「凄絶!新年度予算を巡る一大攻防戦!」怪獣映画ポスター風の議会案内が話題の地方議会 作ったのは…議員さん!? 本人に聞いた
「総天然色ヨサン対ギカイ」
「戦え!予算審査特別委員会」
「凄絶!新年度予算を巡る一大攻防戦!」
小さな町の地方議会ながら、独立独歩の広報戦略と議会改革で気を吐く北海道の鷹栖町議会が、またユニークな定例会の告知画像を作り、話題になっている。往年の怪獣映画のポスターと見紛うデザインのそれには、上記のような仰々しい惹句と、何らかの危機(?)に敢然と立ち向かう12人の議員の姿が。
知らない人が見たら、まさかこれが町議会のものとは思うまい。担当者は同町議員の片山兵衛(ひょうえ)さん。議会の広報広聴常任委員長である片山さんは、過去にも週刊誌の中吊り広告風の案内チラシや、ジャポニカ学習帳風の傍聴ノートなど、議会のお堅いイメージを覆す広報戦略で全国的な注目を集めてきた人である。
■怪獣映画の「パロディ画像」を参考にデザイン
「一般会計、前年度比三億円増!行財政改革の行方は如何に!」
「議場狭しと吹き荒れる激論の嵐!」
一体何が始まるのか!? と見ているだけで胸が躍る議会案内は、とにかく作り込みが細かく、怪獣映画の「あの感じ」の再現度が異様に高い。片山さんは「ネット上で有名な『ゴジラ対若大将』という架空の映画ポスターが好きで、この画像や他の怪獣映画のポスターなどを参考に、色合いや構図を考えて作りました」と説明する。
怪獣映画の対決もののデザインを採用したのは、今回の議会の雰囲気を反映してのことだという。
「町では行財政改革に取り組むため、令和3年度から令和6年度の行財政改革プランも作って現在取り組みを進めている、としています。しかし令和4年度予算でその成果が見られることを期待していたら、令和3年度一般会計予算から3億600万円の増額(5.5%増)。財政調整基金も1億5000万円取り崩すという予算になっていました。これに対し、議会として、もっと行財政改革を意識した予算を組んでほしいということで議会開催前の議員協議会から議論を続けてきています。この緊迫感を表現するため、予算を怪獣に見立て、それに対抗するというデザインにしてみました」
「凄絶!」「一大攻防戦」「驚天動地」などは、怪獣映画のポスターで実際に使われていた文言で、今回の定例会にふさわいいフレーズだったためそのまま流用。制作で意識したのは、とにかく“それ”っぽく見せること。文字の色がやや見えにくいところや、出演者(議員)の名前の行間が狭いのも、実在するポスターのデザインを忠実に踏襲したそうだ。
ちなみに光の玉を持っている議員は経済福祉常任委員会の委員長。雷をバックにしている左上の議員は監査もしており、「予算書を裏から見ることができる」という意味を込めて予算書の後ろの位置に。一番下に見える炎は焼肉で脂が燃え上がったときの写真を使用…と、それぞれに細かい裏設定がある。
■有権者の関心低下を食い止めたい
鷹栖町議会が、情報発信にここまで力を入れる理由は何なのか。
以前の当サイトの取材に対して、片山さんは「鷹栖町議選は直近の2019年4月まで3期連続で無投票で、有権者の関心低下が課題。少しでも議会を身近に感じてもらいたいのです」と語っていた。効果はテキメンで、反響は町の範囲を軽く飛び越え、ネット上では「鷹栖町がどんな町なのか興味が湧いた」「住んでみたい」という声も上がるほど。議会報の改善にも取り組んでおり、北海道内の議会報コンクールで特選、令和3年度町村議会広報表彰では全国7位(優良賞)に選ばれている。片山さんは「広報活動を通じて、町のファンをつくることに少しでも役立てたのだとしたら嬉しいです」と笑顔を見せる。
余談だが、片山さんらが手弁当で作っているため、デザイン制作料はかかっていないそうだ。今回の怪獣映画風画像の「ヨサン」と「ギカイ」の文字はフリーフォントを使用。「商用でなければ自由に使えるとのことですが、念のため作者さんに連絡して許可をもらいました。『議会の定例会の案内で使いたい』とメールしたのですが、作者さんがどう思ったか気になってます(笑)」。いや、きっと作者さんもここまで徹底してもらえたことを喜んでいると思いますよ!
なお、怪獣映画ポスター風の画像は町議会のSNSなどで公開しているが、チラシなどの形では配布していない。そして町議会は3月10日、一般会計予算に対する附帯決議を全会一致で可決。片山さんによると、ポスターに見合う熱い議論が交わされたそうだ。
(まいどなニュース・黒川 裕生)