「日本の企業はプレゼン下手」 幼少期の壮絶な過去が糧になった“達人”の英語上達、交渉力アップ術
■プレゼン力で企業や個人の海外進出を後押し
海外へ事業拡大を目指す企業を支援する「Herat Meets World」を運営するのがグローバルビジネスコーディネーターやプレゼンコーチとして注目されている安井フローレンス愛歌さん。電子書籍「AIに英語は任せられない!?『1日5分』勉強すれば、英語3ケ月で話せるようになる!」の著者でもある。そんな語学の達人に、英語上達や交渉力を身につけた経緯を聞いてみた。
■数奇な生い立ちを乗り越えて、海外で就職や起業も経験
安井フローレンス愛歌さんが英語に出合うまでの生い立ちがスゴすぎる。2歳で実母から引き離され、実父に家に閉じ込められた。子ども嫌いで愛歌さんに憎しみを抱く継母に育てられ、虐待を受け続けた。
「友だちが遊びに来ても、電話がかかって来ても門前払い。そんな家庭環境でした。学校でもいじめを受けましたが、虐待がきつかったので、いじめられても学校に行っていた方がマシ」というような子ども時代を過ごしていた。
「言いたいことがいえない、自分が何か言葉を発した時にも大人は聞いてくれないという環境だった」ともいう。
そんな愛歌さんは15歳からスイスの高校に留学する。そこで新たな人生が動き出す。「その頃、開校したばかりの公文のスイス校(スイス公文学園高等部)の存在を知った父が入学を決めた。継母は私を中卒で働かせるつもりだったが、理由は分かっていなくても父は私と継母の仲が普通でないことは気づいていたらしい。『試験に受かれば、行かせる』と父。もし拒否していれば日本に残っていたでしょう」
その後、20年間は海外生活。高校在学中にTOEFLで630点(最高677点)という成績で、アメリカの大学へ進学することになった。大学時代には仏語、独語を勉強し、フランスに「アメリカ人」として交換留学。FBIからスカウトされたこともあるが、地元企業からは「4カ国語話せるから何なの?」と冷たくあしらわれたこともあり、大学院に行くことを決めたという。
そこでも優秀賞で学士号を取得後、大学院にて最優秀賞で教育工学修士を取得し、企業向けプレゼンテーションのコツも学ぶ。2008年には国連職員への登竜門ともいわれる国連英検特A級に挑戦。結果、上位3名に与えられる外務大臣賞まで受賞。米国永住権を取り、海外で就職もし、起業した経験も持つ。
帰国後は日常会話からビジネス交渉まであらゆることに精通していることで、通訳や翻訳業の他、海外市場への事業拡大を希望する企業を支援するグローバルビジネスコーディネーターやプレゼンコーチなどとして活躍。2019年まで世界最大規模のビジネス・リファーラル組織「BNI」のディレクターやマーケティング研修企業の役員などを務めていた。
■海外進出する企業支援のサポートを開始
「その後、翻訳や通訳の道から方向転換して、英語を活かしたコンサルタントの道に進みたいと考え出したのが2019年秋頃。年が明けるとコロナの影響も出始め、次の道に進んでいくにしても動きにくく、それで、本を書こうと思い立ちました」
それが、電子書籍「AIに英語は任せられない!?『1日5分』勉強すれば、英語は3ケ月で話せるようになる!」だった。
「海外に赴任される方にはぜひ、読んでほしいと思います。英語に完璧は必要ないし、語彙が足りなくても英語は話せます。勉強すればするほど英語が上達する訳ではありません。やり方が大切です」と愛歌さん。
その著書は「常識」と思われていた思い込みを取り除き、新たな方法で英語の学習、習得方法を伝授しており、それが多くの人に読まれている理由かもしれない。また愛歌さんは、その交渉力を生かし、コロナ禍でも海外に進出したい企業のサポートができないかと考えた。
「実際に海外進出する企業の通訳でプレゼンに参加した時、思ったのは日本の企業はプレゼン下手なところが少なくないということです。必要のないことまでプレゼンしたり、海外では先に結論をいうのに対して、日本のプレゼンはそれが最後だったりします。私はアメリカで学問としてプレゼンテーションを学びましたが、日本では学べる所もほとんどない。だから私はプレゼン資料の作り方からお教えできるので、プレゼンコーチとしてもアドバイスしています」
■幼少期の経験が「サポートしたい」という「思い」の下地に
実際に、海外に行く時、言葉がわからないことは多々ある。文化の壁があるのも確かだ。
「それでつまずいて、なんで、こんなことを言われなければいけないのだろう?なんで、こんな対応を受けるんだろう、という人が少なくないと思います。そういう人をサポートしたいと思うのは、大人は聞いてくれないという私の子ども時代の思いがあるんでしょうね」
ビジネスのグローバル化が叫ばれて久しい。大企業だけでなく、中小企業の海外進出も目を見張るものがある。コロナ禍で、今は膠着していても、再び活発に動き出す日はそう遠くないと思われる。語学や文化の壁だけでなく、商談から交渉、契約書など海外進出にはややこしいことがたくさんある。
ここは語学の達人、愛歌さんの出番のようだ。
(まいどなニュース特約・八木 純子)