猫の「さんちゃん」が2代目観光大使に就任だニャ 築100年以上の木造駅舎が現存するJR九州の駅
JR肥薩線・嘉例川駅(鹿児島県霧島市)で13日、キジ白の「さんちゃん」(メス、推定1~2歳)が嘉例川地区の2代目観光大使に任命され、話題になっている。同駅で活躍した初代観光大使の「にゃん太郎」が虹の橋をわたって約2年。地元の人たちは「にゃん太郎のようにたくさんの人を招いてくれたら」と、新たな観光大使に期待を寄せる。
■無人駅に迷い込んだ猫を保護、2代目観光大使の修業中
築100年以上の木造駅舎が現存するJR嘉例川駅は霧島山系の山間にある無人駅で、霧島観光名所のひとつ。さんちゃんは昨年(2021年)10月のある日、同駅前で鳴いていたところを、嘉例川地区活性化推進委員会委員長の山木由美子さん(74)が見つけた。
「朝、駅にやってきたら、ミーミー鳴いていてね。今はかなり大きくなりましたが、当時は痩せてて小さかったです。よく見ると左耳先端に避妊手術を施した印が入っていたので、どこかの地域猫がここへ迷い込んできたのかもしれません。放っておくわけにもいかず、保護して私が世話をするようになったんです」(山木さん)
■初代の観光大使・にゃん太郎を亡くし、悲しみにくれていたが…
山木さんは、嘉例川地区の初代観光大使を務め、2020年7月に虹の橋を渡った「にゃん太郎」(オス、推定14歳で没)を世話していた「おかあさん」だ。同駅に住み着いたにゃん太郎を2016年5月、同地区の観光大使に任命。すると、新聞やテレビ、雑誌など数多くのメディアで取り上げられ、一躍全国的に有名な猫に。たぬきのような愛嬌ある顔が人気を呼び、地元の人たちや訪れた観光客に愛された。
しかし、もともと腎臓が悪かったようで、夏バテしたり元気をなくしたりすることがしばしばあった。そのたびに山木さんは動物病院へ連れて行って介抱していたが、観光大使就任から4年が経った2020年夏になると、人前に出られなくなるほど体調を崩した。
「私の方は4、5年前からずっと股関節が痛くて我慢していたんですが、コロナ禍で時間ができたこともあり、6月に手術、入院することに決めたんです。ちょうど同じころ、にゃん太郎も体の具合が悪くなり、動物病院へ入院させることに。にゃん太郎のことが心配で、動物病院には毎日、声を聞かせてくださいと電話をしていました」
7月初旬、山木さんが治療を終えて退院し、1ヶ月ぶりににゃん太郎を動物病院まで迎えにいくと、獣医師からは「ここ1週間くらい、朝晩の点滴のみで何も食べてくれない…」と告げられた。「おそらく私に会うのを待っていたんでしょう。それから3日後、7月11日の夜中、にゃん太郎は私の腕の中で静かに息を引き取りました」
にゃん太郎が駅に現れ、観光大使として活躍した約4年半の間、自分の子どものように毎日世話をしてきた山木さんにとって、それはとても辛い別れだった。「にゃん太郎は車に乗ったりお風呂に入ったりするのが大好きだったんですよ。だから毎日、車に乗るたび、お風呂に入るたびに、思い出しては泣いてばかりいました」
昨年の命日には、全国からにゃん太郎ファンが駆けつけてくれた。駅に花を持ってきてくれたり、「遺影に手を合わせたい」と山木さん宅を訪れたりする人もいたという。
「ずっと泣いて過ごしていたので、後継者を見つけようなんて、まったく思ってもいなかったんです。でも、さんちゃんと出会って、最初はビクビクこわがることもあったんですけど、駅に住みついてだんだん人なつこくなってきたので、この子なら2代目としてやっていけるんじゃないかなって」
たくさんの観光客を運んできた人気の観光特急「はやとの風」が3月21日で運行終了となることもあり、地元では「地域活性化のために何かしたい」との思いは強い。
さんちゃんはまだ若く、やんちゃ娘。昼間は活発だが、夕飯を食べておやすみモードに入ると、電池が切れたようにねむる。人や駅や電車が大好きだったにゃん太郎と比べると、お客さんをもてなすには、まだまだ修業が必要だそう。
「自宅のリビングにあるにゃん太郎の遺影の前で、にゃん太郎ちゃん、さんちゃんにおもてなしの仕方を教えてあげてね、と毎日拝んでいます」とほほえむ山木さん。さんちゃんのこれからの活躍に期待を込めた。
(まいどなニュース特約・西松 宏)