その手があったか! 斬新なお店経営で初めての開業を支援「シェアキッチン」で自然派フード提供
新型コロナウイルス感染拡大の中、持ち帰りや宅配サービスに活路を見い出そうとしている飲食店は多い。そんな中、自然派フードにこだわりつつ、出店者を育成するユニークなシェアキッチンの店が昨年7月末、大阪に誕生。リピーターを増やしている。「自然派Kitchen market Uka」(日下佳世子代表)ではカレー、ベーグル、巻き寿司など5店が入っているからあきもこない。スタッフは女性限定。一体、どんなお店なのか?
コロナの影響でいわゆる「中食」「内食」の需要が増している。しかし、昨年7月27日に開店したテイクアウト&デリバリー「自然派Kitchen market Uka」は、そんな流れに沿ったものではなく、少し趣が異なる。
店舗があるのはオフィス街と住宅街が混在する大阪市中央区の一角。教育に力を入れているファミリー層と意識高い系の人が多く住んでいるといわれるエリアだ。近くにはオーガニックスーパーや米粉を使った自然派スイーツの店もある。
もっとも、開店に向けて準備を始めたのはコロナ禍以前。日下さんが体に良くて添加物などを使用しない安心安全な料理を提供したいという思いから薬膳カレーのお店を開こうと思っていたところ、知人からの紹介で、後の玄米粉ベーグルの店主となるまなみさんのプロデュースを頼まれ、シェアキッチンのアイデアが浮かんだ。
■キッチンは別、レジは一緒で自然派フードを提供
「食の大切さを実感した女性の多くはお店を出して広めたいと願っていますが、いざ、開店となるとリスクもあり、経験や資金不足から諦めてしまう方も少なくありません。そこでハードルを低くし、開業をサポートできればと思ったんですよ。ヨチヨチ歩きの人でも大丈夫です。考える前にやってみる、ですね」
店名の「Uka」は台所や食糧の貯蔵庫を守る神様「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」の一部をいただいた。それと出店する店主がサナギから蝶へ「羽化」するように、一人前になって羽ばたいて行ってほしいという願いも込めている。
台所と財布は別々で、店主はそれぞれ切磋琢磨しながら売り上げの一部を家賃として支払う。「当然、仕込みは別ですが、レジなど垣根を越えて協力し合っています。その点が他のシェアキッチンとは違うところでしょうか」
出店条件はというと、これがユニーク。まずは美容と健康のための自然派フードを提供したいと願う女性であること。オーガニックの食材、伝統的な製法の調味料など、なるべく自然な食材を使用すること。その上で誰もが納得するおいしい食べ物を追求する姿勢があること、の3点だ。2年経てば、独立してもいいそう。
■お弁当、ベーグル、ヴィーガン巻き寿司など5店が出店
店主もそれぞれ個性的だ。お弁当店「近江屋」の近江幸代さんは役者を目指しながら体を壊してしまったそうで「そんな私が自信を持ってオススメできるお弁当。無添加で古式発酵した調味料を使っています。食べて元気になってください」とPRした。
ベーグル店「ffme」のまなみさんは、2年ほど前に食を改善したら吹き出物や花粉症がほとんどなくなったとのこと。「添加物や白砂糖を使わず、玄米粉入りのベーグルが特徴。どんな割合にすれば玄米粉でもふわふわっとなるか。試行錯誤の末、2カ月かかりました」と明かす。
さらに、ヴィーガン巻き寿司店「おすしテック」のアヤさんは「玄米シャリには合わせ酢を使っているので消化が良く、ひと口で海藻、穀物、野菜が全部とれるますよ」と利点を強調した。
一方、代表の日下さんは大阪出身でOLとして働いていた。その当時はどちらかといえば美食家だったそうだが、料理好きが高じて20代後半に大阪の「辻調理師専門学校」へ。さらにフランスで設立された料理校、神戸の「ル・コルドン・ブルー」で料理の腕を磨いた。その後はマクロビオティック、栄養学、薬膳などを学び、10年ほど料理教室などを開催していた。今回の出店は、それを形として表現したかったからだと言う。
「ここ数年のコロナの影響もあり、食に興味を持たれたり、以前よりは食への意識が高い方も増えて来ましたが、まだまだ少数派だと思います。みんさん、ついつい安さやレトルトなど便利さを求めがちですが、体は食べたものでできています。ぜひ、本当に体のためになるような食事をして、体が元気になって行くのを実感してください」と日下さん。さらに、こう呼び掛けた。
「体が元気なると、心も軽くなっていきますよ。未来の自分やお子さんのために、もっと食に興味を持っていただけたら嬉しいです」
その思いは少しずつ浸透し、リピーターも増え、エステ業界の人からも関心を持たれているとか。体にいい食を提供し、人も育てるシェアキッチンUka。こんな取り組みがもっと広がればいいのにと思った。
◇テイクアウト&デリバリー「自然派Kitchen market Uka」
〒540-0025 大阪市中央区徳井町1-3-2 ホテルマイステイズ1F
営業時間は9時30分~19時、定休日は火曜日と第3水曜日(店舗ごとに定休日は異なります)
(まいどなニュース特約・山本 智行)