これは新発想!犬猫の健康ケア食品 水を「飲む」ではなく「食べる」 愛猫を救いたい一心で開発
元ITエンジニアの女性起業家が開発した水分補給のための犬猫ゼリーの素「Gelletta(「ジュレッタ)」が愛犬、愛猫家の間で話題になっている。
人間と同様、犬猫にとって水は体の6~8割を占め、食べ物の消化や吸収、老廃物の排出、体温調整、免疫力向上など、健康維持に欠かせない成分だ。ただ、特に猫の場合、水分を自発的に十分摂ってくれず、それが原因となって膀胱炎、尿石症、腎臓病、皮膚炎などになる子は少なくない。
どうすれば水分不足に陥ることなく、ふだんから病気を未然に防ぐ体をつくり、健康寿命を伸ばせるか?合同会社wisham(ウィシャム)代表の鈴木綾子さんは、水を「飲む」から「食べる」へと発想を転換。犬猫が喜ぶ味付けで水を固め、ゼリーにするという新しいスタイルを思いついた。
■犬猫が喜ぶ味付けで水を固め、ゼリーにするという商品を開発
フレーバーはチキン、かつお、ヤギミルク、鯛など全5種類。アミノ酸が豊富に含まれる牛由来のゼラチンを使用。目的が水分補給なので原材料やレシピはいたってシンプルだ。低カロリー、低塩分のため、主食と一緒に毎日安心して与えることができる。
鈴木さんは、2児の子育てをしながら、住宅、不動産のポータルサイトを運営するIT企業でITエンジニアとして長年勤務。結婚後はペットを飼いたかったが、仕事と子育てで忙しく、夫の実家で飼っていたシーズー犬のヒメ(メス、13歳で没)を可愛がるのが楽しみだった。
しかし、2017年、ヒメは顔に悪性の腫瘍ができ、治療の甲斐虚しく虹の橋を渡った。「数か月が経ってもヒメちゃんはもういないんだと寂しさがじわじわ募り、ペットロスというのはこういうものなのかと…。愛するペットとの別れがきたとき、もっとこうすればよかったなどと自分を責めてしまう飼い主さんは多いですが、悲しみや後悔を少しでも和らげるお手伝いが自分にできないかと思ったんです」
それがきっかけで「ペットの健康や栄養について深い興味を持つようになった」と鈴木さん。「気になったことはとことん調べ、徹底的にやるタイプ」といい、翌年からペットの栄養学の勉強を開始。ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペットフード販売士の資格を取得した。
2019年2月には縁あって2匹の保護猫を迎えた。ハチワレの「こんぶ」(オス)と茶白の「みかん」(メス、ともに3歳)兄妹だ。その後、IT企業を退職し、ペットの健康に関する事業に専念することに。
2020年3月、コロナ禍の影響で学校が休校になり、小学生の子どもたち、夫や自分も自宅で過ごす時間が増えた。こんぶはやんちゃで活発だが、対照的にみかんは臆病で繊細。いつもなら昼間、家には誰もいないのに、急に家族4人全員がずっと家にいるという状態がしばらく続いた。
「それがみかんにとってストレスになったんだと思います」と鈴木さん。翌月から突然、食欲不振になり、頑なに食事をとらない、水も飲まない困った事態になった。
何も食べないため、体は痩せほそり、毛艶もパサパサに。みかんは日に日に元気がなくなっていった。「食欲不振は脱水症状を引き起こし、脱水症状が食欲不振を加速させ、それで脱水症状がさらに深刻になるという悪循環に陥りました。このまま飲まず食わずの状態がずっと続けば命に関わる深刻な事態になりかねない状況でした」と振り返る。
鈴木さんはそれまで学んだ栄養学の知識を総動員し、みかんが自分で水分補給できるようにと、最初は鶏の茹で汁を作るなどして食べ方を工夫。このときに「水を食べる」という発想を思いつく。そしてたどり着いたのが「Gelletta(「ジュレッタ)」だった。
「とにかくみかんを救いたい一心でした。当初は何もわからない素人で、苦労も多かったですが、ペットフードの知識や法律などを教えてもらうなどたくさんの方に支えていただきました。何度も試作を重ねて、ようやくみかんが口にしてくれた時は涙が出るほど嬉しかったです。その後、みかんは食欲が戻り、今では毛並みはつやつや。とても元気になりました」
みかんの場合と同じように、突然、食欲不振になったり、水分不足が原因で膀胱炎や尿石症を発症したりする猫は少なくない。その場合、「もっと水を飲ませる」のが最善の方法だが、それがなかなか難しい。水分を含んだウェットフードを食べさせるという方法もあるが、食べてくれないこともある。
ユーザーからは「水飲みボールの前で猫が水を飲むのをただじっと待っているだけではなく、他に試せる選択肢があるんだと知った」「これを与えてから、スマートトイレで計測した日々の尿量が増えた」といった報告が寄せられているという。
「愛犬、愛猫の健康こそが、飼い主さんにとって一番の幸せです。最も大切なのは、病気になってから動物病院に頼るのではなく、病気を予防し、日頃から病気になりにくい体を作ること。そうした意識を当たり前の感覚にしていけたらと思っています」と鈴木さん。今後は量産体制の整備や新商品開発にも力を入れるつもりだ。
(まいどなニュース特約・西松 宏)