子猫が後ろ脚を引きずりながらすり寄って来た 「連れて帰っていいか?」夫は猫アレルギーの妻に連絡を入れた

■小雨降る中すり寄ってきた子猫

からしちゃん(6歳・オス)は2015年9月1日、ある居酒屋の駐車場にいた。夜の7時半くらいだった。生後4ヶ月くらい、目は目ヤニでまぶたが固まって開いておらず、後ろ脚を引きずっていた。静岡県に住む長澤さんはその居酒屋に勤めていたのだが、駐車場に行くとからしちゃんが足にすり寄って来たという。

弱っている上に、その日は小雨が降っていたので雨に濡れそぼっていて、そのまま置き去りにするには気が引きた。しかし、夫妻は当時柴犬を3匹飼っていて、さらに妻は猫アレルギーだった。保護するかどうするか迷ったという。長澤さんは「連れて帰っていいか?」と妻に連絡した。「夫も私も猫が好きなので、雨が降り続く中子猫を放置できず、保護することにしました」

■柴犬一家の一員に

自宅の柴犬は、20歳の小太郎くん、7歳のうららちゃんと鯉太郎くん。小太郎くんは寝たきりで介護が必要な状態だった。からしちゃんは小さくてとても可愛い子猫だったが、猫アレルギーのこともあり、最初は里親を探そうかと思ったという。しかし、数日一緒に暮らしただけで愛着がわき、手放せなくなった。名前は、居酒屋が唐辛子料理を提供する店だったので、「からし」にした。

なぜかからしちゃんは、小太郎くんにいつも寄り添い、一日のほとんどを小太郎くんと過ごすようになった。小太郎くんは認知症を患っていたからなのか、からしちゃんと一緒のサークルにいることを嫌がらなかった。「小太郎も、もともとは山中に放置されていた保護犬だったので、思うところがあったのかもしれません。からしを保護してから4か月後に小太郎が虹の橋を渡ったのですが、ずっと寄り添っていてくれたからしには感謝の言葉しかありません」。やがてからしちゃんは、最初は嫌がっていた小太郎の娘のうららちゃんとも親子のように仲良くなった。

■出会ったのも何かの縁

6歳になったからしちゃん。多少うららちゃんに甘やかされて育ったせいか王様気質なところがある。

「うららが愛情たっぷりに接しているので穏やかでよくおしゃべりをします。おそらく自分は犬と思っているのではないのでしょうか(笑)」。保護した時は足元にすり寄ってきたが、今はかなりの人見知り。家族以外の人には近寄らないという。何度か会ったことがある人でも顔見ると隠れてしまう。保護当時はガリガリだったが、今では体重6キロの大きな猫。家で一番偉そうにしているそうだ。

妻の猫アレルギーは治ることなく、気管支喘息から肺炎を起こす寸前まで行き、病院で強めのアレルギー薬を処方してもらい、空気清浄機を購入したという。薬は毎日欠かさず飲んでいる。しかし、からしちゃんを手放そうとは思わない。「猫に触ることは一生ないだろうと思っていたので、今、家族として一緒に暮らしているのはとても不思議なことです。何かの縁で多くの人が行き来する駐車場で夫の足をつかんだのだと思っています」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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