愛猫が特発性膀胱炎で血尿→採尿が意外に大変→簡単グッズを開発したよ 飼い主さん「すべての愛猫さんが健康に」
茨城県日立市で工業製品の設計士をしている堀江祐子さん(51)が、猫用の簡単採尿器「nyanpling(ニャンプリング)」を考案し、今春から一般販売を始める。泌尿器系の病気が多い猫の健康管理のためには、動物病院で定期的な尿検査をすることが肝要だが、「自宅で採尿する場合、『なかなかうまくいかない』と悩む飼い主は少なくない」と堀江さん。飼い猫の病気をきっかけに、簡単に採尿できる製品の開発を思い立った。
「nyanpling」は、猫がおしっこをする体勢に入ったら、お尻の下にそっと差し込むだけ。容器は環境にも猫にも優しい素材が用いられ、猫の体型に合わせてサイズ調整ができる。「不純物や雑菌の混入が少ないきれいなおしっこが簡単に採取できる」(堀江さん)といい、愛猫家の間で注目を集めそうだ。
堀江さんは自宅で「ロイ」(オス、4歳)と「ジェイ」(オス、3歳)を飼っている。事の発端は3年前、ロイが1歳のころ、頻尿、血尿になったことに始まる。
「ロイが何度もトイレに行き、猫砂が少し赤く染まっていたので、急いで動物病院へ連れて行くと、特発性膀胱炎と診断されました。同時に、ストルバイト結晶(比較的若い猫に多い尿路結石症)ができやすい体質だということもわかったんです」(堀江さん)
膀胱炎は治ったが、ストルバイト結晶は、療法食に切り替えてもなかなか消えず、定期的な尿検査と通院が必要になった。獣医師からは「自宅でロイくんの採尿をして持参するように」との指示があった。
飼い主が自宅で猫の尿を採る方法としては、システムトイレを使う、棒の先端に尿を吸収するスポンジが付いた市販グッズを用いる、などが一般的だ。システムトイレは、上段のスノコの上に猫砂やチップを敷き、下段がトレイの二段構造になっており、上段で猫が尿をすると下段にたまるしくみ。
堀江さん宅では普段からシステムトイレを使っていた。しかし、採尿のたびに毎回トイレを洗浄、乾燥させるのは手間がかかる。目を離した隙にもう1匹のジェイがロイ用のトイレを先に使ってしまうこともあった。愛する猫のためとはいえ、忙しい日々の中で、採尿にかかる負担は大きく、もっと簡単に採尿したいと考えるようになった。
あるとき、ロイがおしっこをするのを偶然近くで見ていたところ、嫌がるかと思いきや、動じずに始めたので、ふと、直接採尿しても大丈夫なのではと思い、厚紙をお皿型にし、ビニール袋をかぶせた簡易な採尿器を試作して、ロイがおしっこの体勢をとった瞬間、お尻の下にそれを差し込んでみた。すると意外にも簡単に採尿することができた。
ただ、差し込む位置がずれてビニールから漏れてしまったり、ガサガサ音を立てたため警戒されてうまくいかなかったりと失敗も多々あった。そこで、確実かつ簡単に採尿するためにはどんなデザイン、大きさの容器がいいか、試行錯誤を重ねた。素材はプラスチックに代わり、環境に優しいエコ素材として注目されているパルプモールドに決めた。パルプモールドとは植物繊維(古紙など)を水で溶かし、金型で加熱乾燥させた紙の成形品。尿色がよく分かるように、古紙ではなく真っ白なパルプ100%を原料に成型した。
小ロット対応してくれるメーカーを20社以上問い合わせて探し、コロナ禍のため担当者と直接やりとりできないもどかしさなどもあり、「何度もくじけそうになった」(同)というが、製品はついに完成。昨年(2021年)10月、新商品を応援するサイト「Makuake」でテスト販売を実施したところ、10万円の目標に対し、65万6400円の応援購入があり、反響は大きかった。
「こだわりは『すべてが簡単である』ということ。お客さまからは『猫の採尿には苦労していたので、こんなのがほしかった』、『意外とすんなりできてびっくり』といった感想が多かったです。私もそうだったように、愛猫の採尿に苦労されている飼い主さんって、実はたくさんいるんだということに気付かされました」(同)
猫の三大疾患は腎臓病、糖尿病、尿路結石といわれるが、定期的な尿検査をすることが早期発見や予防に繋がる。同製品には、おしっこの状態を簡易的にチェックできるpH試験紙が付属しており、堀江さんは「採取した尿の色や量とともに写真を撮って、おしっこ記録を作る」ことを提案している。
コロナ禍で量産体勢の構築が遅れていたが、今春から一般販売を開始する予定だ。猫用だが小型犬も使用可能だそう。「飼い主さんが自宅で簡単に採尿でき、記録を継続してつけられれば、猫が発するいつもと違うサインにもすぐに気付けますし、病気の予防に繋がります。愛猫がずっと元気で過ごせるよう、『動物病院での定期的な尿検査が当たり前になること』を目標に、健康管理のお役に立てたらと思っています」と話した。
(まいどなニュース特約・西松 宏)