子どもが一人暮らしで「早慶上智」へ 通わせるのに必要な「親の年収」は?
春から新大学生となり、新たに一人暮らしを始める方も多いでしょう。喜ばしい新入学ですが、親にとっては学費や生活費の負担が悩みの種…となってしまうことも少なくありません。大学にかかる費用は国公立か私立か、自宅通学か一人暮らしか、何学部かなどによっても異なりますが、お金がかかるパターンの一つが「私立大学かつ一人暮らし」。特に人気の高い私立大学の場合は、親元を離れて一人暮らしするケースも多く、その費用は想像以上に高額になります。
子どもを私立大学に入れて一人暮らしさせる場合、親の収入はどの程度必要なのでしょうか。全国から学生が集まる難関私大「早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学」に入った場合にかかる費用と、無理なく支払える年収について考えてみました。
■年間の学費と生活費はどのくらいかかる?
まずは学費から。各大学が公表している学費(別紙)を見てみると、いずれの大学も文系学部にかかる費用の平均は年間110~130万程度、理系学部にかかる費用は文系より40万円ほど高い年間150~170万円程度(医学・薬学系を除く)となっています。
続いて一人暮らしの費用を見てみます。日本学生支援機構による「2020(令和2)年度 学生生活調査結果」によると、アパート等を借りて大学に通学する場合、生活費として年間約144万円を保護者が負担していることが分かります。ただし、これは全国平均なので、家賃が高い東京での一人暮らし場合はより高額になることも予想されます。
学費と生活費を合計すると、年間の費用は文系なら年間250万~270万円、理系なら年間300~320万円程度とかなりの高額になってきます。
■全額年収からまかなう場合は年収1600万円~2000万円が必要
では、毎年これらの学費を捻出するために、親の収入はどの程度必要になるのでしょうか。無理なく支払うための基準は「年間の教育費を額面年収の15%以内に収めること」。収入の多寡にもよるので絶対的な基準とは言えませんが、他の費目とのバランスをとるための一つの目安として使えます。
この基準を適用すると、学費と生活費を全額年収から支出するなら、額面年収1600万円~2000万円程度(手取り年収1100万円~1300万円)が必要に。ただし大学進学費用に関しては、学資保険や積立預金などで準備しているご家庭も多いと思います。仮に400万円大学資金を準備している場合、額面年収1000万~1500万円(手取り年収750万円~1050万円)のご家庭ならある程度余裕を持って支出が可能になります(4年間通学する場合)。
とはいえ年収1000万円以上の家庭は一握りです。それ以外のご家庭で子どもを早慶上智に一人暮らしで通わせる場合は、計画的に多めの大学資金を準備したり、奨学金や教育ローンの利用を検討したり、あるいは本人にアルバイトなどで学費を調達してもらったりする必要が出てきます。
ちなみに2021年度の早稲田大学・慶應義塾大学の合格者数が、首都圏を除き最も多い道府県は愛知県。愛知県の世帯年収(給与収入の場合は額面年収)の平均は613万円で、47都道府県の中で4位という高収入の県となっています。この収入の高さが受験先や進学先にも影響を与えているのかもしれません。なお愛知県の世帯のうち1000万円以上の年収がある世帯は全体の5.7%、1500万円以上の世帯は0.9%です(総務省「2019年 全国家計構造調査」より)。
■地方出身の学生に対し、大学からの支援も
ご紹介したような金銭的負担も要因となってか、一人暮らしをしながら大学へ通う学生の割合は年々減少傾向にあります。文部科学省「学校基本調査」によると、東京都内の大学で首都圏以外の出身者が占める割合は1982年度には約43.7%でしたが、2002年度には38.4%、2012年度には33.1%、2022年度は29.7%にまで落ち込んでいます。
大学側もこの状況を受け、地方出身の学生に対しさまざまな支援を行っています。早稲田大学には首都圏以外の出身者で経済的な問題を抱えている学生が対象の「めざせ!都の西北奨学金」が、慶應義塾大学と上智大学にも同様の「学問のすゝめ奨学金」「上智大学ソフィア会生活支援奨学金」があります。いずれも返済不要で入試出願前に申請でき、入学後の奨学金が事前に約束されます。
こうした状況を踏まえ、これから進路を考えるお子さんに対しては、一人暮らししながら私立大学に通う場合、学費・生活費に多くのお金がかかることを理解してもらうのが大切です。その上で「なぜその大学に行きたいのか」「返済不要の奨学金など、利用できる制度はないか」をよく考え、進学先を決めるのが望ましいでしょう。
(ファイナンシャルプランナー・森川 みかん)