工場で瀕死の重傷、殺処分の危機、“不治の病”…そのたびに温かい人たちが助けてくれた。野良猫・カーターくんの波乱万丈のニャン生
仲良しのちび太くんときなこちゃんと、穏やかに暮らす大阪府のカーターくん。年齢は多分2歳ぐらい。一見、普通の猫に見えますが、物凄い強運の持ち主なんですよ。一緒にいるだけで、運勢が爆上げになるほど。
それもそのはず。カーターくんは何と3度も生死の境をさまよい、その都度生還しているのです。とてつもない強運の持ち主。
元々カーターくんは、大阪府北部にあるスクラップ工場を根城にしていた野良猫です。15匹の仲間の猫たちと一緒に、猫好き社員のお爺さんにお世話をしてもらっていました。毎日ご飯を出してもらい、休み時間や終業後はお膝にのってなでなで。カーターくんは野良猫でありながらも、そこそこ幸せな生活を送っていました。
そんなカーターくんに不幸が襲い掛かります。ある日のこと、うっかり工場の機械に挟まれてしまったのです。失血が多く、誰が見てももうダメな状態。それでもお爺さんは、献身的な看病を続けます。その熱意が天に通じたのか、カーターくんは奇跡的に回復を見せたのです。右前肢と尻尾は切断せざるを得ませんでしたが、カーターくんは今まで通りお爺さんと過ごせるようになりました。
しかし、幸せな時間はいつまでも続きません。お爺さんが定年退職となった時、会社の社長が猫を全部処分しろと命じます。それが出来ないなら、会社から保健所に連絡すると…。
さあ困ったお爺さん。既に自宅には3匹の猫がいます。知り合いに貰ってもらうにも、一気に15匹は困難です。このままでは殺処分になってしまいます。
お爺さんと同僚たちは、必死になって猫を引き取ってくれる人を探しました。近隣の保護団体にも声をかけ、ようやく「高槻ねこの会」が話を聞いてくれることに。でも、15匹全員は難しいと言われてしまいます。
そんな時、ばったりお爺さんと再会したのが、現在カーターくんと暮らすHさんです。彼女は以前、工場猫のTNRのお手伝いをしたことがあります。お爺さんと再会する直前にペット可の物件へ引っ越しをし、保護猫活動を始めようと考えていた時でした。
彼女はお爺さんの話を聞き、6匹を引き受けることにします。その中の1匹がカーターくんです。9匹は高槻ねこの会で新しいお家を探すことになりました。殺処分かと思われていたカーターくんたちは、九死に一生を得たのです。
保護されたカーターくんたちは、最初おっかなびっくり。優しいお爺さんとお別れし、見知らぬ女性との暮らしです。でも、1週間ほど経つと、Hさんがお爺さんと同じぐらい優しい人だと分かり、スリスリするように。もう工場の機械に怯えることもありません。ようやく穏やかな日々が送れると、誰もがそう思っていました。
そんな矢先、カーターくんの食欲が落ちます。加えて呼吸音も何だかおかしい。動物病院で検査をしてもらったところ、不治の病といわれるFIP(猫伝染性腹膜炎)だったのです。Hさんの目の前は真っ暗になりました。何度も不運を乗り越えて、やっと温かいお家で過ごせるようになったばかりなのに…。
この子は幸せになるべき子、そう信じたHさんは未承認であるもののFIPの特効薬をカーターくんに服用させる決断を下します。この薬は高額ですが、命と引き換えにはできません。
一緒に保護した猫たちも次々とFIPを発症していく中、Hさんの孤独な闘いは始まります。お爺さんから託された命を守りたい、その一心でカーターくんたちの看病を続けました。
その甲斐あって、不治の病といわれるFIPをカーターくんは克服!2月下旬に獣医師から寛解のお墨付きを貰ったんですよ。カーターくんの仲良しのちび太くんも、4月中旬に寛解予定です。
奇跡を何度も起こすカーターくんは今、のんびり里親さんを探しています。できれば、仲良しのちび太くんときなこちゃんも一緒に引き取ってくれる方が嬉しいです。工場時代からずっと一緒の3匹ですから。
3匹一緒に引き取るなんて、奇跡が起きないと無理かもしれません。でも、何度も奇跡を起こしてきたカーターくんのことです。今度も奇跡が起きるのじゃないかと期待しています。
だって奇跡は、それを強く願う人が多ければ多いほど起きるものなのですから。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)