ウクライナのペットとその家族のためのクラウドファンディングに支援殺到「いてもたってもいられず」「1日も早く平安な日々を」
2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから約2か月。国外避難したウクライナ人は480万人を超え、国内避難民は700万人以上と言われています。日本も600人余りの避難民を受け入れ、中にはペット同伴で来日した方も。ただ、せっかく一緒に避難して来ても、ペットはすぐに家族と過ごすことができません。日本では『狂犬病予防法』に基づいて最長180日間、動物検疫所で検査を受けることが義務付けられているからです。これについては4月18日、農林水産省が特例措置を発表。諸条件をクリアすれば飼い主自身が滞在先などでペットを世話できることになりました。
長期間、愛する家族と離れて暮らさなければならないだけでなく、避難民は莫大な費用負担を強いられるという報道もあったことから、農水省には多数の問い合わせがあったそう。この件に関して『認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン』(以下、PWJ)の大西純子さんにお聞きしました。
PWJは1996年に設立された日本発のNGO(Non-Governmental Organization=非政府組織)で、これまで世界36の国と地域で活動。国内外の自然災害、紛争や貧困など人為的な要因による人道危機や生活の危機にさらされた人々を支援してきました。犬や猫の殺処分ゼロを目指した動物の保護・譲渡活動『ピースワンコ・ジャパン』プロジェクトでも知られています。
大西「私たちも行政府、立法府への働きかけはしていたのですが、多くの声が届き、農林水産省が人道的な見地から迅速に対応してくれたのは良かったと思います。検疫として飼育施設に預かってもらう間のフード代や光熱費は飼い主が負担することになっていて、1日3000円が請求されます。ウクライナ避難民の方も例外なく法律が適用されれば、最長180日で約54万円の費用を支払わなければならなかったわけです」
命からがら逃げてきた異国で大切な家族と引き離され、しかも莫大なお金を請求される…そんなことにならなくて本当に良かったです。
■ウクライナにペットの一時預かりシェルターを
PWJでは2月26日からウクライナの隣国ポーランドとモルドバへ累計11名のスタッフを派遣し、支援を続けています。そして4月5日にウクライナ国内でペットおよびその家族を支援するためのクラウドファンディングを立ち上げ、同15日からは支援対象にウクライナから日本にペット連れで避難して来た方々も追加。支援の輪はどんどん広がり、4月20日時点で寄付総額は1900万円に迫る勢いです。
大西「たくさんのご支援、本当にありがとうございます。寄付してくださった方の多くはペットを飼っていらっしゃるのではないでしょうか。戦争という私たちには想像もつかないことが起きていますが、日本も災害続きで、ペットの同行避難や同伴避難を身近な問題として考える方が増えています。それも今回のご支援に繋がった要因の一つではないかと思います。
PWJがウクライナのペット支援を始めたきっかけは、ウクライナに本社のある国際的な動物グッズ販売企業COLLAR社のスタッフの想いを聞いたことでした。犬の玩具プラーを販売している会社といえば、ご存じの愛犬家の方も多いかもしれません。PWJは以前からCOLLAR社と交流があり、来日したことのあるスタッフ2名に連絡を取ると、1人は地下のシェルターで過ごしていると言い、もう1人は銃器片手に応戦状態、石油タンクからの砲撃で車が被弾して腕を負傷したと言っていました。そんな状況でも、彼らは国内外に避難する人たちがペットを連れて行けない現状を憂い、残されたペットの一時預かりシェルターの運営をしたい、でも資金がないと悩んでいたんです。そこで私たちが日本で寄付を募り、COLLAR社と共同で支援を始めることにしました」
■終わりが見えない戦争、継続的な支援必要
PWJが視野に入れている主な支援は以下の通り。期日までに集まった支援総額に応じて、実行内容の規模を決定するそうです。
①被戦地からバスによるペット同伴家族避難支援
②避難先の紹介
③避難が困難な方への物資支援
④ペットを置いて国内外等へ避難される方のペット一時預かりシェルターの運営支援
⑤安全が確認され次第、ウクライナ国内での直接支援
もちろん、ウクライナから日本にペット同伴で入国された方への支援も継続されます。
大西「この戦争にはまだ終わりが見えません。終わったとしても、元の生活に戻るには相当な時間が掛かるでしょう。ペットと一緒に避難している方にも、事情があって離れ離れになっている方にも、もちろんペットにも継続的な支援が必要です。引き続きよろしくお願いいたします」
ウクライナのペットとその家族を支援するクラウドファンディングは、「READYFOR」「ウクライナ」「ペット支援」で検索してください。
(まいどなニュース特約・岡部 充代)