コロナ後増えた「黒マスクはお洒落派」…でも、顔に自信がある人は「白マスクがおすすめ」 マスクの効果・最新研究

していない人が目立つほど、着用が当たり前になったマスク。新型コロナウイルスの流行前(2018年)とコロナ禍の2020年夏を比べると、黒マスクへの否定的な印象が減っていることが、心理学の研究者グループの実験で分かりました。女性はピンクのマスクを着用すると、魅力が増すことも判明。長引くコロナ禍はマスク越しの人の印象にどんな影響を及ぼしているのでしょうか。マスク研究者に聞きました。

北海道大学大学院文学研究院の北海道大学の河原純一郎教授、院生の鎌谷美希さん、福山大学の宮崎由樹准教授らの研究グループが、コロナ流行前後の変化を明らかにしました。

■流行前と比べると…

黒マスクの着用者について、2020年夏、北大の学生98人に、男性の顔の魅力・健康さ・ファッション性・イメージの良さの4つの観点から、(1)黒マスクを着用することで非常に低下する~(7)非常に高まるーの7段階で回答してもらい、2018年の同様調査と比べました。

結果は、ファッション性については、流行前の比較して「おしゃれだ」という回答が増え、「野暮ったい」という回答が減少しました。総じて、黒色マスクをしている人に対して、イメージの良さ以外の3つの観点において、肯定的または中立的な考えの人が増えたことが分かりました。

■白マスクVS黒マスク

白マスクと黒マスクではどちらがより魅力的に映るのでしょうか。この実験では、 魅力が「高い」「中程度」「低い」の3グループに事前に分類した計66枚の男性の顔写真について、白マスクと黒マスクの加工を半分(33枚)ずつ施し、被験者になった北大生44人が魅力を1~100で評定しました。その結果を同じ画像を用いた2016年の実験と比較しました。

魅力が低いに分類された顔画像については、マスクの色にかかわらず、流行前よりも魅力評定値が上昇する傾向がうかがえました。また、魅力が高い顔については、黒マスクよりも白マスクの方が魅力評定値が高いという結果が出ました。

二つの実験をざっくりまとめると、マスク顔を見ずに想像する限りでは、黒マスクの好感度は増したものの、白または黒マスクをつけた実際の顔を見ると、相変わらず白マスクのほうが魅力が高く評価されるという主張です。「魅力が高い」と自信をお持ちの方は白を、そうでない人は…どっちでもいいですよ、と解釈したらいいのでしょうか。河原教授に聞きました。

ー黒を避ける心の動きについて

「結婚式は白、葬式は黒です。絵画でも神様、仏様は白で、悪魔は黒というようにわれわれの文化の中でも白黒とポジティブ概念、ネガティブ概念の対応は一貫しています。そういう意味で黒は忌避されがちなのでしょう」

ー実験でも確認されているのですか

「これまでいくつかの研究で、黒はネガティブな概念、白はポジティブな概念と結びついているという知見が得られています。例えば、灰色の背景に単語を1つ、白または黒のフォントで表示して、ポジティブかネガティブかを判断する課題を課した実験があります。結果は、単語の性質とフォントの色が一致している方がすばやく判断できることがわかりました。単語の性質と色の組み合わせで判断スピードが決まるので、単に一方の色が見やすいわけではありません」

ーコロナの流行当初、「マスクを着用すると隠れた顔の下半分を無意識のうちに理想のラインを想像するため、皆がイケメン、美人に見える」説を聞いたことがあるのですが

「われわれの研究結果では、誰であっても見た目の魅力が上がるわけではなく、顔の下半分を隠したとき、もともとの魅力が高い人は見た目の魅力が下がり、もともとの魅力が低い人は上がって見えることが分かっています。後者のケースがソーシャルメディアで強調されているのだと思います」

ー白、黒以外の色のマスクではどんな効果が

「コロナ流行前の2015年に「マスクの色が顔の魅力に及ぼす効果を検証」と題した論文を発表しています。マスク着用の有無、マスクの色の違いによる女性の顔の魅力診断を行い、マスクが顔の魅力知覚に及ぼす影響を検証しました。もともとの魅力に関係なくピンク色のマスクが女性の見た目の魅力を上げることがわかりました。現在男性モデルでも検証中です。間もなく結果を公表できると思います」

ー赤で魅力をアップする色なんですね

「もともと赤は魅力評価にとっては有利に働くという知見があります。男女それぞれ理由が異なるという主張もあります」

ーマスクをしていることが不健康と思われなくなり、対人認知の形に変化は予想されるのでしょうか。

「コロナ流行前後でマスク顔の認知の様相は変わりました。感染症の沈静化に伴って、また昔の状態に戻ってゆくかもしれません。もしマスクをし続けることが人類にとって非常にメリットがあったのだとしたら、100年前のスペイン風邪のときのマスクの風習は残っていたはずです。対人場面でマスクがあると、授業をする立場からすると非常に困難を感じます。相手の表情が分からず,こちらも意図を伝えにくいと感じています。このような状況をわたくしは続けたいとは思いません。一方、感染症とは関係なく、匿名化を維持したいと思う人はマスクをし続けることを好むかもしれません」

ーマスクへの対応は国による違いがありますか

「欧米とひとまとめにしにくいと思います。米大統領選があった2020年、共和党支持と民主党支持ではマスクに対する態度が大きく異なりました。実際にわたしたちの研究グループは国外の研究者とともに北米でマスクと見た目の魅力の調査を実施したところ、日本国内とは異なる結果で、マスクの解釈は政治的な志向と関係がありました」

顔の幅よりも大きいマスクをつけると、対比で顔が小さく見えるという“小顔効果”も確認されるなど、さまざまなマスク研究に取り組む河原教授らの研究グループ。なお河原さんはしゃべりっぱなしの授業中は息継ぎのしやすさを考え、「超快適マスク 息ムレクリアタイプ」(ユニ・チャーム)を愛用し、普段はガーゼマスクを使っているそうです。

(まいどなニュース・竹内 章)

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