3匹の子猫の命を助けたいが身重の体、世話を始めたら→母性爆発 「我が家に来てくれてありがとう」
■生後間もない子猫たち
テトくん(生後10ヶ月・オス)は、野良猫が産み落とした子猫だった。
昨年3月31日、千葉県に住む中川さんの夫は、会社の倉庫の扉を開けた。すると、1匹の猫が外に出て行くのが見えたが、その時は「猫が入っていたんだ」と思っただけだった。しかしその後、倉庫内の整理をしていたら、箱の中にまだへその緒がついている小さな3匹の子猫がいたという。
夫から話を聞いた中川さんは、二つ返事で受け入れられる状態ではなかった。妊娠8ヶ月だったのに加え体調が優れない。過去に生後2週間くらいの子猫にミルクを与えて育てたことはあったが、「24時間2時間おきにミルクを与えることが今の自分にできるのか…」と迷っていた。
母猫が授乳のため戻ってくる可能性もあったが、仕事が終わったら倉庫を閉めなければならず、いったん閉めると次に開ける予定がなかった。母猫に会えなければ子猫たちの命が危ない。発見から5時間待ってみたが、母猫は戻ってこなかった。
「このままでは子猫たちは体温が下がって死んでしまうと思い、保護する決意をしました」
■母性が爆発!
夫妻は、子猫たちをすぐに動物病院に連れて行った。生後2、3日で、体重は黒白が92グラム、キジ白は99g、テトくんは88gしかなかった。ニーニー鳴く元気もなく、ピクリとも動かない。後に獣医師は、「あの時は正直ダメかもしれないと思った」と振り返った。
その後、中川さんは毎日2時間ごとに目覚ましをかけて子猫たちの世話を始めた。「不安もあったけど、小さな命を前に絶対に助けると必死でした。すると不思議なことに体調がどんどんよくなって行ったんです!妊娠していたからなのか、母性が爆発しました(笑)飲むのが下手だったミルクも1日1日上手に飲めるようになって、ニーニーという鳴き声を初めて聞けた時は嬉しくて涙が出ました」
■この子たちに助けられている
授乳中の子猫を育てるのは大変だったが、3匹で重なり合って寝ている姿を見るだけで癒された。
「もうかわいくて、かわいくて、毎日ニヤニヤしていました(笑)でも、テトと黒白ちゃんは調子を崩すことが多くて、何度も病院に駆け込んで点滴を打ってもらいました。頑張れ!頑張れ!と毎日声をかけていました」。朝晩体重を測ると、少しずつ増えていっているのが確認できた。
「体調不良や出産の不安もあったのですが、子猫たちが家に来たことで心から明るい感情だけが出るようになり、私の方がこの子たちに助けられているんだってことに気付きました」
先住猫の小夏ちゃんは、小さな3匹の子猫を見た時に、「なんだこれはーー!!」と、警戒レベル100になった。しかし、「小さいから大切にしなきゃ」ということは分かってくれたようで、全く攻撃することはなく、中川さんが思っていたより早く受け入れてくれた。今では、テトちゃんがちょっかいを出すたびに、「しょうがないなあ…」という感じで付き合ってくれている。
2匹の先住犬は「父性爆発でした。今もくっついて寝ています」と何回か子猫の預かりボランティアをしていたせいで、子猫が大好き。お世話も大好きで、子猫たちが小さくて段差に乗れない時に、鼻でクイッと押して乗せてあげたり、毛繕いしてあげたりした。
■みんなを飼うことはできない
中川さんは子猫たちの里親を探していたが、いつからか「これはもう手放せない」と思った。しかし、犬2匹と猫2匹を飼っていたので、新たに3匹飼うことはできなかった。せめて1匹だけでも引き取ろうと、一番身体が弱かったテトくんを迎えることにしたという。
「残る2匹を離れ離れにしたくないと悩んでいたところ、私の実兄が2匹揃って迎えてくれることになったんです!何回も会いに来ていたし、家も近いからいつでも会えるし、なにより2匹一緒に迎えてくれたのでホッとしました」
5月23日、2匹はお兄さんの家に行った。今でもずっと寄り添っていて、仲良しなんだという。
■我が家に来てくれてありがとう
中川さんは、「風の谷のナウシカ」のキツネリスのテトが好きだったので、「テト」くんと名付けた。
「娘と2ヶ月違いの同じ歳、『これは運命だなぁ。一緒に成長していけるなんて素敵だなぁ』と思いました。妊娠中、お腹の上にいつもテトが乗っていたからか、出産後も大の仲良しです」
テトくんは、赤ちゃんがミルクを飲んでいる時やお昼寝をしている時、ぴったり横に寄り添っている。中川さんの膝の上に赤ちゃんが座っている時も、無理矢理膝の上に乗って一緒に座っているそうだ。
「最近は、娘とテトが並んで窓から初めて雪を見ていました。娘も横にいるテトをなでなでしていて、見ているだけで癒されて、心から保護してよかったなあと思いました」。今後は娘さんとテトくんがどんなお友達になっていくのか楽しみで仕方がないと言う。テトくんには、「我が家に来てくれてありがとう」と、毎日伝えている。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)