大学当局「花見するべからず」→東大生「次の規制が楽しみ!」皮肉&ユーモアあふれる立て看を11万人が称賛
東京大学駒場キャンパス(東京都目黒区)に正門前に現れた立て看板(スタンドポスター)がSNSで話題です。花見の禁止を伝える当局の看板を逆手にとって、シニカルかつユーモアたっぷりなカウンターを見舞うという内容。「皮肉が効いているし好き」「こういう学生が居ることに希望を感じる」と称賛される看板の制作者さんに聞きました。
事の発端は、東京大学総合文化研究科・教養学部の名前で当局が出したスタンドポスターでした。「新型コロナウイルス感染拡大防止等の観点から駒場1キャンパス内での花見行為を禁止します」。要は「花見するなよ」という直球メッセージです。
これに対して、東京大学自粛同好会の名ですぐ近くに設置された同様のスタンドポスターが意表を突きます。「花をうっかり見てしまわないように目隠し発売中¥567」「うれしい567(コロナ)プライス!」とボケ倒します。さらに「私たち学生はキャンパスの付属品みたいなものだから、キャンパスを所有する当局に何を言われても従うべきだね。次は何を?楽しみ!」と嫌味たっぷりのメッセージ。制作者さんの「喧嘩上等」が伝わってくるようです。
■11万人がいいね
このスタンドポスターを、東大立て看同好会(@tatekan_UTno)さんが「花見禁止から目隠し売ろうとする東大生の商魂草」とTwitterで公開すると、「端から端までおもろいw」「嫌味が洗練されすぎ」「京大とはまた違ったやばさ」などと11万超のいいねがつきました。
同会は、京都大学の立て看規制にまつわる運動に触発されて2018年に発足。会員の作りたい立て看を作ること、他団体の立て看を鑑賞しTwitterなどで紹介すること、他団体に製法を伝授することなどの活動をしています。今回の立て看を作ったのは別とのことで、制作者当人につないでもらいました。
ーなぜ、この立て看を
「キャンパスは本来学生と教職員全員のものなのに、一方的に大学側が使途に制限を加えようとする点を批判するのが第一の目的でした。コロナ禍ではこのようなことが何度も行われましたから、単発的な怒りというよりは長期的な不満を反映しました。もちろん感染対策自体は学生生活が守られる程度にはするべきだと考えていますが、それとは別の次元で、大学の意思決定プロセスに問題があるという点を指摘したかったわけです。また、当局の表現のおかしさを指摘する意図もあります。おそらく花見禁止ではなく、宴会禁止ということを言いたかったのだと思います。読む人のことを考えていない書き方は、当局の学生に対する姿勢の表れと思います」
ー皮肉だけではないんですね
「他にもいろいろ詰め込んでいて、口ではD&I(ダイバーシティ&インクルージョン、多様性の認識、尊重、環境整備)と言いながら、実際には形だけのパフォーマンスしかせず、東大の男女比率について真剣に対処していない当局の姿勢への批判があったり、「うれしいコロナプライス¥567」という表現には、感染者数の数字で一喜一憂する今の社会の人々をひそかに批判する意図があったりします」
ーいわゆる立て看ではなくポスタースタンドにしたのは
「本当は立て看を立てたかったのですが、キャンパスの正門前は、当局が不当に規制し、勝手に撤去されてしまうので、ポスタースタンドにしました。また、文句をつけられて撤去されないように、文字の表面上は大学の言うことに従うそぶりをとっています。東大自粛研究会は架空の存在ですが、今後本当に立ち上げるかもしれません」
ー東大立て看同好会さんの投稿が拡散しました
「学生をはじめとして不満が高まっている表れだと思っています。目に止めてもらえるよう・話題にしてもらえるようにデザインや面白さも凝るべきだとは思いますが、それ以上に大事なのは伝えたい中身だと思っています。面白さというよりは、学生が自由に意見を発信できることこそ立て看の魅力と思うので、いろいろな意見の立て看が立ってくれればいいなと思っています」
■当局が立て看を規制
東大立て看同好会さんによると、キャンパス内の立て看は学生自治会が管理し、構造や重石の重量など学生の決めたルールが適用されています。正門前(門の外であってかつ敷地内の部分)は数年前までは設置できましたが、重石が不十分なものが倒れたことをきっかけに、当局が正門前に置くことを禁止しました。さらに門内の立て看も規制しようとしましたが、自治会をはじめとする学生の抗議によって立ち消えになったそうです。
「学生自治会は正門前の規制を認めていませんが、実際に設置すると立て看は当局の職員が撤去されてしまいました。合意のないルールを実力でごり押しする点では、京都大学の規制などとも本質的には同じだと考えています」と話します
今回のスタンドポスターについては「花見禁止は学生に相談なく一方的に決められたものですが、それに対する反応としては、目隠しのセンスもよく、規制の不当性についての説明もしっかり補足されていてデザインも含め100点満点だと思います」と東大立て看同好会さん。一方、大学当局は不快感を示しているそうです。
京大と同じように東大も批判精神は健在のようです。制作者さんは「学生を物言わぬモノとしか見ない近ごろの風潮があります。立て看が京大や東大の独自の文化として完結せず、どこの大学でも見られるものになり、学生の言論が拡大してほしいと思います」と話していました。
なお、駒場キャンパスのでは正門を入ってすぐ右のところによく目立つ桜が一本あり、北門周辺に並木があり、コロナ禍前は地域の人がお花見を楽しんでいたそうです。その他1号館や生協食堂、矢内原公園にも桜が1、2本ずつあるそうです。
お花見、楽しみですね!
(まいどなニュース・竹内 章)