消防隊を呼んで、排水溝の下から子猫をレスキュー! 奔走した保護猫活動家は、かつて「超」がつくほど猫嫌いだった
排水溝の下からかすかに漏れる猫の声を聞き逃さず、消防署に通報。救助してもらったのは、メスの子猫だった-。里親探しにも心を砕き、熱心に保護猫活動に取り組むのは、とある「お好み焼き屋」の女将さん。しかし、以前は「超」がつくほどの猫嫌いだったそう。イヌ派の女将さんを変えたのは、11年前に現れた野良猫との出会いだったという。
■諦めて撤収しかけたときに起こった偶然の出会い
保護猫団体に属さず、個人で保護活動をやっている上浦仁美さんのもとに「避妊手術を受けさせたい猫がいるから捕獲してほしい」という相談が入ったのは、2021年10月のこと。
保健所に連れていかれたら殺処分になってしまうため、避妊手術を施して地域猫として有志で世話をするためだという。
「捕獲機を仕掛けたんですけど、ターゲットの子は入ってくれなくて、結果的に失敗でした」
諦めて撤収しようとしていたとき、遠くから猫の声が聞こえてきた。よく聞いてみると、かぼそい声の主は、どうやら排水溝にいるようだ。
「排水溝の中って、大きなパイプじゃないですか。声が右から聞こえたり左から聞こえたりして、居場所がなかなか特定できなかったんですよ」
現場のすぐ近くにある会社からも人が出てきて、一緒に探してくれたという。しかし排水溝の中へは、一般人が勝手に入れない。警察へ連絡してみると「消防が対応してくれるかも」と聞いて、上浦さんは消防へ通報した。
こうして消防隊も駆けつけて、捜しまわった末に保護されたのは、生後1~2カ月と思われるメスの茶トラ猫だった。
「一緒に探してくれた会社で体を洗ってもらい、その夜は知り合いの保護団体の人に預かってもらいました」
まだ小さかったが、翌日には避妊手術を受けた。この子の引き取り先を決めないといけないけれど、上浦さんの家にはすでに13匹の猫がいて、これ以上は飼えない。
「声をかけたのが、前に保護団体で一緒に活動していたことがある井川恵美子さんです」
そのとき、井川さん宅にはすでに猫が2匹と犬が1匹いた。
「猫ちゃんたちの仲間が増えると思って、引き受けました」(井川さん)
こうして井川さん宅に引き取られた子は「ベル」と名付けられ、先住猫たちと一緒に仲良く暮らしている。
■猫好きに転じたきっかけは「焼き鳥」
消防に通報してレスキューまで頼むほど熱心な保護猫活動を行う上浦さんは、そうとう猫好きな人なのだろうと思いきや、以前はそうではなかったという。
「超イヌ派で、猫は大嫌いでした。猫が好きな人まで嫌いでしたよ(笑)」
そのような人がなぜ今、猫派になったのだろうか。今は大阪府八尾市でお好み焼き屋「こてつ」を経営している上浦さん。焼鳥屋をやっていた11年前のこと、店の前に現れた野良猫との出会いがある。
「女性のお客さんから『塩もタレもつけずに焼いて、あの猫に食べさせてあげて。お金は私が払うから』といわれたんです」
店に居つかれたら嫌だなと思いつつ、お客さんからのオーダーなのでトリ肉をあげた。
「その猫が人懐っこい子で、よく見たらかわいいんですよ。猫って、こんなにかわいいねんなと思ったんです」
それがきっかけで猫好きになったという。それ以来エサをあげていたが、外で暮らしていると事故に遭う危険があるため、1年ほど経った頃に自宅へ連れて帰った。その猫の名が「こてつ」で、今の店名の由来でもある。
それからは保護猫の団体に入って活動したこともあったが、今はどこにも属さず個人で活動している。
「ひとりで動ける範囲には限界があるので、相談を受けたときだけ友人に手伝ってもらって対応しています」
保護した猫には里親を探して譲渡しているが、上浦さんから見て飼い方が適切ではないと判断したら、取り返してくることもあるそうだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)