馬を守るために「白馬の馬車をあなたの元へ」 コロナ禍で死活問題に直面したイベント会社が企画

 コロナ禍が続き、イベント業界は壊滅的な打撃を受けている。特に、生きものが主役の団体にとっては死活問題だ。結婚式をメインに優雅な白馬の馬車を派遣し、サプライズなシーンを演出してきた株式会社「キャリッジプロジェクト」(福岡市)も”共倒れ”を避けようと、3月10日から出張サービスを全国展開する。「馬の命を救いたい」。馬車業界の第一人者、貞松和彦さん(54)に熱い思いを聞いた。

 タイムリミット寸前だ。長引くコロナ禍で理不尽なまでの我慢を強いられているイベント業界。ブライダルを中心に白馬の馬車と颯爽とした御者をサプライズ登場させ、幸せを届けてきた「キャリッジプロジェクト」も例外ではない。この2年間。あの手この手を使って、何とかやりくりしてきたが、それももう限界に達しようとしている。貞松さんも思わず嘆く。

 「結婚式がメインなので、その機会を失い、正直へこんでいます。もともと売り上げは土、日でしたが、本数が減った。生きものを相手にしているので、えさ代はかかるし、仕事がなくなれば、飼えなくなってしまう。そうならないため、必死でもがいています」

 しゃれにならないほど、馬車馬のように働けないのが実情。しかし、馬の命をつなぐためにも手をこまねいているわけにはいかなかった。そこで貞松さんは、この3月10日からオファーがあれば全国に馬車を出張させるサービスを開始することにした。

 「国からの融資を受けて、つないでつないで来ましたが、こちらから動かないといけないと思った。平日が空いているので、依頼があれば、希望の場所に馬と馬車を派遣することにしました。場所は海辺だったり、草原だったり。サプライズで自宅にまで迎えに行って、一緒に写真を撮ったり、BBQやイベントに花を添えたりできれば」

 もちろん、移動する際には馬に馬車、それらを乗せる馬運車にスタッフも加わる。ちなみに馬車はポーランド製で1台400万円だとか。維持費が大変なのは容易に想像がつく。

 当然のことながらコロナ以前は順風満帆だった。もともと障害馬術の選手だった貞松さんは、馬と一緒に仕事がしたいと願い続けていたそうで2014年、全国に先駆け馬車派遣業「キャリッジプロジェクト」を設立。珍しさも手伝い、人気を博し有名な結婚式場「福岡ノートルダムマリノア」と契約を結ぶ。その後は大阪、神戸にも進出。思い出に残る人生の一大イベントに貢献してきたが、コロナのまん延により、関西チームは撤収せざるを得なくなった。

 現在、福岡市早良区の繫養先には馬車用の大型馬2頭の他に、乗馬用へ向けてリトレーニング中のサラブレッド2頭。さらに犬5匹となぜか”親方”と呼ばれる子豚がいる。

 主役の馬車馬はともに純白の牝でシュガーベルはペルシュロン種の10歳。りんごちゃんはブルトン種の6歳。ともに1トンを超え、見上げるような大きさだ。

 馬は基本的にビビりな動物だが、貞松さんが愛情を込めて調教していることで街中でも動じることはない。「素直で大人しい。従順で優しい性格。教えたら、それに応えてくれる」。貞松さんも首をなでなでしながら信頼を寄せた。

 「いまがギリギリ。まだ先は見えない。でも、コロナが収束したら一気に仕事が入ってくるはず。延期していた結婚式が多いので、手が回らないのではと期待しているんですよ」

 それまでは何とか”人馬一体”となって乗り切るつもりだ。

◇株式会社キャリッジプロジェクト

福岡市早良区大字釜石 313-3

電話 092(834)8828

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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