「安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展」に行ってきた 原画の「生きた」線に目と心と語彙力を奪われる

漫画家、アニメーション作家として多くの作品を発表してきた安彦良和氏の漫画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」は、アニメ「機動戦士ガンダム」をベースに設定やエピソードを追加して完成させた作品だ。漫画雑誌「ガンダムエース」(KADOKAWA)にて2001年から2011年まで連載された。その「THE ORIGIN」の原画展「ところざわサクラタウン開業1周年記念 安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展」がEJアニメミュージアム(埼玉県所沢市)で開催中だ。2022年3月21日まで。

カラー原画など、総展示数は500点以上。「ガンダムエース」の表紙や、アムロ・レイやシャア・アズナブルといった中心キャラなど、貴重な原画の数々をストーリー順に鑑賞することができる。さらに安彦氏の仕事場も再現されており、ガンダムファンは大いに楽しめる内容になっている。

筆者自身も学生時代に安彦氏の絵のタッチ、そして原作とは一味違うエピソードの数々に興奮してきた一人だ。今回は見どころ盛りだくさんの展示の中でも、個人的に必見と思われるポイントを2点紹介したい。

■その1:「ザクとは違うのだよザクとは!」カッコ良すぎる「グフ」と「ランバ・ラル」

安彦氏といえば、「機動戦士ガンダム」や「無敵超人ザンボット3」などのアニメ作品だけでなく、「アリオン」や「虹色のトロツキー」といった漫画作品でも多くのファンを魅了している。そんな安彦氏の「THE ORIGIN」で惹かれたのは、人物やモビルスーツ(MS)などの線。今にも漫画から飛び出してきそうな生きた線の数々だ。

展示では、貴重な原画を通して線の1本1本を肉眼で確認できる。特に「すごい」と感じたのは「グフ」。言わずと知れたジオン公国のMSだ。機械独特の光沢感と生き物のような表面の質感を目の前にして、ようやく絞り出した言葉は「カッコいい」だった。もし自分が戦場でグフに遭遇した時には「こいつ1人のために全滅かよっ」と言いたくなるような圧倒的強敵感が、この1枚に凝縮されていた。

■MSの操縦席まで…

さらに注目したいのは、ジオン公国のパイロット、シャア・アズナブルが愛機「シャア専用ザク」をバックに飛び出している瞬間を描いた1枚。「シャアザク」のビジュアルのカッコ良さは言わずもがな、中央に見えるコクピットの絵をご覧いただきたい。コクピットの線1本に至るまで質感が宿っているように見える。パイロットの命を守るためのコクピットを間近で見る機会なんてそうそうなく、こちらも釘付け。「シートの質感とかどうなんだろうか」と思いを巡らせるのも面白かった。

ストーリー順に原画を見ていくことで、「ガンダム」と向き合う時間が次第に濃くなっていくのが分かる。そこで次のポイントはコチラ。

■その2:「黒い三連星は…」安彦氏のコメント

「始動編/激闘編」から最終「ひかる宇宙/めぐりあい宇宙編」まで、それぞれに安彦氏のコメントが挿入されている。章ごとの入り口に設けられたコメントはもちろん、いくつかの原画にもコメントがあって、これが面白い。

「ランバ・ラルをどう描いたのか」「“黒い三連星”に当時、何を思っていたのか」。また「シャリア・ブルは…」や「ギレンとキシリアの関係」など、登場キャラクターにも言及。さらにはアニメにはなかったシャアの「過去編」を描いた理由など、漫画を読むだけでは計り知れない安彦氏の本作に対する想いが溢れている。コメントに触れることで、原画の見方が変わるかもしれない。

一人のファンとして、原画を見るたび「スゲェ」「カッコ良い」と語彙力が乏しくなってしまうほどの原画のカッコ良さ。これはガンダムファンだけでなく、絵を描くことを仕事にする人なら必見の内容だ。そして「機動戦士ガンダム」について放送当時、そして現在、安彦氏がどう思っているかを感じ取れるコメントも読むことができた。

展示期間中は安彦氏が登壇するOVA上映イベントや、展覧会オリジナルグッズの販売、そして近隣施設とタイアップしたオリジナル飲食メニューも楽しめる。詳細は展覧会公式サイトで。

(神戸元町映画館広報・宮本 裕也)

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