沖縄の高校生失明事件 「警察は本当のことを話して」警官と“接触”した被害者の母と叔父、小川泰平氏が直撃

 1月28日未明に沖縄県警沖縄署(沖縄市)の周辺に若者数百人が集まり、投石などで署の正面玄関のガラスが割るといった騒動が起きた。同27日未明に17歳の男子高校生が運転するバイクと警察官が接触する事故があり、「高校生が警察に警棒で殴られて失明した」という情報がSNSで拡散したことが発端とみられている。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は2月に現地で取材し、少年の母親と叔父へのインタビューを通して、当サイトに親族の思いを報告した。

 県警によると、騒動は27日午後11時ごろから28日午前4時ごろにかけ、300人から400人もの若者が沖縄署前に詰めかけ、投石などで正面玄関や警察車両のガラスなどを割った。発端となった「高校生が警棒で殴られて失明」という情報について、沖縄署は当初、「路上で暴走行為を取り締まっていた警察官がバイクを運転中の少年に職務質問をしようと制止を呼びかけた際に接触した」と発表したが、少年の親族は「警察発表の単独事故ではなく、暴行によるもの」と反論。「警察官にいきなり棒で殴られた」という少年は右眼球破裂の重傷で入院している。

 警察側と少年側の食い違いについて、小川氏は少年の叔父を取材した。少年にとって母の弟に当たり、近所に住んでいて日常的に接しており、少年も叔父の小学生の子どもの世話をするなど家族ぐるみの付き合いだという。

 叔父は1月27日の朝7時前に姉(少年の母)から『息子が警察官に警棒で殴られて失明するかも』という連絡をLINEで伝えられた。小川氏が「少年は当初、自損事故として119番通報していた。なぜ、警察官に棒のようなもので殴られたと言わなかったのか」と問うと、叔父は少年の証言を元に「警察に殴られたと通報しても、救急隊員に信じてもらえなかったり、まさか警察官がそんなことを?と思われるだろうから、まずは救急にいち早く来て欲しかったので、事実の説明をせずに自損事故でケガしたので来てくださいと通報した形です」と代弁した。

 小川氏は「通報した場所は、ケガした場所からは数百メートルも離れている。目に重傷を負ってそこまで運転していけるものか」とも問うた。叔父は「その場所では、ピザの配達のアルバイトをやっていますので(地理に詳しい)。急に殴られたので、このまま止まってしまうと余計に殴られるという恐怖心が一番だった。血が流れて目が見えない状態だったので、本人はパニックになっていた。それで(逃げた)…ということです」と説明。さらに、叔父は「一番最初に友だちが到着し、救急車の後にパトカー1台で警察官2人が来た。(警官に殴られたという説明は)しています」付け加えた。

 その上で、叔父は「警察側は一番最初に『たたいた事実はない。事故だ』としていたが、『たたかれた』と報道が出ることで、意見の食い違いが出てきて、警察の意見が『警棒を持っていて、そこに当たったのかもしれない。どこに当たったかは分からない』という話に徐々に変わってきた。おいが言ってることは(当初、救急隊員に対応してもらう目的で自損事故と言ったことは別にして)変わっていない。警察の言うことが変わってきているということは、最初に本当のことを隠していると思いますので、一番最初に『当たってしまった』ということを警察側が本人が伝えていれば、こういうことはなかったのかなと思います」と指摘した。

 小川氏が「警察から謝罪はあったか」と問うと、叔父は「ないです。本人には、右目が見えなくなったことも伝えてない。母親がネットや友人からの情報で知るので、スマホは持たせてない。私の長女は大人たちの様子を見て(事態を)感じていたようなので(少年の失明を)伝えると、泣いていました。警察には事実解明をして欲しい。あったことをしっかりと包み隠さず、本当のことを話して欲しいです」と訴えた。

 小川氏は少年の母親とも面会した。「入院中の息子に目の状態について話したのか」と小川氏が聞くと、母親は「ある程度は理解していたみたいで、私を悲しませたくないからか、『こっち(左目)があるから、まぁいいか』という感じでした。私の方が先に泣いたので、『俺、大丈夫だよ。大丈夫よ』って」と涙ながらに語った。

 小川氏から警察側に伝えたいことを聞かれると、母親は「警察の話も二転三転している。当人同士、暗いところで起きたことなので、警察の方にボディカメラなどあったら、その時に早くハッキリしていたのではないかなと思います。まだ(警察の説明が)どんどん変わっているので、早く本当のことを伝えて欲しいですね」と語った。

 小川氏は「母1人子1人の環境で、お母さんによると少年が深夜に補導されたことなどは『ないですね』と言われていました。2月2日の夕方に病院の先生が少年に失明の事実を伝えた後、私の取材に叔父さんと共に来てくれた」と今回の取材の経緯を説明した。

 今後の事件の流れについて、同氏は「当初の沖縄署から、現在は沖縄県警本部の捜査一課が捜査をしており、一課の次席は『警察官の話をうのみにしていない。かばうつもりはない』と発言しました。『かばうつもりはない』ということは『厳正に対処しますよ、警察官だから隠したりしませんよ』ということの証だと思います。『うのみにしていない』ということも、『警察官の事情説明を全部信用しているわけではないですよ』ということで、徐々に解明していくと思います」と今後の動きに注目した。

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