定年後集めた本は4万冊 地元では「夢のような場所」と評判の古本屋、営業は「あと4年」と決めているワケ

「是非、閉めないで誰かに継いでもらって下さい。お店を必要としている方がたくさんいるような気がします」。そんな声がSNS上に広がっているお店があります。愛知県名古屋市内にある「古書・文学 千代の介書店」という古本屋です。何がそんなに人々を惹きつけているのでしょうか。お店のファンである人物に、さらに店主にも話を聞いてみました。

千代の介書店推しの1人である守屋華那歩さん(@kanten0kcal)。先日はTwitterにお店の魅力について、こんな風に紹介していました。「おじいさんが若い頃からコツコツ集めて定年後に開いた古本屋さん・安い中古本とかではなくて、古くて残すべき価値のある本がずらりと並んでる・おすすめを聞くととっても丁寧に教えてくれる・あと4年後にお店を閉める という点でとてもおすすめです。古本とは思えないくらい綺麗な本たち」。店内を撮影した写真には、とても1人で集めたとは思えないほどたくさんの本が整然と並べられていました。まるで図書館のようです。

このツイートを見た人たちからは、

「千代の介書店!大学の頃通りすがりに見つけ、たまに通っていました。『本当はここにある本一冊だって売りたくないんだよ」とおっしゃってたのが印象深いです。お話長いですがすごくよい古書店ですよね」

「数年前の大学時代、ここの店主に本の面白さを教えてもらい、ずっと通いつめていました。バイト代のほとんどをつぎ込み、何百冊とここの古書を読み漁り、店主とたくさんのお話をしたこと今でも忘れられないです。会いに行かねば」

「素晴らしい!自分は本が重荷になって、捨てながら読んできました。歳を重ねて、思うことは、本は捨てないほうが良い。心、知性の拠り所でもあるのです、本って」

「本当に素敵な本屋さんです。もう20年以上前、学生だったわたしに沢山の歴史小説を与えてくれた夢のような場所です。店長さんからは本への愛情や、本について語らう事の楽しさを教えてもらいました」

と、実際に通っていた人の投稿もあり、店主への感謝の言葉が並べられていました。

投稿した守屋華那歩さんに話を聞きました。

ーー古くて残すべき価値のある本とは?

「『古くて残すべき価値のある本』はご主人がおっしゃったので、ご主人にとって価値があるものだったり、入手困難なものもあるとおっしゃっていました。人よって価値感は違うと思うので私の判断だけで意見をすることはできませんが、一般的な古本屋で安く手に入る本はほとんど置いてありません。古本ほぼ全てに透明なカバーが付けられていて、紙や表紙のお手入れもされている、元の本以上の価値があると思います」

ーー店主のおじいさんは、なぜ4年後に店を閉められるのですか。

「90歳になる頃には、体や頭がもたないとおっしゃっていました」

ーーおじいさんとは、お話をされましたか。

「私は30分ほどお話ししました。本とは、本と人生、おすすめの本、お孫さんのお話、本の話から、身内の話まで、本に関係する内容でお話を聞かせてくれました」

ーー「千代の介書店」の魅力を教えてください。

「長屋らしい奥行き感のある本棚の連続が魅力的です」

■店主に聞いた「本が一番安くて済む娯楽だった」

店主の千代の介さんにも話を聞きました。

ーーもともと本がお好きだったんですか。

「子供の頃、体が弱かったので家にいる時間が長く、うちにあった本を片っ端からよく読んでいたんです。まだ戦前のことでした。その後、広島出身なんですが、就職して東京に出てからも、本が一番安くて済む娯楽だったのでよく本を読みました」

ーーなぜ古書店を始めたのですか?

「もっと皆さんに本を読んでもらいたいと思ったのです。今は、携帯でいろんな情報を簡単に手に入れられますが、人間、考えないと人類は破滅してしまうと思うんです。100年はもっても110年はもたないんじゃないでしょうか。何も考えず、批評も批判もしないでいては。ただの動物に戻るのかなと。そういうことも考えないで皆さんいいのかな。」

ーーそれにしてもたくさんの本ですね。

「いろんな本を読んできましたから。ジャンルに関係なく、作家で選んでいます。何がどうと言うことはない。ただ、この本良かったなあという本を選んでいます。4万冊くらいあるけど、フィクションじゃなく、ノンフィクションの本が多いです。ノンフィクションは、自分が体験したことが書いてあるので、何かあったときに役に立つんじゃないかと思うんです」

ーー本格的に集め始めたのは?

「定年前も読んでもらいたい本を多少は集めていたのですが、本格的に集めたのは定年後、27年前のことです。集めるにもだいたい作家の名前くらいは知っていないと集め羅れませんからね。知っている作家の本を集めました。最初は売れなかったんですよ。ほとんど売れなくて、しょうがないなと思ってやっているうちに、ここ2、3年は少しずつ売れるようになりました」

ーー90歳でお店を閉められる予定なのですか。

「体力が要りますからね。本を上げたり下ろしたり。視力の問題もあります。人間は色々落ちてきます。一日中ここにいないといけませんし。今は、本を買って読んでもらって、そうすると、もっと難しい本を買ってこようと思う。それが楽しいんです」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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