カタログの住人はセレブな便器?「人間よりいい家住んでる」と話題 実はTOTOのアツい思いがぎっしり
「60万円するTOTOの便器の宣材写真、都会のお洒落なワンルームで便器が暮らしてるみたいで良いな~」
この文章とともに添えられていたのが、ムーディな部屋を切り取った写真。ダークウッドで統一されたシック空間には、本棚、椅子、飛行機の模型、そしてひっそりとしながらもライトを浴び圧倒的な存在感を放つ…、便器。
ぐちょん(@guchon)さんが投稿し、1.7万いいねがついたこのツイート。実はこの写真は、トイレの便器など住宅設備機器の製造販売を行う「TOTO」(本社・福岡県北九州市)が販売するトイレ「ネオレストNX」(以下、NX)の商品カタログの一部です。
ツイートには「この便器オレより良い暮らししてやがる」「便器の方が自分よりいい家住んでる」「夜景を眺めながら物思いにふける便器?」など、さまざまな意見があがっています。あまりに現実離れしたトイレカタログの謎を解き明かすべく、TOTOの広報さんに話を聞きました。
ーー記者が住んでいるワンルームと同じくらいの広さなのでは、と少し切なくなりました。このカタログはどういった意図で作られたんでしょうか?
「まず前提からご理解いただきたく、回答が長くなりますがご容赦ください」
ーー?? は、はい。
「NXというトイレ自体が、TOTO創立100周年の2017年8月より発売されたモデルで、温水洗浄便座の本体部分を便器の陶器に内蔵した『真の一体形』として、360度どこからみても美しいデザインに拘っています」
ーーなるほど
「海外ではトイレ・洗面・シャワー(+浴槽)が集まったバスルームが一般的で、空間全体でのデザインの調和が求められます。つまり、海外市場も見据えてデザインにもとことんこだわったトイレを作ったというワケです。実際に世界でも販売しています」
「日本でバスルームは一般的でないため、NXと手洗いだけがあるトイレ空間を前提にしていますが、カタログではNXで圧倒的に美しい空間が実現できることを印象づけるため、従来の日本のトイレの枠にとらわれない美しい開放的なトイレ空間を、カタログ制作に協力いただいたデザイナー等と一緒につくりあげました」
ーーアツい思いがひしひしと伝わってきました。「圧倒的に美しい空間」を実現した結果、あの豪華さになったんですね。
「Twitterで話題にしていただいたトイレ空間(Plan 03)は、『作家の住まい』のトイレとして、『トイレを第二の書斎に』をコンセプトに設計されています。実際の書斎は仕事部屋にある前提で、トイレは気分転換のための第二の書斎として、好きな本を読んだり音楽を聴いたりする場所に、という想定となっています」
「また、NXが『360度、どこから見ても美しい』ことを印象付けるため、開口部に向かって斜めにトイレを配置し、トイレの背面が見えるようにしました」
ーー「作家の住まい」だったんですね!? そして、あの哀愁漂う背中はそういう理由だったとは。ちなみに、NXはおいくらですか?
60万4千円です(希望小売価格)。同シリーズのフラグシップ(最上級)モデルとなります。
ーー(座ることすら一生叶わなさそうだな…)結構お値段がしますが、あのカタログはどの層をターゲットにしているんですか?
「広い視野を持ち、ご自身の拘りと価値観を持たれた方々に、TOTOのフィロソフィーや品質の高さなどに興味を持っていただき、共感いただくため、このようなカタログの仕立てとなりました」
ーーカタログの公開後、反響はありましたか?
「おかげ様でカタログをご覧になったお客様より、『カタログのようなトイレ空間を参考にしたい』といった反響をいただいています」
ーー実のところ、カタログ効果で売れているんでしょうか
「カタログで使用している設備の組み合わせを巻末に示しており、これらを購入される方はいらっしゃいます。カタログで示した『トイレ空間そのもの』は、TOTOの商品ではありませんので、注文いただくことはできません」
ーー余談ですが、「バズるの予想してたのでは」という声が上がっていましたが、いかがですか
「本カタログのすべてのページは、NXの商品価値伝達に最適と考えて作られています。話題にしていただけることはありがい限りですが、そういった狙いはありませんね」
ーーありがとうございました!
◇ ◇
あの現実離れしたトイレは、TOTOが世界を見据えて作った自信作を最大限にアピールするための空間だったことがわかりました。ちなみにカタログは全国約100か所のTOTOのショールームに設置、WEBカタログはTOTOの公式サイトから見ることができます。
一部ショールームではNXが設置されているそうなので、気になる方はその美しさを体感してみてください。
(まいどなニュース・門倉 早希)