昇進・昇格を断ったことを理由に懲戒処分できないか?…と弁護士への相談が増えているってホント?

「最近、昇進・昇格を断ったことを理由に懲戒処分ができないかという相談が増えてきました。店長や課長への昇進・昇格を断る人が増えているそうです。あまり議論されていない論点です。広い意味での労働条件の変更でしょうし、昇進・昇格による不利益(責任・残業代の扱い)もそれなりにありそうです」とツイートしたのは弁護士の向井蘭さん(@r_mukai)。昇進、昇格と言えば嬉しいことのように思えますが、いったい何が起こっているのでしょうか。

この投稿のリプ欄には、「過去にそういう誰も昇進したがらない職場にいた事があります。大体そういう職場は昇給したら責任と仕事量だけが数倍になるのに、対価となる給料は微増、下手したら据え置きなんて事が珍しくなかったりします」など切実なリプライが多数ありました。

「昇格しても、非組合員になると、残業代が出なくなるので、嫌だという人もいますね。残業の多い部署だと、昇給しても、結果的に月の手取りが減ったり。賞与や退職金は大きく上がるのですけど」

「仕事で名誉感じられる時代じゃねっての」

「名ばかり管理職にして残業代を払わない使用者を懲戒処分にできないですかね?」

「前に働いていた会社で4~5年昇進断り続けていましたが断り切れず受けたとたんに仕事倍増。長時間拘束・休日出勤当たり前になったので退職した。仕事量の増加と給与が比例してないのに喜んで役職つく人が信じられない」

「店長になって失う安寧は大きいと思います」

弁護士の向井蘭さんに詳しい話を聞きました。

ーー昇進や昇格を辞退する人が増えているのですね。

「少しずつ増えているようです。昇進昇格してもそれほど賃金が上がらず、責任や時間外労働が増える場合、辞退するようです」

ーーそこそこ稼げたら、それほど多くの責任を負いたくない、残業代もいらない、生涯このままでいいというように思うのでしょうか。

「昇進昇格しても希望が持てないのだと思います。多くの方は中小企業で働いており、同族企業の取締役や管理職になりたいかというと責任やプレッシャーが大きい代わりに報酬は特に高くありません。また、退職金が出ない中小企業も全体の5分の1程度あるので、特に昇進昇格したくはないと考えていると思います」

ーーだからと言って懲戒処分とは穏やかでないと思うのですが、なぜ会社は懲戒処分に?

「喜ぶと思ったところ断られて、頭にきたのだと思います。また、他の社員に示しがつかないと思っているのだと思います。ただ、管理職昇進自体が業務命令とは言えませんし、残業代が支払われないなどの労基法違反を伴う事実上の不利益を伴う場合が多いので、懲戒処分は無効になると思います」

ーー今後この問題は、どのようになっていくと思われますか。

「今後、きちんと収益を挙げて管理職に配分できる企業とそうでない企業では今後大きな差が付くと思います」

◇ ◇

経済産業省の中小企業白書2020によると、2016年、中小企業で働く人の割合は約7割、大企業が約3割。向井蘭さんによると、このような問題は主に中小企業で起こっているといいますが、今後大企業と中小企業の待遇格差が広がるにつれて、こうした問題が増えていくことが懸念されます。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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