道産子の「のぞみ」と「つばき」、馬術競技大会で初お披露目 希少な和種馬に「かわいい」「人懐っこい」
3月中旬に三重県鈴鹿市の「鈴鹿ホースパーク」で開催された「三重とこわか馬術競技大会」には全国26の都道府県から約100人が出場した。これは昨年、新型コロナの影響で中止となった三重とこわか国体に代わる行事として、馬術競技の振興と競技者のレベル向上を目的として開催したもの。会場では道産子の姉弟も初披露され、大人気だった。
大会では成年男子と女子、少年の部の合わせて11競技が行われ、人馬一体となった見事な技を競い合った。 その合間にはアトラクションも開かれ、馬とのふれあい体験では”道産子”の愛称で知られる北海道和種馬が2頭参加。「かわいい」「人懐っこい」と来場者の間で人気を集めていた。
実は、この道産子は鈴鹿ホースパークの運営団体であるNPO法人「鈴鹿市馬術連盟」の理事長で、今回の大会の成年男子・馬場馬術競技で優勝した河北浩峰さんが預かっている。北海道の自然の中で昼夜放牧で育った姉「のぞみ」(4歳)と弟「つばき」(2歳))の2頭で鈴鹿ホースパークでふれあいや乗馬の訓練に日々励んでおり、この日が初お披露目となった。
この道産子たちは側対歩という独特の歩様で揺れが少ないのが大きな特徴。昔は和種馬は山道や坂道を移動する丈夫な足と体力があり、側対歩ができることから騎馬武芸や運搬に適していた。
ところが、現代の日本では和種馬は8種類(北海道和種・木曽馬・野間馬・御崎馬・対州馬・トカラ馬・宮古馬・与那国馬)のみが残っているだけで、その数も8種類すべてで千数百頭である。対州馬にいたっては、わずか50頭に満たない。和種馬全体がいわば絶滅を危惧される状態であり、いきおい側対歩をする馬は希少価値となった。
一般的に体高が160~170センチある競馬のサラブレッドと比べ、和種馬は130センチ前後と小柄で気性も優しい。脚が短く、首が太く、全体的にずんぐりとした体形だ。
もっとも、日本の乗馬クラブのほとんどが、サラブレッドなどの洋種馬を使って乗馬を行っていて、日本在来馬をメインにした乗馬やふれあいをやっているクラブはほとんどない。見た目の格好良さや競技を考えるなら洋種馬だが、安全性を優先して楽しむなら小柄で温和な和種馬は魅力的だ。しかし、実際には和種馬が活躍できる機会が少なく、保護育成の活動も加速されないのが実情である。
今は和種馬にとって厳しい状況なのだが、古墳時代には古代馬が大阪の河内地方で育成されていた。そうした歴史的背景も踏まえて和種馬を使ったふれあいや和装乗馬などを行い、在来馬の保護も目指そうと「和種馬ホースランド」が大阪府柏原市に6月からオープンの予定である。そして、この地に今回、三重とこわか馬術競技大会で人気者であった道産子の姉弟がやってくる。
和種馬ホースランドを主宰する一般社団法人「日本在来馬振興会」の代表理事で武術家でもある横山雅始さんは「戦国時代の合戦を探る武術イベントとしてガチ甲冑合戦や戦国武術セミナーを開催してきたが、今度は当時の騎馬武者たちの様子を和種馬とともに探ってみたい」と意気込む。
さらに「一般の人たちが誰でも和種馬と楽しめる、ふれあいや乗馬、和装騎乗撮影ができる場所にしたい。ヨーロッパから複数の武術団体が来日し、武術研修や和種馬の体験をする企画も進行中でいまからオープンが楽しみです」と和種馬の活用について新たな展望を語った。
より多くの人たちが絶滅の危機に瀕する和種馬の保護育成に興味を持ち、こうした活動が発展することを期待したい。
◇一般社団法人「日本在来馬振興会」
メールアドレス k.inaba090@gmail.com
(まいどなニュース特約・山本 智行)