多くの人が読みやすく…「UDフォント」を使う明石市の行政資料が話題「行政の意識の現れ」「県や国は未だにMS明朝」
泉房穂市長の主導のもと子育てに関する政策やコロナ禍対策などで目覚ましい業績を上げている明石市。今、SNS上ではそんな明石市の先進性があらためて大きな注目を集めている。
きっかけになったのはともかフェノメノンさん(@tomoka_hidden)の以下のような投稿。
「明石市と仕事で関わることになって感心したのは、行政から出ている紙にUDフォントが使われていることです。一方で県や国の出す紙が未だにMS明朝。細かいことかも知れないけど、こういうところに『行政が何を意識しているか』が見えてくる気がしますね。」
UDフォントとは2006年に"ユニバーサルデザイン"を目指して開発された比較的新しいフォントで、高齢者や弱視、読み書き障害などハンディキャップを持つ人にとっても読みやすくデザインされている書体。これまで行政の文書と言えばほとんどMS明朝だったが、そこにあえてUDフォントを導入するという明石市の姿勢からはたしかに"お役所"とは思えない並々ならぬ配慮を感じる。
ともかフェノメノンさんの投稿に対しSNSユーザー達からは
「鋭い指摘で、そのとおりだなと思いました。 UDフォント知りませんでした。見やすいですね。」
「どのような方を選ぶかで、どんな生活になるのかが決まるということが、ハッキリ見える事例ですね。」
「半官半民職です。UDフォント使ってバリ怒られました。説明もしたんだけどなぁ。」
「このツイートを見たのをきっかけに、今後ウチでも印刷物などに使うフォントはモリサワのBIZ UDフォントを使うことに決めました。福祉系のクライアント各社にも同様に薦めてみます。」
など明石市を称賛する声が数多寄せられている。
ともかフェノメノンさんにお話を聞いた。
ーーお仕事で関わる以前、明石市の行政についてどのような印象を持っておられたでしょうか?
ともかフェノメノン:近年いろんなニュースでおなじみの泉市長ですが、先進的な取り組みを行っていることは大変素晴らしいと思っていました。市民目線、なかでも、弱い立場にある人のことを考えて政策に反映したりまちづくりに活かしている印象がありました。
ーー文書にUDフォントが使われていることをお知りになった際のご感想をあらためてお聞かせください。また、行政がUDフォントを使うことの意義についてお考えをお聞かせください。
ともかフェノメノン:そもそもあのツイートに至ったのは、「明石市標準服」に関する神戸新聞の記事が気になったからです。検索してみると明石市のPDF文書が出てきて、それを見て「UDフォントだ!」と嬉しくなりました。私も仕事でUDフォントを使うのですぐに分かりました。
UDフォントを使うことで「少しでも多くの人に読みやすくなるように」という配慮が感じられます。文字認識能力には人によって差があり、文字認識が苦手な人(ディスレクシア)もいますし、視力の問題から細かい文字が苦手な人もいます。伝統的にMS明朝が使われてきた行政の文書にUDフォントが使われたということで、「文字認識が苦手な人への配慮」という考え方がより広がっていくのではないかと期待しています。
「たかがフォントひとつでそこまで大層な……」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、そういう細かいところにもこだわるからこそ、「No One Left Behind」の精神が伝わるのではないでしょうか。
ーーお仕事をされる上で今回の件以外にも明石市の先進性や意識の高さを感じるエピソードがありましたらお聞かせください。
ともかフェノメノン:UDフォントだけでなく、独自のコロナ対策支援、子育て支援の充実、学校等で生理用品の配布、ひとり親家庭への支援、ジェンダーフリートイレ設置、パートナーシップ制度……などなど、国内では類を見ない先進的な取り組みが数年のうちに次々と為されていることは注目に値します。
またこれらの政策は、立場の弱い方に寄り添う理念のものがほとんどです。明石市の人口が増えているのは有名な話ですが、このように立場の弱い人に寄り添うことのできる町は、誰にとっても住みやすい町になるということがよく分かります。
もっとも短期間に新しい政策を実行してきたわけですから市役所の職員の方々は大変だったことでしょうが、今後も誰にとっても住みやすい町であり続けてほしいですね。また、こうした取り組みは全国の自治体にとってもお手本のひとつとなるのではないでしょうか。
ーーこれまでのSNSの反響についてご感想をお聞かせください。
ともかフェノメノン:「UDフォントについて初めて知りました」「これから使ってみようと思います」といったお声をたくさん頂戴しました。ありがたいことです。UDフォントの利点や理念がより多くの人に伝われば、県や国の文書もUD仕様に変わっていくかも知れませんね。すでに教科書などはUD化が進んでいるようですし、公共性の高いところにはどんどん導入されていくことと思います。
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明石市を見習い、住民に向き合った施策をとる自治体が増えるよう願いたい。
なお、ともかフェノメノンさんが明石市のUDフォント導入を知るきっかけになった「明石市標準服」については「校則改革 理不尽な生徒指導に苦しむ教師たちの挑戦」(東洋館出版社)が詳しい。明石市と加古川市における学校現場での服装規定の改善事例がリアルに記された良著なので、ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)