ホバリングからの急降下ダイブ! 垂直離着陸機・オスプレイの由来にもなった「ミサゴ」の豪快な狩り
兵庫県尼崎市と西宮市の市境を流れる武庫川。その河口付近から香櫨園浜の辺り一帯は、渡り鳥も留鳥も含めて野鳥が多く見られるエリアです。特に秋から春先にかけて、野鳥を撮影する人達に人気なのがミサゴです。
■武庫川周辺は鳥類のパラダイスです
ミサゴは鷹などと同じ猛禽類で、主に魚を捕って食べることで知られています。環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されていますが、武庫川の河口辺りはそんなミサゴが魚を捕る狩り場になっていて、わりと普通に見ることができます。
そもそもこの辺りはミサゴに限らず、野鳥が多く見られるところです。秋から冬、春先にかけての時期でしたら、カワウ、ユリカモメ、カモなどがたくさん居ますし、トンビやサギ、カラスには年中会うことができます。
見ていると動きにそれぞれ特徴がありますね。たとえば離陸(離水)のときなど、カモメは静止状態からほぼ一回か二回ほど羽ばたくだけで飛び立ちます。恐るべきSTOL(Short Take Off and Landing=短距離離着陸)性能です。対してカモは、バタバタと羽根を動かしながら水面を足で走って、かなりの距離を助走してからようやく飛び立ちます。水面に浮かぶカモの群れに船などが近づいてきて、一斉にバタバタと助走する姿はなかなか「大慌て」というか「大騒動」というか、なんとなくユーモラスです。
飛び方もいろいろです。高い空を、ほぼ羽根を動かさないで輪を描きながら悠々と飛ぶトンビ。反対に水面すれすれを高回転で羽ばたきながら矢のように飛んでいくカワウ。またこのカワウは時折ものすごい数の群れになって空を覆うように飛んできたりもするのですが、その様はなかなか圧巻です。
なんとなく楽しそうに追いかけあいをしているのはカラスです。ものすごい勢いでもつれ合うように飛んでいたりするのですが、喧嘩しているような感じではないんですよね。恋のシーズンなのかも知れません。
■ミサゴ=オスプレイ、その狩りの様子
そんな中、ミサゴの飛び方はなかなか特徴的です。羽根をバタバタさせながらゆっくりした速さで川の上を飛び回って、ふとホバリングしたかと思うと真っ逆さまに急降下、水面間近でタッチアンドゴーしたり、そのまま川に飛び込んで盛大に水しぶきを上げたりするんですね。
ミサゴは英名でオスプレイというんだそうですが、そういえばあの垂直離着陸機の飛び方とちょっと似ているような気もします。いや、ミサゴが似ているのではなくて逆なんですが。
そして水面に突入した後、しばらくバタバタと格闘してから、魚を掴んで飛び立つのです。狩りが成功した場合は、です。たとえば魚が掴めなかったり、掴んだものの大きすぎて持ち上がらなかったり(結構よくあるみたいです。水面でバタバタして、結局諦めるところを何度か見ました)で失敗したときは、(たぶん)気持ちを切り替えて、また空から次の獲物を探し始めます。
狩りの成功率はその日によってかなり差があるみたいです。条件はおそらく獲物になる魚が水面近くにたくさん居るかどうか、なんでしょう。小魚が大きな魚などから逃げて、水面近くを泳ぐときにできる波紋を「なぶら」といいますが、これが多く見られる日は成功率が高いように感じます。少なくとも二回飛び込めば一回は魚を掴んでるな、というくらいですね。反対に不漁の日はかわいそうなくらい捕まえられてません。ぼうずのまま引き上げていく姿には哀愁を感じます。
筆者は仕事で川の見える場所で過ごすことがよくあって、合間になんとなく見ているうちにこういった鳥の行動をおぼえました。それでせっかくなのでカメラを持ち込んで、休憩時間にちょくちょく撮影をするようになったのです。これが結構楽しいんですよ。
大阪からも神戸からも行きやすい、比較的近場でできる自然観察です。機会があればぜひ、お出かけください。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)