたいに臆病にならず。小さな命の大切さ、少しの思いから救える命がある事、出会いを大切にして欲しいです」
いま、Tさんは夢見た猫との生活を送ることができ、たくさんの幸せを感じている。そして「少しでも多くの猫に幸せが訪れて欲しい」と、考えるようになった。
ウニとの暮らしから行動する勇気をもらい、現在はある団体の保護猫活動にボランティアとして参加している。
(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)