「モスクワ便はキャンセルに」撃墜恐れ緊迫のフライト ウクライナとロシア…国同士の対立を体感した記憶

残念ながら2022年2月24日にロシアはウクライナに本格的に侵攻しました。筆者はロシアに4回、ウクライナに2回渡航し、友人もいるので、とても悲しい気持ちです。一旅人という立場からロシアとウクライナの戦争について考えてみました。

■ロシアとウクライナの対立は8年前から

ロシアとウクライナの対立は今に始まった話ではありません。2014年にウクライナで「マイダン革命」が起き、その流れでロシアによるクリミア半島の併合、東部の不安定化からスタートしました。筆者が両国の対立を痛感したのは2015年でした。

当時、筆者は会社をやめ、3カ月間の中欧・東欧旅行をしていました。最後の訪問国がウクライナで、12月に首都キエフからモスクワ経由で帰国する予定でした。

10月末にボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボにいるときに、アエロフロート・ロシア航空から1本の電話が。折り返し電話すると「両国の関係悪化により、キエフ~モスクワ便はキャンセルになった。ベラルーシのミンスクもしくはモルドバのキシナウ経由にしてください」と言われました。

ベラルーシ経由はビザが必要なので断念。結局、キエフからキシナウまで戻り、キシナウで1泊。翌日、キシナウ、モスクワ、東京(成田)の順で帰国しました。

キシナウ~モスクワ便の機内はとんでもない緊張感に包まれていました。ウクライナ東部でマレーシア航空が撃墜された事故から1年後ということもあったのでしょう。ほとんどの搭乗客が全身緊張のような状態で、話し声一つ聞こえてきませんでした。

モスクワ・シェレメチェボ空港に着いた瞬間、搭乗客の割れんばかりの拍手に包まれ、筆者も含めて搭乗客は一様にホッとした表情に。「国同士による本気の対立」を体感した出来事でした。

■「キエフじゃない! キーウよ!」

私にはキエフに住む1歳上のウクライナ人の友人がいます。ウクライナの公用語はウクライナ語ですが、日常的に話す言葉はロシア語です。もちろんウクライナ語もペラペラです。

ロシア語とウクライナ語は言語的に同じグループに属し、友人のようにロシア語を日常的に使う人は少なくありません。つまり「ウクライナ人=ウクライナ語を日常的に話す人」ではないのです。

参考までにウクライナで行われた調査において「どの言語でテレビを見るか」という問いに対し、約50%が「ウクライナ語・ロシア語同程度」と回答しました。

さて友人は2012年に日本に留学していましたが、当時はウクライナの地名をロシア語読みしていました。つまり「キエフ」「ハリコフ」「リボフ」といった感じです。

ところが2018年にキエフで友人に会った際、私が「キエフに着いた!」と言ったら、友人は「キエフじゃない! キーウよ!」と発言。

地名もウクライナ語読みの「キーウ」「ハリキフ」「リヴィウ」になっていました。それでも、店員に話しかける際はロシア語だったので、頭が少し混乱しましたが。

当時「ウクライナは愛国的な人が増えている」と友人は言っていましたが、筆者は地名の呼び方で愛国心の高まりを感じました。年を追うごとにロシア政府への強い不満が高まっていたように感じます。

■戦争はいつ終わるのか?

筆者は2015年、2018年にウクライナを訪れただけですが、少なくとも今日のような様相を予想する人は誰もいませんでした。もちろんロシア人も自国がウクライナの街を爆撃するとは思わなかったでしょう。

戦争は早く終わってほしいと思いますが、過去の歴史を見ても、現段階の停戦はなかなか難しいように思います。日本からはウクライナの美しい国土を思いながら、サポートするしかありません。

また政治システムを考慮すると、一般のロシア人を批判するのは酷なように感じます。筆者にとってロシアも何だかんだ言って愛着がある国。「おい目を覚ませ!」と一般のロシア人ではなく、クレムリンに向かって叫びたくなる今日この頃です。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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