食いしん坊で、充電コードまでかじってしまう「やんちゃくれ」な猫・諭吉くん…だけど、愛おしくてたまらない
とにかく食いしん坊で、バッグの中やシンクの排水口まで漁ってしまうというオス猫の諭吉。隙があれば何でもかじってしまい、おでんの中に顔を突っ込んでしまったこともある12歳の男の子だ。京都市山科区在住で福祉関係の仕事に就いている高橋歩(あゆみ)さん宅で暮らしているが、12年前に滋賀県大津市で保護された。
飼い主と一緒に琵琶湖のほとりを散歩していたゴールデンレトリバーが、2匹の子猫に気づいたという。そのゴールデンレトリバーには、目が見えない障がいがあった。子猫が発する匂いや、かすかな気配を感じたのだろうか。
「捨てられていた感じではなく、親とはぐれてしまったようです。周辺に親がいないことを確認して保護なさったと聞きました」
保護した人は、すぐに京都市内にある、かかりつけの動物病院へ運び込んだという。
「動物看護師さんと私が知り合いで、仲良くさせてもらっていたんです」
その2カ月前、高橋さんは可愛がっていた飼い猫を亡くしていた。動物看護師さんから「とても可愛い子がいるの。まだ傷心中やと思うけど、よかったら見に来るだけでも」と連絡を受けた。次の子を迎えることは考えられず、いったんは断ったのだが、やっぱり気になった。
「出先から電話して、動物病院に駆けつけて諭吉を対面したんですよ。見たらかわいいじゃないですか。保護した人は2匹引き取るのが厳しいので、1匹を引き取ることにしました」
生後1~2カ月、体重480グラムの健康なオスだった。残ったもう1匹のほうは、はじめに保護した人に引き取られたという。
■なんでも食べる、なんでもかじる。こんなにやんちゃくれとは思わなかった
「夫はさほど動物好きではないんですけど、はじめて諭吉を見たときに『天使が来たな』とつぶやいたほど可愛かったんです」
ところが実際、こんなにやんちゃくれとは思っていなかったようだ。「やんちゃくれ」とは、大阪で「いたずらっ子」や「わんぱく小僧」を意味する方言だ。
「なんでも食べるから、諭吉の目につくところに食べ物を置けないのです」
高橋さんが買い物から帰ってきてカバンを置いたら、ほぼ瞬間的に諭吉が現れて、中身を物色されるという。食パンは1斤台無しになるし、魚や肉は食べようとしてラップを引っ掻いて破ってしまう。
「手を洗いたいけど、隙があればかじられるから、その前に冷蔵庫や電子レンジなど、扉がついているところへいったん入れるんです」
料理中も気を抜けない。シンクの三角コーナーに卵の殻を捨てたら、ちょっと目を離したすきにピョンと飛び乗って、殻を食べてしまうそうだ。
さすがに火を使っているときは飛び乗ってこないそうだが、あるとき卵を食べようとしておでんの鍋に顔を突っ込んだこともあるという。
「火は消していましたけど、熱かったと思いますよ」
旦那さんが諭吉を見て、思わずつぶやいた「天使が来たな」は、すぐに撤回された。
とにかく食べ物への執着が激しい諭吉。
「ゴミ箱も蓋付きに替えました」
蓋をしっかりロックできるタイプのゴミ箱を買ったが、勢いよく倒したり爪でガリガリ引っ掻いたりしているうちに開けられることを学習したため、今では玄関の外にゴミ箱を置いているという。
「12歳という高齢になって、若い頃みたいに激しくはなくなりました。でも油断するとやられますから、ゴミ箱は今も外へ置いています」
食事中は隣の部屋に隔離するが、器用に自分で開けて出てきてしまう。だから食事が終わったら、ホッと一息つく間もなくすぐ洗わないといけない。
「ちょっとでもテーブルを離れたら飛び乗って、お皿を舐めるんです」
諭吉は電気のコードにも興味津々で、パソコンのマウスや充電コードもかじるという。かじりすぎて感電したら危ないので、充電コードにはスパイラルチューブを巻いて保護し、マウスはコードレスタイプに替えたそうだ。
■それでも可愛い諭吉…おかげで片付ける習慣がついて、家の中がきれいになった
高橋さんはもともと、片付けには頓着しない性格だったという。
「今ほどには片付いてなかったです」
それが諭吉を迎えてからは、ガラッと変わったという。
「片付けておかないと荒らされるし、かじられるし。諭吉のおかげで片付けが習慣になって、家の中はとてもきれいに維持されるようになりました」
高橋さんの毎日は、傍目には諭吉に翻弄されているように見える。
「どこが可愛いの? と思われるでしょうね。でも諭吉は、他の猫や犬を威嚇したり攻撃したりしたことがない、穏やかな性格の子です」
高橋さんの家には、諭吉のほかに7歳のオス猫「陸(りく)」と1歳の雑種メス犬の「メイ」がいる。3匹は仲良しで、ケンカもしない。夜は諭吉が高橋さんの真横か胸の上に乗ってきて、ゴロゴロいいながら一緒に寝るそうだ。
「重いし寝返りを打てないんですけど、旅行に行って1人で寝ていると、布団が軽くて寂しいと感じるんです」
高齢猫になった諭吉は若い頃と比べたら眠っている時間が増えたそうだが、買い物から帰った高橋さんのカバンを物色したり食事の後にお皿を舐めたりするのは相変わらずだ。それでも「いつまでも長生きしてね」と願いながら、高橋さんは、すっかり習慣になった掃除や片づけをする日々が愛おしいという。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)