会社の倉庫にいた子猫を保護 何年も触らせてくれなかったが、16歳でやっと甘えてくれるように

■生まれたての子猫

ミルちゃんは(18歳・メス)は、2003年9月10日に誕生した。大阪府に住む井上さんは、当時勤めていた会社の倉庫から子猫のミャーミャーという鳴き声が聞こえてきたので同僚と探してみると、そこにミルちゃんがいた。兄弟と一緒に3匹の猫が折り重なるようになっていた。まだへその緒がついていて、片手のひらに乗る大きさ。母猫は子猫たちを産み落としてどこかに行ってしまったようで、姿は見当たらなかった。

まだ就業時間中だったので、井上さんたちは一旦その場を離れ、上司に「子猫がいます」と報告だけしたそうだ。

「気にしながら仕事を終え、もう一度同僚と子猫を見に行くと、2匹は死んでいて、ミルしか動かなかったんです。どうしてあの時、動物病院に連れていかなかったのか悔やまれました」

■まさかの信頼関係崩壊

ミルちゃんを保護して、同僚と話し合い、同僚が連れて帰ることになった。ただ、喘息を患っている先住猫がいたため多頭飼いをすることはできなかった。そこで、ミルちゃんが自分でごはんを食べられるようになったら、井上さんが引き取ることになったという。

「子どもの頃、猫を2匹飼っていたので猫が大好きなんです。でも、保護したのはミルが初めて。がんばって生き延びたのだから、兄弟の分まで幸せになってほしいと思いました。兄弟のことを知っている私がそばにいてあげないと、とも思いました」

2003年11月17日、井上さんはミルちゃんを迎えに行った。 大人しくて、「ミャ!ミャ!」と鳴いて、とても可愛かったという。仕事で外に出ている間はケージで寝かせて、帰宅したらずっとそばにいた。

しかし、その後事件は起こった。1週間ほど経った頃、どうしても家を空ける用事ができてしまい、ミルちゃんを2ヶ月間育ててくれた人に4日間預かってもらうことになった。

「4日後迎えにいったら、態度が急変!!シャー!シャー!と威嚇して、抱っこなんてとんでもない。触ることすらできなくなっていたんです」

井上さんは、せっかく信頼関係ができかけていたのに、信用をなくしてしまったのだろうか。猫ってそんなに敏感なの?信頼関係を取り戻すにはどうしたらいいんだろうと悩んだ。しかし、解決策は見つからなかった。

■優しいボス猫になる

その後何年も触ることすらできず、ただ、ごはんをくれる人、トイレをきれいにしてくれる人という関係になってしまった。2匹目のカルちゃんが来た時も態度が変わることなく、そのまま何年もの月日が流れていった。必要に迫られて病院に連れて行く時は、キャリーバッグに入れるのも一苦労。

「傷だらけになって、本当に大変でした。3匹目のMeiを迎えた時から、少しずつ変化して、知らず知らずのうちに3匹のボス的存在になっていました」

ミルちゃんは、ごはんもお水もブラッシングも、他の子が終わるまで並んで待っている。器にご飯がなくなると、「ごは~ん!」と話せるようになり、膝の上に乗るのが大好きになった。

「16歳にしてやっと少しずつ甘えることを覚えてくれました。話しかけると必ず返事をしたり、おしゃべりをしたりしてくれて、会話が成り立つようになりました」

ミルちゃんは1年ほど前からたびたび痙攣を起こすようになり、毎日薬を飲んでいる。足腰も弱ってきているが、みんなと仲良く過ごしている。井上さんは、「この幸せがずっと続きますように」と願っているという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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