記録よりも記憶 北京五輪で最もニュースになったアスリートは

冬季大会の獲得メダル数で過去最多を更新し、18個(金3、銀6、銅9)のメダルをつかんだ北京五輪。選手の素晴らしい活躍に日本中がわきましたが、北京オリンピック開催前(2022年1月18日~2月3日)と開催期間中(2022年2月4日~20日)で、最もニュースになったアスリートは誰でしょうか。メダルに届かなかった選手の存在が際立つという分析結果が出ました。

株式会社トドオナダは、3000以上のWEBメディアをモニタリングできるツール「Qlipper」のデータに基づき、北京オリンピックで活躍した選手らのウェブニュースランキングを発表。大会前と大会期間中の17日間について、出場した日本人選手のうち、メダリスト、記事数上位の選手および公式マスコットを比較分析しました。

■大会前は

男子フィギュアスケート選手が上位です。羽生結弦選手が記事数・記事ツイート数で1位、仮想PVで2位でした。けがの回復と4回転半ジャンプ、そして3連覇の成否が注目されたのはもちろんでしたが、自身がメディアの前にほとんど出なかったことでかえって報道を増やした面がありました。試合直前まで動向が明かされないこと自体が話題になり、周囲の人へ取材した記事が途切れませんでした。とくに、中国での人気を伝える記事が目を引きました。また、他国の強豪選手の動向を伝える中での「羽生のライバル」といった記載も目立ちました。五輪全体を取り上げる記事で注目選手として羽生選手の名前が挙がるという特徴もありました。

記事数3位、仮想PV1位、記事ツイート数2位の宇野昌磨選手は、『Yahoo!トピックス』に載った記事の多さが仮想PVに影響しました。内容は団体の男子ショートプログラムへの出場と、コーチが新型コロナの陽性判定を受けたことでした。とくにコーチのコロナ陽性の件は大きく報じられ、記事数にも影響しました。また本番のリンクで初練習に臨んだ姿を捉えた写真が、通信社から多くのメディアに配信されたことも記事を増やしました。

記事数2位の高木美帆選手(スピードスケート)は、メダル候補としてだけでなく日本選手団の主将としてのメディア露出が大会前の記事数に影響しました。出席した結団式と記者会見の報道はとりわけ多く、新聞・通信社とテレビが多く報じたほか、エンタメ・芸能情報のサイトやゴシップ紙なども記事にしています。また、開会直前にデビットコーチが新型コロナ陽性となったことを報じる記事でも、影響が及ぶ選手として記載されました。

仮想PV・記事ツイート数3位の平野歩夢選手(スノーボードハーフパイプ)は、弟である海祝選手とともに五輪代表選手に選ばれたことが、注目される記事の題材となっていました。『Yahoo!トピックス』に掲載されて高PVを得た記事が2つありましたが、それは代表内定選手の発表時とその後のオンライン会見の記事で、いずれも兄弟での五輪出場を強調する見出しをつけられていました。

■大会期間中は

記事数の1位、仮想PVと記事ツイート数の1位・2位は、メダルに届かなかった羽生結弦選手と​高梨沙羅選手(スキージャンプ)でした。

大会期間中にメディア露出の動向が変化した高梨選手。期間中の仮想PVが1位、記事ツイート数2位で、増加率は仮想PVが約4800%、記事ツイート数が3万4800%でした。スキージャンプ混合団体でのスーツ規定違反による失格の余波が大きく、PVも記事ツイートも上位の話題を羽生選手と分け合っています。ランキングには反映されていませんが、記事の論調を分析すると、「やや暗い」「暗い」が少なくないことがうかがえます。

 羽生選手は記事数と記事ツイート数で1位、仮想PVで2位と、大会前と同じ位置を維持しました。記事数は2位のロコ・ソラーレの1.7倍、記事ツイート数は2位高梨選手の2倍超と、あらためて話題の中心であることを示しました。記事数は競技のあった8日から10日にかけて増えていますが、1記事ごとで仮想PVが高いのは14日の会見の記事と、エキシビションの公式練習後にスタッフの整氷作業に飛び入り参加した際の記事でした。記事ツイートが多かったのは、4回転半がISU(国際スケート連盟)公認大会で初認定されたという記事でした。

■一躍注目を集めたのは

メディア露出が大きく増えたのは、ロコ・ソラーレと公式マスコットでした。

総合的に見て、大会前から最も注目度を上げたのはカーリング女子のロコ・ソラーレでした。大会前は記事数が14位、仮想PVが13位と話題の中心とはいえないポジションでしたが、大会中では記事数2位、仮想PVと記事ツイート数で3位と大きく飛躍。記事数の推移を見ると、大会を通じて徐々に報道が増え、決勝の行われた20日にピークを迎えています。増加率でも、記事数が2635%増(2位)、仮想PVが14505%増(1位)となりました。最終的に銀メダルを獲得した実績はもちろんですが、試合数の多さと期間の長さや、「もぐもぐタイム」、「メガネ先輩」、解説者の人気獲得など、記事にしやすくポップな話題に事欠かなかったことも影響しました。

2010年バンクーバー大会銀メダルの浅田真央以来4人目の日本女子表彰台に立った坂本花織選手(フィギュアスケート)は記事数が1467%増(4位)の記事ツイート数が17041%増(5位)で、ヒロインとして脚光を浴びました。

大会期間中に記事が最も増えたのは、公式マスコットのビン・ドゥンドゥンでした。開会前とくらべて記事数の増加率が約3000%を記録しています。大会中には、着ぐるみと選手との交流の様子や選手が持つぬいぐるみで注目され、単独でも写真付きの記事が多く出ました。現地での人気ぶりも報じられていました。

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