「京都ってそんなところまで京都なの?!」 市職員が収賄事件で受け取ったのは…? 収賄物まで京都らしかった
先日、京都市の幹部職員が保育園の運営法人の理事長から監査の便宜を図るように依頼され、金品を受け取っていたことが発覚した。
今、SNS上ではこの事件で幹部職員が受け取っていた金品の内容が大きな注目を集めている。
きっかけになったのはむむ(@mu_mu_)ことライターの杉村啓さんによる
「京都市の幹部職員が収賄の罪で起訴されている事件。高級腕時計を受け取ったのは、まあよくある話かと思ったけど『……それと、小判1枚を受け取っていたことがわかりました(再逮捕)』とニュースでやっていて、京都ってそんなところまで京都なの?!」
という投稿。
金品なら他にいくらでもあったろうになぜ小判…なにかと古式にのっとり伝統を重んじる京都らしい収賄物に、SNSユーザー達からは
「リアル山吹色のお菓子…!」
「一枚なところが小物感www」
「きっと高級腕時計の箱の底に小判がギッシリ入っていて…
お主も悪よのう…ククク
職員様こそ…フフフ
というやりとりがあったはず!」
「これが京都しぐさ…」
など数々のツッコミの声が上がっている。
杉村さんにお話を聞いた。
ーーこのニュースをお知りになった際のご感想をあらためてお聞かせください。
杉村:私は8年ほど前に関東から引っ越してきて、現在京都に住んでおります。このニュースは18時半頃から放送されるNHK京都のニュースで知りました。このニュースを見たときに頭にあったのが、NHKで放送されている朝の連続ドラマ「カムカムエヴリバディ」です。
ちょうど太秦の映画村にフォーカスが当たっていることもあってすっかり時代劇な気分だったため、小判と聞いて「そんなところまで京都なの?!」と思ってしまいました。歴史あふれる街だけどいくらなんでも『令和』の時代に小判なんて…と。京都市民としては怒らなければならないんでしょうけれども、小判がツボに入って怒るよりも先に大笑いしてこの投稿をしたという感じです。
ーー杉村さんはこれまで京都人についてどのようなイメージを持たれていたでしょうか。
杉村:私はライターとして醤油について著述することが多く、京都に引っ越して来た理由も淡口醤油の文化圏に住みたかったから、京都の歴史遺産に身近にふれたかったからです。京都の方には、歴史と伝統を大切にするということが根底にありながらも、新しいことに挑戦するのが好きというイメージを持っていました。
実際に住んでみると、京都の方にとって歴史と伝統があるのは当たり前で、それを敬うことは生活の一部、自分の一部にされているような感じかなと思います。誰に聞いても寺社仏閣の参拝の仕方を知っていたりしますし、地蔵盆など地域のお祭りに参加したりしています。
また祇園祭では、山鉾を建てるために期間中は道路を閉鎖してしまいます。幹線道路中の幹線道路である四条通ですら車線を封鎖してしまうというのは驚きました。よっぽど祭りが地域と生活に密着していないとこの規模ではできないでしょう。
仕事の関連で飲食店の方、醤油やお酒関連の方とお話させてもらう機会も多いのですが、昔から京都にいらっしゃる方は当たり前のように地元の寺社と関係が密接で、うちはどこそこの氏子をやっているとか、どこそこの信徒でしてみたいな話はよく聞きます。趣味で集めている御朱印帳を見せたことで、お店の方や年配の方とスムーズにお話できたのは一度や二度ではありません。そういった土地柄でありながら、さらに新しいものを熱心に取り入れていく姿勢がすごいと感じています。
ーーたしかに京都の方は古いものを斬新、新鮮に演出することに長けていますね。文化の消費者であるだけでなく、観光地として文化を積極利用しようという姿勢があるのかもしれません。
杉村:「和食」のイメージがある京都ですが、牛肉、パンの消費量が全国1位だったりします。さらにソースを日本ではかなり早くから使っていたりと、食の分野だけでも次々と新しいことに取り組んでいます。
私が引っ越してきた直後の2014年頃、まだインバウンドが増えるでしたが、都そば(立ち食い蕎麦店)で食べていたときに外国人の方が入ってきたら、店員のおばさまが流ちょうな英語で対応されていて驚きました。後で聞いてみると、これからは外国人観光客も増えるだろうからと商店街ぐるみで英会話を勉強しているとのことでした。そういう姿勢が街の活気を生み出しているのだと思います。
ーー今回のSNSの反響についてご感想をお聞かせください。
杉村:通知を切っていたので気づいていなかったのですが、まさかここまでとは思いませんでした。やはり、京都という歴史を感じさせる街で、お上(市職員幹部)に小判という江戸時代や時代劇を想起させる事件が関心を引いたのだと思います。
後からいただいたリプライ等にも目を通したのですが、「時代劇」「映画村」「越後屋」「悪代官」「山吹色のお菓子」という言葉がちらほら見られました。また、一番面白かったのが「贈収賄で米の受け渡しがある我が奈良県に比べたら……」というものです。本当なのかわかりませんが「年貢!? 」と思ってしまいました。
◇ ◇
定期的に世間を騒がせる京都の独特の文化事情。ともあれ件の幹部職員がどんな経緯で小判を受け取ったか、真相解明が待たれる。
なお今回の話題を提供してくれた杉村さんは現在、京都の細い路地の角などに、車が塀や建物に当たるのを避けるために設置される「いけず石」の情報を募集中。
「こんなに大きいのがある」、「こんなに独創的なのがある」、「これっていけず石ですか」など情報があったら、ぜひ杉村さんにご一報いただきたい。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)