「私たちと一緒にいて良かった?」東京での幸せな日々は長く続かず…新婚夫婦に笑顔と涙をもたらした猫

「私たちと一緒にいて良かった?」

東京都のIさん夫婦は、今も心の中で亡き愛猫のラテくんに問います。この問いをする度に、思い出すのは出会ったあの場所です。妻のTさんが独身時代に出会いました。

ラテくんが暮らしていたのは、福島県のとある駅。この駅は、Tさんの職場の最寄り駅でした。高架駅のせいかラテくんが改札までやってくることはありませんでしたが、改札付近から駅前を見渡すと必ず見えるところにいたそうです。

ある時はコンビニの前、またある時は公園の切り株の上と、その日によってラテくんのくつろぐ場所は違います。それでもTさんが駅の窓から駅前を眺めると、ラテくんの姿が目に飛び込んできたんですよ。そこへTさんはいそいそと向かい、出勤前はいつもラテくんと戯れました。ラテくんもまた、Tさんが声をかけると嬉しそうにゴロンゴロン。

ラテくんはとても毛艶が良く、誰にでも愛想の良い猫。だから、Tさんは最初、ラテくんは飼い猫だと思っていました。お散歩コースが駅前なのかな?だったら、お散歩の時だけでも仲良くさせてもらおうと、ラテくんと過ごす時間を大切にします。

そんな日々がいつまでも続くかと思っていた2019年の秋、ラテくんが忽然と姿を消してしまったのです。Tさんがいくら探しても見つかりません。

「飼い主さんの引っ越しについていったのかも…」

Tさんが諦めかけたころ、駅の掲示板に保健所のポスターが掲示されます。「迷い猫を預かっています」というこのポスター、よくよく見るとラテくんです。Tさんの胸は高まりました。飼い主がいないのなら、自分が引き取っても問題がないかもしれない。

けれど、Tさんには懸念材料がありました。それは翌年春に控えた結婚です。入籍後は彼が働く東京への引っ越しも決まっています。なにより、婚約者が猫に対して良いイメージを抱いていないのは知っていたのです。

それでもTさんは婚約者にお願いしました。ラテくんの画像や動画を送り、この子と暮らしたいと。普段は控え目な性格のTさんが、必死になって頼みます。婚約者はそんなTさんの姿と、画像や動画のラテくんがTさんと楽しそうに過ごす様子を見て心を動かされました。

「連れてきても大丈夫だよ」

婚約者からOKをもらったTさんは、すぐさま保健所に電話をします。保健所から保護主さんへ連絡も行き、飼い主が見つからなかった場合はTさんへ譲渡という流れに。その後、飼い主が名乗り出なかったため、正式にラテくんはTさんの子となりました。

春になり、さあ引越しです。新幹線で2時間ほどしか離れていない場所でも、ラテくんにとっては異世界。広いマンションで、一人で過ごすのはとても怖かったみたい。Tさんの姿が見えないと、引っ越しの荷物が入った段ボール箱の隙間に入ってビクビク。それを上から見るとまるでコッペパンのようで可愛かったとTさんは言います。Tさんが思わず笑うと、ラテくんはホッとした表情をしてTさんを見上げたんだとか。

心配された旦那さんとの相性もバッチリ!一緒に暮らし始めた途端、旦那さんはラテくんにメロメロです。ラテくんが怪我をしないように、引っ越しの片付けを率先して行いました。ラテくんも愛されているのが分かりますから、Tさんだけでなく旦那さんのお膝にも乗ってゴロゴロ。大好きな腰ポンポンは旦那さんの方が良かったみたい。力強さがポイントのよう。

2人と1匹のこの幸せな日々は、長く続きませんでした。夏頃からラテくんは食欲が減退、玩具の誤飲かと思い検査をするのですが、異常は見つかりません。10月に入ると、今まで以上に体調が悪化。再び検査入院をするのですが、その入院が永遠の別れとなります。動物病院から連絡を受け、夫婦が駆けつけると、診察台の上で横たわったラテくんの姿がありました。その後、どうやって家に帰ったのか覚えていません。

突然の別れに夫婦は三日三晩涙を流し続けます。そして自分自身を責めました。福島から連れてきたのが悪かったのか、ご飯が合わなかったのか。いくら考えてもラテくんは帰ってきませんでした。

「私たちと一緒にいて良かった?」

何度も心の中で問います。そして旅立ちから1年半経った今、この問いの後の言葉が出てくるようになりました。

「私たちはあなたといられて幸せだった」

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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