犬や猫の殺処分を減らすため「写真で守れる命がある」 活動する女性写真家が強く訴えることとは
フォトグラファー・たきちみさとさん(THISPHOTO主幹)は2021年8月、自身初となる写真展『ぼくらは幸せになるために生まれてきた』を開催しました。主役は犬と猫。「家族の愛情をたっぷり受けて暮らしている子」と「保護施設に収容されている子」--両極端な環境で生きる両者の表情の違いを組写真によって表現した写真展は反響を呼びました。「そこにあるのは“命”。どちらも感情のある生き物なんです」(たきちさん)
趣味でカメラを始めたのは数年前。「飼っている猫の写真をキレイに残したい」というありふれた動機でした。その後、映像制作会社に入り基礎から学ぶ中でペットの撮影をするようになり、「動物にかかわる仕事をするなら知っておいたほうがいい」と、ある動物愛護センターを訪れたことをきっかけに「殺処分を減らすために何ができるか」を考えるようになりました。
「センターで話を聞かせていただいて、なぜ殺処分がなくならないかといえば『人が捨てるから』だと。私に保護活動は難しいけれど、写真で伝えることはできると思いました。写真を見た方が、家にいる子をもっと愛おしいと思ってくれたら、これから迎える子を一生大事にしようと思ってくれたら、捨てられる命が減り、殺処分も減ると信じています」(たきちさん)
写真展開催の1つめの目的は、この「伝えること」。展示写真にキャプションを付けなかったのは、一人ひとりに「感じて」もらうためです。
「写真の解説を読むとそれに引きずられてしまう。見る人が、見たまま、感じたままに答えを出してくれるのが一番ですから。ただ写真展の最後にあいさつとして、『誰にでもできることがひとつあります。今いる家族と最期の日まで一緒に過ごすことです』というメッセージを書かせてもらいました」(たきちさん)
これは本来、誰にでもできる……いえ、すべきことです。たきちさんの写真を見て、何かを感じた人は、きっとこのメッセージを忘れないでしょう。
■殺処分を減らすための写真展
写真展の目的はもう1つあります。それはすでに施設にいる保護犬・保護猫を「支援すること」。収益から制作費を差し引いた全額が保護施設に寄付されました。こうした「殺処分を減らすための写真展」を毎年、開催したいと考えているたきちさん。今年の夏は東京開催を目指しています。テーマは『老犬猫と、ひと』。昨年の写真展でメーンモデルを務めてくれた柴犬のたけしくん(当時13歳)をきっかけにシニアの魅力にハマったそうです。
「たけしくんはとても穏やかで、長年、大切に育てられたことが伝わってきました。家族の絆も感じさせてくれました。それこそが一番の幸せだと思いますし、それが当たり前の世の中であってほしい。でも保護施設には歳を取ってから捨てられた子もたくさんいます。シニアの魅力と現状を知ってほしくて、今回はこのテーマにしました」(たきちさん)
1月15日からは東京開催に向けクラウドファンディングを始めました。ギャラリーのレンタル費用として設定した第1目標・80万円はわずか1週間でクリア。現在は制作費を含め150万円をネクストゴールとして継続しています。達成されればグッズ販売などによる収益はすべて寄付に回すことが可能に。たきちさんの活動に共感し、応援したいという方は、クラウドファンディング『CAMPFIRE』のサイトから「写真展」「殺処分」でキーワード検索してください。
■全国の譲渡対象犬猫を閲覧できるサイトづくり
『ぼくらは幸せになるために生まれてきた』は写真展の名称であり、たきちさんが取り組んでいる殺処分を減らすための活動そのものの名称でもあります。そして、その活動には写真展開催のほかにもう1つ大きな柱が。
「保護施設と連携して、犬や猫を迎えたいと思った方が譲渡対象の子を検索できるWEBサイトを制作中です。今はまだ滋賀県の情報しか発信できていませんが、これを全国に広めたい。そして写真は活動に賛同してくださる各地のカメラマンに撮ってもらい、譲渡率が上がるような素敵な写真を掲載していきたいと思っています。活動を支援してくださる企業さん、一緒に活動してくれるカメラマンさん大募集中です!」(たきちさん)
ここでも“写真”がキーワード。それがたきちさんの武器だからです。『THISPHOTO』の公式サイトにはこう書かれています。
『写真で守れる命がある』
(まいどなニュース特約・岡部 充代)